悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

Innocent Grey Art Exhibition『白夜』

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

殻ノ少女」シリーズ完結&「カルタグラFHD」発売記念として、

本日2023年10月26日(金)から10月29日(日)まで期間限定でイラスト展が四ツ谷の「The Artcomplex Center of Tokyo」にて開催されています。

 

Innocent Grey Art Exhibition『白夜』

※なお展示物の元となったアドベンチャーゲーム殻ノ少女」シリーズや「カルタグラFHD」は18禁作品ですが、このイラスト展自体は入場無料・年齢制限なしとなっています。

 

 

The Artcomplex Center of Tokyoでのイノグレイラスト展はかれこれ4回目

 ・イノセントグレイ十周年記念画展「花葬」  (2015/11/27~12/6)

 ・FLOWERS アートギャラリー「クルール」 (2018/6/15~6/17)

 ・「殻ノ少女画展」 (2020/1/22~1/26)

 もはや「イノグレの展示会といえばココ!」と定番になりつつあります。

 

 今回初日は平日だったにもかかわらず開場間際から50人以上が入場整理券を求めて立ち並ぶ盛況ぶりでした。イノグレ作品がここまで多種多様な客層に人気を博しているのはいちファンとしては嬉しいような驚くべきような……

 

 なんせ杉菜水姫氏の美麗なイラストの数々は確かに息をのむほどの出来ではあるものの、ゲームのストーリー自体は情け容赦ないほどシリアスなため、万人に手放しにオススメできるものではないので……

 

 飾られたジークレ版画の中には、今回の画展のために描き下ろされたイラストも数多く取り揃えられていました。

 

 キービジュアルである朽木冬子の神々しいイラスト、時坂玲人や蒼木冬史の渋いイラストもなかなかに見ものでした。

 個人的には「カルタグラFHD」でようやく個別エンディングを獲得した凛が、エンディング時点での姿で描かれたイラストが特に印象深かったですね。(なんでトレンチコートの下が裸っぽいのか……なんて野暮なことは言ってはいけない

 

 あとはなんといっても、イラスト展に合わせて期間限定で発売される図録に鈴鹿美弥氏の描き下ろし小説がついてくるのが非常にうれしかった。以下ではその小説について少々コメントしたいと思います。

 

 

 

・「白の誠と青の嘘」

 「カルタグラ」の主人公である探偵・高城秋五がなぜ警察を辞めることになったのか、その経緯が詳細に明かされた短編小説。

 時は昭和25年(1950年)、カルタグラ本編が始まる1年ほど前の出来事である。

 物語は上野葵町の路上で50歳ほどの男が不審死しているのが見つかり、上野署の刑事だった秋五が捜査することになったことから端を発する。

 どういうわけか本庁の刑事が捜査に横やりを入れてきて、秋五を捜査の本筋から外し、被害者が死の前夜まで詰めていたという遊郭・雪白での聞き取りといった雑務に追いやる。

 しかし雪白の楼主である雨雀や小間使いの初音たちから話を聞くうち、被害者の死には米国の進駐軍が関わっているのではないかという疑いが強まっていき……という筋。

 

 秋五は本庁からの命令を無視して独自に捜査を続けるなか、このとき既に警察をやめて探偵業の準備を始めていた時坂玲人にも話を聞きに行ったりする。

 

 ※なお玲人が警察を辞めるきっかけとなった「六識事件」の詳細な経緯については、「殻ノ少女」の発売記念企画として発表された12編のショートストーリー (リンク)や「殻ノ少女 ドラマCD1巻」で語られている。

 

 ※ちなみに、全年齢PS2カルタグラにて公開されていた「秋五が警察を辞めるきっかけになった事件」と、今回の描き下ろし小説で明かされた事件とは完全に別物である。

 ただし、どちらの事件もアメリカの軍人が真犯人にもかかわらず、進駐軍側から圧力をかけられた警察は捜査の中止を秋五に命じたものの、それに逆らったため秋五は警察を辞めた――という大きな流れは同じである。

 おそらく、カルタグラ原作のシナリオライターである飯田和彦氏が物語を構想していた当初から、「警察の腐敗に義憤を感じた秋五が失職に追いやられる」という流れは意識されていたのだろう。とはいえ、発表される版ごとに描かれるエピソードが変わると何をもって正史ととらえるべきかは悩みどころではあるのだが。

 

 

 

 A4判の図録の後半16ページにわたって描かれた短編小説ではあるが、読みごたえは十分な内容だった。

 

 後日、この小説が掲載された図録はイノグレ通販サイトでも部数限定で販売される予定とのことなので、イラスト展の開催期間中に四ツ谷へ行けない方々は是非とも通販を利用することを検討してもらいたい。

 

 また最後に余談ではあるが、イノグレ作品が発表され始めて18年が経ってはじめて、秋五の前髪で隠されていた瞳が描かれたイラストが小説の扉絵になっているので、そういう意味でも必見である。

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その5

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・八重の櫻の樹の下で

カルタグラ REBIRTH FHDリメイク版に付属している全87ページの短編小説です。

 

全編を通して本作の主人公・高城秋五が視点となっており、終戦直後に当時の上官だった有島刑事の紹介によって警察官になった1946年(昭和21年)を舞台とした物語が描かれています。

 

内容としては、カルタグラ本編でさらっと流された「綾崎家で起きた後継者争い」について、その詳細な経緯が語られています。

 

有島刑事からの密命を帯びた秋五は、出雲(島根)に本拠地を構える大財閥・綾崎家へと派遣されます。綾崎家当主より任されたのは、末の孫娘である楼子の護衛。すでに死者が出ていることもあり、剣呑な空気の漂う綾崎の本家にて幼い楼子が害されることのないように、書生に扮して彼女を護るように依頼されたのでした。

※このとき秋五は、有島刑事より「お前は目力が強いから前髪を垂らして隠して威圧感をなくせ」といった趣旨の助言を受け、服装の指定までされています。本編中に秋五の容貌がはっきりと描写されたことはこれまで一度もありませんが、実はなかなかの強面なのかもしれませんね。彼の無気力な言動からは想像もつきませんが……

 

 

当時おそらく10歳前後と思しき楼子との交流は微笑ましいものがありましたが、主な内容は綾崎家で起きた殺人事件の謎を解き明かすミステリー小説です。珍しく秋五がきちんと頭を使って活躍している様子が見られます。

 

 有島刑事から指名を受けた経緯からも察せられますが、秋五の洞察力や推理力には一定の信を置かれているようです。カルタグラ本編でも何だかんだ言って有島刑事の悪事を突き止めたのは彼の手柄ではありますので、いちおう探偵役を務められるだけのポテンシャルはあるのでしょう。

 

 ただカルタグラ本編において、事件の裏で暗躍していた由良の策謀に秋五は全く気付くことができず、それらを看破したのは変態妹である七七でした。そのため、どうしても事件解決における秋五の貢献度が霞んで見えるというか目立たなくなってしまうというのは如何ともしがたいですが……

 

 

 

 あと、今回の付属小説にて秋五自身の個人情報や周辺人物の情報がさりげなく更新されたのは大きな魅力ですね。

 

 作中で秋五の年齢が明示されたことはありませんが、30歳ほどであると仄めかされている凜より年下なので20代後半であることはわかっています。しかし、今回の付属小説の情報によってかなり正確に年齢を逆算できるようになりました。

 

 小説曰く、秋五は旧制中学を卒業してから家業を手伝ったのちに召集令状を受け取って出兵したとのことです。

 

 第二次世界大戦当時の学制では中学は5年制なので、小学校6年+中学校5年=17歳で卒業し、家業を手伝ったのち逗子に疎開して由良と出会ったあと召集令状を受け取ったのが18・9歳ごろ。秋五と由良の別れはカルタグラ本編の時間軸である1951年(昭和26年)から7年前である1944年(昭和19年)の出来事なので、彼が出征したのも同じころだとわかります。

 

 秋五はそのあと南方戦線へと送り込まれ、このときに有島刑事を部隊長とした小隊に編成されることになります。その当時の戦友が、「殻ノ少女」シリーズの主人公である時坂玲人です。「殻ノ少女」シリーズでの描写によると玲人は秋五より年下だそうですから、当時17歳前後ということになるのでしょうか。1944年(昭和19年)ごろには戦局悪化のあおりで徴兵年齢が17歳まで引き下げられていたと聞きますし、身震いするような恐ろしい話ですが矛盾はないようです。

 

 なお、秋五も玲人も肉体派ではないので体力に自信はないとそれぞれ作中でぼやく描写が見受けられます。二人とも出兵した割に意外と戦闘力は低いのね、と思われるかもしれませんが、玲人に関しては戦車の操縦兵だったことが明かされています。

 ※玲人はそのときに受けた左目の傷を治療するために南方戦線から旅順へ離脱したことが「殻ノ少女」シリーズでも語られています。玲人のワカメヘアーはそのころの傷を目立ちにくくするための工夫というわけです。

 

 以上の情報から、カルタグラ本編における秋五の年齢は26・7歳ほどということになります。和菜・由良の年齢は21歳と明かされていますので、思ったほど歳は離れていなかったようですね。

 

 

 あとは謎に兄弟姉妹が多い高城家についても少々の情報公開がありました。秋五が男子としては末の弟であることは「殻ノ少女」にて検視官・高城夏目女史より語られていましたが、5番目の弟であることは今回新たに判明しました。少なくとも秋五の上に4人も兄がいるわけです。夏目女史は一番年上の長女であることを自身で語っており、七七は一番年の離れた末の妹であることも分かっています。その多くは実家のある京都で暮らしているようですが、今後のイノグレ作品で関わることはあるのでしょうか。

※確か、ほかにも秋五の姉がいるようなことがどこかで語られていた気がするのですが、残念ながらちょっと思い出せませんね……

 

 小説の最後の最後に帝大医学部で勉学中の夏目女史や、このころから既にド変態で天才の片鱗を見せている七七が乱入してきたのにはちょっと驚きましたが、こういう登場人物の層の厚さもイノセントグレイ作品群の魅力の一つです。

 

 

 

 

はてさて、これにてカルタグラ RIBIRTH FHDリメイクについて語りたいことはだいたい語ってしまいました。毎度のことながら長々とすみません。

 

後日、思い出したかのように何事かを書き散らすこともあるかもしれませんが、いまはひとまず18年越しに再誕したカルタグラの余韻に浸りたいと思います。

 

本作はパッケージ版が初回限定生産のため、在庫がなくなり次第この付属小説を読む機会は失われてしまいます。

 

現時点でイノセントグレイ公式通販サイトでの在庫が確認できていますので、本作品に興味があるのであれば是非是非お買い求めいただければと思います。

(注:阿久井は決してイノセントグレイの回し者ではありませんので悪しからず)

 

いまなら通販購入特典として「天ノ少女」の後日談である短編小説「或る晴れた暑い日に」もついて来てしまうので、なおのことお買い得です。

※「或る晴れた暑い日に」のレビューについては本ブログ「カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その1」にて語っていますので、ご興味があればどうぞ。

 

 

それでは、またご縁があれば。

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その4

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・BGMについて

本作は2005年発売の原作「カルタグラ」をリメイクするにあたり、すべての歌曲・BGMを新録し直していることが発表されています。

 

そのため、旧テーマソングである「恋獄」「LUNA」「硝子の月」も18年越しに霜月はるか氏が歌ってくれており、演奏の仕方も含めて原曲とはかなり異なっているので聞き比べてみると趣深いかもしれません。

 

例えば「恋獄」では旧版がアコーディオンの旋律が印象的だったのに対して、新録版ではコーラスに力を入れている、といったような差別化を感じることができるでしょう。

 

また本作では2008年発売のファンボックス「恋獄匣」に収録されていた増補版サウンドトラック「Manie+」にのみ収録されていた楽曲の中から一部が転用・新録されていることが確認できています。

 

以下では「Manie+」での収録時のタイトルから本作で新録されるにあたって新たに付けられた曲名への変化を記載します。

 

 ・Cartagra → カルタグラメインテーマ

 ・Whitelily(綾崎楼子のテーマ)→ 情景

 ・Labyrinth(祠草時子のテーマ) → 災厄

 ・MadSister(深水薫のテーマ) → 信仰心

 ・FateTheory(有島一磨のテーマ) → 孤高

 

これらは主に該当する登場人物との会話シーンで再生されていたことが確認できました。さすがに各人物をイメージして作曲されただけあり、場面にピタリとはまって違和感がなかったのでちょっと驚きました。

 

あとは今回のリメイクにあたって原作にはなかった曲もいくつか追加されているようでした。

 

 ・夕凪    ←新録
 ・白い刻   ←「白い闇」のアレンジ
 ・紫翠    ←新録
 ・永久の波  ←「悠久」のアレンジ
 ・哀艶    ←「艶」のアレンジ
 ・海の影   ←新録
 ・海の闇   ←新録
 ・海の光   ←新録

 

 

 

※※※ 警告 ※※※

以下、カルタグラ REBIRTH FHDリメイクにおける最大級のネタバレである「和菜エンド」および「由良エンド」について詳細に言及しています。

 

本作に興味を持っているのであればネタバレを踏まずに本作をプレイし、同エンドに到達したほうが感動も一入だと思いますので、以下を読み進める場合はご覚悟召されますようお願いします。

 

 

 

続きを読む

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その3

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・追加ルートについて2

本作は2005年4月発売の原作「カルタグラ」からリメイクされるにあたり、凛・綾崎楼子・蒼木冬史・上月和菜・上月由良の5名について新規ルート及び個別エンディングが追加されています。

 

それぞれに新規Hシーンも新録されており、だいたい一人当たり通読で20~30分くらいの物語が追加されていると思っていただければ目安になるのではないでしょうか。

 

ちなみに「カルタグラ」は2005年12月には全年齢PS2版も発売されており、そちらでは初音・高城七七・蒼木冬史の個別エンディング(グッド・バッド)、および終盤において由良と対峙した際に迎える複数の結末が追加されていました。

※この結果、原作では死ななかったはずの登場人物がPS2版では死亡する展開があるなど、コンシューマ版にも関わらず物騒なエピソードまで増えているのはちょっと問題かもしれませんが。

 

またPS2版では原作「カルタグラ」でHシーンが入るタイミングで秋五と由良との追加回想シーンやその他の人物との会話シーンに置き換わるなどの変更がなされていましたが、これらPS2版独自の追加要素は今回のカルタグラFHDリメイクにおいては一切反映されていません。

 

ですので、秋五と由良が出会った当初どのような交流をしていたのか、初音・七七・冬史と迎える個別エンディングがどのようなものだったのかを知りたいのであればPS2版を手に取る以外方法がないことはあらかじめ伝えておきたいと思います。

 

 

・凛エンドについて

あんな底抜けに明るい女性をどうしてあんな無惨な死なせ方をするんだイノセントグレイ!!!

……と原作を読んだ当時は相当にショックを受けたものですが、凜は読者人気も高い登場人物だったため、2007年発売のファンディスク「和み匣」に凜を主役とした短編が収録されたこともあります。

(なお、この短編「雪に咲く花」は今回のカルタグラFHDリメイクには追加されていませんので、内容を知りたいのであれば「和み匣」ないし同作が同梱されている総集編「PARANOIA」を入手する必要があります)

 

そんな哀しい運命を背負った凛ですが、今回のリメイクによってようやく個別エンドが実装されました。

 

……がしかし、この個別エンドでも凛には非情な運命が待ち受けていました。

なんだろう、イノグレスタッフの中に明るい女性は極限まで虐め抜かなきゃ気が済まない性癖のド変態でも潜んでるんでしょうかね……?

 

原作と同様、凜は上野連続猟奇殺人事件の犯人によって拉致され、そこで無理やり右目の眼球を抜き取られるという非道な拷問を受けることになります。(なんでその痛々しいくだりをわざわざ克明に追加CGで描くんですかね……!?)

 

しかし、犯人の居場所を突き止めた秋五によって間一髪で難を逃れ、瀕死の重傷を負ったものの凜は生き延びることができました。

 

その後、凜本人の強い希望もあって彼女は遊郭・雪白を去ることになり、秋五の探偵助手として共同生活を送ることになります。

 

ここで凜の新たな立ち絵が追加されるわけですが、あの凜が着物ではなく洋装になっていることに阿久井は一種感動を覚えてしまいました。原作では着物姿のままあっけなく退場してしまいましたから、凛のほかの装いが拝める機会がくるなど思ってもいなかったので。

 

ただし、異常な殺人犯によって奪われた右目は戻るはずもなく、凜の右目には眼帯がつけられています。それでも元の明るさを喪わず、秋五の仕事を支えてくれる凜はとても強い女性だと思います。

 

思えば、イノグレ過去作には必ずと言って良いほど片目を眼帯などで隠した人物が登場していますが、カルタグラにだけはそれがなかったので悪い意味で統一感が出てしまいました。

なんだろう、イノグレスタッフの中に登場人物の中に必ず片目が喪われている人がいなければ気が済まない性癖のド畜生が潜んでるのでしょうか……?

 

このあと秋五は由良の捜索からはきっぱり手を引いてしまうため、物語としては打ち切りエンドに近い印象はありますが、おそらくあのまま平穏無事な生活を続けていくのだろうという予兆を感じさせる幕切れでもありました。

 

ちなみに凜ルートでは、とある娘から戦争を境に行方不明になった父・荒田大作を探して欲しいという依頼を受けたので、「新宿の探偵」に捜査協力を求めるかもしれない、といった趣旨のやり取りがなされます。

イノグレ過去作をプレイしたことがある人であれば、それぞれ「和み匣」の登場人物・美波栞、たこ焼き屋の親父、「殻ノ少女」シリーズの主人公・時坂玲人を指していることは瞬時にわかったことでしょう。

他の追加個別ルートでもこういった遊びがされているのはファンライクでとても好ましいですね。

 

 

・楼子エンドについて

もともと原作「カルタグラ」の後半戦で突如現れた登場人物で、登場したと思ったら即座に退場してしまったことからも出番が非常に少ない女学生だったため、個別エンドが追加されてもいきなり感がどうしても拭えませんでした。

 

なんというか、秋五の間男感・優男感が前面に出過ぎてしまって情けないというか、「テメー和菜の依頼ほっぽって一回り以上年下の女学生に手ぇつけてんじゃねえぞ!!!」といった不満が強く出てしまい、最初はちょっと冷静さを欠いたまま物語を読み進めてしまいました。

 

話の展開としては、和菜の舞台「ロミオとジュリエット」を楼子と観劇したのち、望まぬ結婚を強いられているから助けて欲しいと懇願する楼子の想いを受け入れるというところまでは原作「カルタグラ」と同様です。

 

その後、楼子が何者かに連れ去られそうになったのを助けた秋五は、その婚約者というのが「千里教」の関係者であることを突き止め、きな臭くなった婚約話から楼子を保護するために彼女を東京から連れ出し、実家の綾崎家へと送り届けることにしました。

 

原作「カルタグラ」では楼子が秋五と共に舞台を観劇したことが原因で由良および赤尾のターゲットに指名されてしまっていたため、彼女が助かるためにはこの時点で東京から離れるしか道がないことは確かなので、それはまあいいでしょう。(もちろん、秋五はそんなことはつゆとも知らなかったわけですが)

 

ただ、このあと秋五は由良を見つけることも出来ないまま捜査を打ち切り、数年後に東京で楼子と再会して幕引き……という展開にはちょっともやもやした感想を抱いてしまいます。

 

まあ、楼子の願いを聞き入れた時点で秋五の中での優先順位は楼子の安全が最上位になってしまっているので、過去の一時だけ情を交わした由良のことや、そんな由良を探して欲しいと強く願っていた和菜のことなんて頭からすっぽり抜け落ちてしまっているのでしょうけれど……やはりちょっと唐突というか、無責任な感は拭えない幕引きではありますね。

 

ちなみに先述した楼子の怪しげな婚約者として名前が挙がったのが、「虚ノ少女」で登場した「天恵会」幹部である空木であろうというのは興味深い展開ではありました。やはり碌でもない男だったわけです。

 

それにしても、楼子は血縁者に西欧人がいることからプラチナブロンドが目を引く美少女ではあったのですが、追加されたCG・立ち絵も美しい仕上がりでちょっと目を見張るものがありました。

 

 

・冬史エンドについて

誰がどう見ても冬史は秋五に好意を持っているのに、秋五本人はそれにまったく気づかないという残念な間柄だった二人。

 

由良の捜索を通じて秋五と和菜は親密になっていくものの、堅気な生き方をしていない秋五が和菜の将来を案じて彼女を受け入れないことを決めた結果、秋五と冬史がくっつくことになる、という一見すれば「まあそうなるよね」という展開が明示化された新規ルートです。

 

っていうか、原作「カルタグラ」にはもとから冬史を抱く展開があったにもかかわらず冬史の個別エンドがないこと自体が不可解だったので、それがようやく自然な話運びになったという印象を受けました。

 

話の展開としては、千里教から逃亡した時子を保護したあと、上野連続猟奇殺人事件の主犯が赤尾であるとあたりをつけた秋五と冬史が赤尾のアトリエですったもんだするところまでは原作と同様です。

 

しかしこのあとアトリエでの攻防の末に赤尾は事故死してしまい、いつの間にか千里教本部へと戻っていた時子は焼け落ちた千里教本部跡から焼死体として発見されました。芋づる式に千里教のある山林で由良と思しき遺体が発見され、和菜は失意のなか海外留学に出てしまいます。

 

秋五は転居先で冬史と協力しながら探偵業を続けることになり、ほぼ半同棲のような生活を送るようになる、といった顛末です。

 

由良が見つけられなければ、和菜が日本から離れてしまえば、秋五が結ばれる可能性が最も高かったのは冬史なのでしょうから、この話運びは非常にシンプルで自然だと思います。

 

ちなみにこのエピソード中に秋五が受けた人探しの依頼は、明言こそされていませんが「殻ノ少女」の登場人物である水原未央が依頼人で、自分の息子同然の少年を探して欲しいというものでした。

 

あとこのルートで特筆すべきことがあるとすれば、初めて冬史の失われた左腕がCGで描かれたことでしょうか。

 

 

 

 

はてさて、今回も長々と取り留めのない文章を書き散らしてしまいました。

続きはまた後日。

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その2

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

ようやくトゥルーエンドまで到達しましたので、現時点で判明している情報と共に18年ぶりに生まれ変わったカルタグラへの思いのたけをぶちまけたいと思います。

 

 

・追加ルートについて1

はじめに声を大にして言いたいことがあります。

 

原作「カルタグラ」「サクラメント」をプレイ済みだからもういいや、なんて思われている方がいらっしゃれば、考えを改めた方が良いです。

 

原作「サクラメント」でのエンディングはサブ扱いになっており、和菜エンドと由良エンドが大幅にシナリオ加筆・ボイス新録が成されています。

 

こんなすごい見ものを見逃すなんて、仮にもイノグレ作品に興味があるのなら人生の損失と言っても過言ではありません。(注:あくまで個人の感想です)

 

またえらく長くなりそうですので、詳しくは別の記事にて語らせていただきたいと思います。

 

 

・はじまりかたについて

原作「カルタグラ」では巫女装束の女が山中で女を埋めるシーンから始まり、オープニングムービーへと続いていきます。

 

しかしリメイク作である本作では、「sea of solitude」という由良の心象風景を独白と共に見せられたのち、新オープニングへと続くというように演出が変わっています。

 

そのあとは例の山中のシーン、および原作PVで見られた「ただ、待ち続ける~魂の煉獄で」などから成る一編の詩が表示され、本編の物語へと続いていきます。

 

始まりの演出が海を前面に押し出しているためか、サクラメント編の由良ルートにおいて由良が最後につぶやくセリフも「雪が降っていたのね」から「海はどこまでも続いているのね」に差し変わるなど、至る所で作品の全体イメージが変わっている様子が見受けられます。

 

 

・本編について

原作「カルタグラ」では見かけなかったような細かなタイミングで選択肢が増えており、単純にアドベンチャーゲームとしての難易度は上がっている印象を受けます。

 

もっとも、「FLOWERS」「天ノ少女」でも実装されていた「次の選択肢へスキップする」機能が有効活用できるので、ルート検証のための周回はそこまで苦にはならないでしょう。(選択肢の組み合わせによるルート分岐自体が難しいことに変わりはありませんが……)

 

新たな選択肢の前後の展開ではボイスの新録が行われており、聞けばだいたい「おっ、原作にはない展開だな?」と気づけると思います。

(それでも原作から18年も時を経ているのに原作に限りなく声質を寄せている声優さんたちは本当に凄まじい仕事をしていると思います)

 

 

・エンディングリストについて

本作は2005年発売の「カルタグラ」原作および2007年発売のファンディスク「和み匣」収録の完結編「サクラメント」を統合させたリメイク作品です。

 

制作にあたってシナリオ修正やルートの追加などが行われた結果、なんと18にも及ぶエンディングが読者を待ち構えています。

 

物語のボリューム感としてはカルタグラ本編が8割、サクラメント編が2割といった体感ですが、各キャラクターに新たな物語が追加された結果、エンディングも増えていると言った次第です。

 

 

サクラメント編についてのあれこれ

原作「カルタグラ」のトゥルーエンドにあたるEND12「グランドエピローグ」に到達することで、本編からおよそ1年9か月後の1952年(昭和27年)12月から始まる完結作「サクラメント編」を読むことができます。

 

 ※ただし、サクラメント編に進むためには物語の冒頭の選択肢から和菜を優先させるような選択をしていく必要があり、これが足りないと「グランドエピローグ」が発生するだけでサクラメント編に進めないといった事態が起こります。

  正直、このカラクリに気づくまでかなり難儀しました。最終的には攻略サイトの力を借りることになりましたが、これを初見で気づけた人はスゴイと思います。

 

なお、サクラメント編には和菜ルートにあたる「雪椿編」と由良ルートにあたる「白詰草編」がありますが、ゲーム内でサクラメント編と地続きになった都合上、ルート分岐方法が原作と異なっています。

 

具体的には本編1951年(昭和26年)2月20日の逗子の旅館で和菜から「由良が見つかったとき、和菜と由良のどちらを選ぶか」と問われた時の回答により、サクラメント編でのルートが決定するようです。

 

 ※もっとも、これも上述した通りサクラメント編に進むだけ充分なほど和菜優先の選択を重ねてきたことが必要であり、足りなければ旅館でどう選択したとしても良くて「グランドエピローグ」で話が終わってしまいサクラメント編に進むことはできません。初見はもちろん、原作プレイ済みの読者にとっても難しすぎる仕様ではないかと感じますが……

 

 

またサクラメント編で特筆すべきことがあるとすれば、和菜ルート「雪椿編」における由良の病院脱走の経緯が大幅に差し変わっていることでしょうか。

 

カルタグラ本編から20か月近く昏睡状態だった由良が目覚めたあと、どのような行動を経て病院を抜け出し、和菜が出演する劇場まで向かって行ったのか。

 

原作「サクラメント」の由良は、七七が病室に(わざと)置いて行った果物ナイフを使って脱走を見とがめられた看護婦と医者を惨殺し、劇場の控室では共演者の一人を血祭りにあげて衣装を奪うという展開になっていました。

 

もっとも、目覚めてから2週間足らずでここまでの犯罪行為・運動ができるほど人間が回復するものなのかとか、由良がただの狂った殺人鬼になってしまっているなど元からツッコミどころの多い展開ではありました。

 

しかしリメイク後のサクラメント編における由良は、夜間に病院をこっそり抜け出し、劇場の控室では共演者の一人を殴って気絶させて衣装を奪うという非常に穏当な展開に差し変わっています。

 

これにより、由良脱走後の病院での展開もすべて差し変わっています。

原作では七七と冬史が血の海になっている病院を見てから劇場に急行するのに対し、リメイク後のシナリオでは八木沼刑事たちが病院の現場検証をしているところに遭遇した七七と冬史が、警察の目を盗んで劇場に向かうという展開になっています。

 

※ちなみにリメイク後のシナリオでは、由良脱走後の病院において七七が「(由良なら)病院関係者を皆殺しにしてから脱走すると思ったのにどういう心境の変化か」といった趣旨の発言をしています。

 

 これに対する回答としては、人知れず目覚めていた由良は、見舞いに来ていた秋五に触れられた際に彼の感情を読み取っていたから、と由良の独白で述べられています。これ以上由良に罪を犯してほしくないという秋五の想いを汲んだ、という形にしたわけです。もっとも、それでもどうしても和菜だけは殺したいので劇場に忍び込んだということらしいですが……

 

 

ではなぜここまで大きなシナリオの変化があったのかというと、追加エンディングとの整合性という側面が非常に大きいように感じます。

 

由良ルート「白詰草編」における追加シナリオとして、日本海側にある漁村に逃げ込んだ秋五と由良の新生活を描く展開があります。

 

ここで由良ルートにおけるグッドエンドであるEND18「海の光」に到達した場合、逃亡生活をしてから数年が経過したあと、由良は秋五に置手紙を残して自ら警察に出頭するという結末を迎えます。

 

そしてエンディングロールで表示されるスチルでは、由良が漁村に帰って来る様子が描かれて幕を下ろします。

 

 

突然ですが、ここで由良が犯した罪について軽く考察したいと思います。

 

少なくとも由良はカルタグラ本編において、影武者の雹、祠草時子、双子の遊女・小雪と芹の4名を直接手にかけ、凛と綾崎楼子を亡き者にするように深水や赤尾へ教唆したことがわかっています。合計6人もの女性を死に至らしめたことになり、すべての罪が立件されればほぼ間違いなく極刑が下されることでしょう。

 

しかし、上野連続猟奇殺人事件の実行犯である深水や赤尾は既に死亡しており、祠草時子の殺害を指示した有島刑事も既にこの世にはいません。由良が逮捕されたとして、彼女の犯罪をどこまで立証できるのか、すでに疑わしい状況になっています。

 

となると残るのは双子の妹である和菜に対する殺人未遂のみということになります。

 

エンディングロールにおいて由良が漁村に戻ってきたのは十数年後であると思われることから、おそらく由良が立件された事件は和菜の件のみだったのではないかと考えられます。雹については死亡してから月日が経っているため経緯を突き止めようがなく、祠草時子の事件も状況証拠だけで犯行を示す物証は何もない。まして双子の遊女の死に関しては有島刑事が言っていたように赤尾の罪にされているはずだからです。

 

非常に厭らしい発想ですが、殺害人数が1人だけなら懲役刑、それも有期刑で10年ちょっとが量刑相場なので、仮に未遂の罪で実刑判決が下ったとしても追加エンディングとも整合性を取ることができます。

 

由良の行動原理はすべて「秋五に愛されたい」につながっているため、まるで殺すことそのものが目的であるかのような原作「サクラメント」の展開とは折り合いが悪かったのではないか。阿久井はそのように考えています。

 

 

 

……さて、あまりにも久しぶりに筆をとったので長々と語りすぎてしまいました。

まだまだ語りつくせていないため、残りの内容はまた次の機会にしたいと思います。

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その1

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

この日が来ることをどれだけ心待ちにしていたことか。

 

考え始めてしまうと待ち遠しすぎて頭がおかしくなってしまいそうだったので、意識的に今日という日のことを忘れるよう努めていました。

 

それでも仕事終わりに荷物が届いていたのを確認したら、テンションはいきなり最高潮に跳ね上がったのだから自分も大概だなと呆れています。

 

本日2023年4月28日(金)、

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》

堂々の発売です!!!

 

イノセントグレイのデビュー作にしてすべての始まりである「カルタグラ」が2005年4月28日に発売されてからちょうど18年後にリメイクされて発売される。

……これがどれほどめでたくて喜ばしいことか筆舌しがたいものがあります。

 

さっそく中身を検めたいのですが、今日明日は別件で予定が詰まっているため中途半端に手を付けるわけにはいきません。

 

クソろくでもない、無駄に長く続いた人生における重要な転換期を迎えるには、きちんと時間を取ってしっかりじっくりみっちりびっしりと向き合う準備が必要です。

 

なので本日は泣く泣くではありますが本作をプレイすること自体は諦めて、「カルタグラ FHDリメイク」の公式通販に合わせて頒布された小説についてネタバレにならない程度に語っておこうと思います。

 

 

『或る晴れた暑い日に』

⇒全87ページ、『天ノ少女』の後日談を3篇にわたる短編小説で記した冊子です。

こちらは2023年4月28日以降にイノセントグレイ公式通販サイトで一定価格以上の注文をしたときに特典として付属しているものですが、イノグレファンにとってはまさしく垂涎の一品と言えるでしょう。

 

(1)「昭和三十九年、或る晴れた暑い日に」

 『天ノ少女』の「Grand END」のあと、大切な旧友から手紙を受け取った紫が真崎と共に山梨へと出向いていくお話です。

 

 訪問先は真崎にとっても重要な意味を持つので、どちらかというと『虚ノ少女』の後日談といった位置づけになる物語と言えるでしょう。紫を視点として旧友やその家族との和やかな小旅行の様子が描かれています。

 

 あれだけの事件があったあとでも、生きている限り人生は続いていくもの。ようやく穏やかな生き方を手に入れた一家の様子や、紫と真崎のつかず離れずなやり取りを見守ってあげましょう。

 

 

(2)「昭和四十五年、或る晴れた暑い日に」

 『天ノ少女』の「True END」の前年に、私立櫻羽女学院 で起きた事件を描いたお話です。

 

 イノグレ過去作の遺伝子を受け継ぐ3人の女学生と、今や警部補となった佐東さんらのやり取りを見ることができます。

 ※殻ノ少女が昭和31年を舞台とした物語なので、佐東さんは単純計算でアラサーになっていることに。なかなか早めな昇進と思われるのでやはり優秀と言える。

 

 万が一、イノグレの過去作に触れずにいきなりこの小説を読んでしまえばちょっとしたミステリー小説で済ませてしまうかもしれませんが、『殻ノ少女』3部作をすべてプレイしたことがある人であれば明言されていない文章の端々から隠された意図を読み取ってニヤリとほほ笑むこと間違いなしです。

 

 

(3)「昭和四十五年、或る晴れた春の日に」

 『天ノ少女』の「True END」の直後を描いたお話ですが、ページ数はたったの2ページにすぎません。しかし、あまりにも重大な意味合いを持たせた2ページです。

 

 何故かというと、阿久井が本ブログにて2021年3月にしたためた『天ノ少女《PREMIUM EDITION》 その4』において述べていた疑問の答えそのものが描かれているからです。

 

 すべての因縁に決着をつけた探偵・時坂玲人は救われることができたのか。

 

 『殻ノ少女』シリーズに手を付けた方、興味がある方、なんとしてでもイノグレ公式通販でこの特典小説を入手してください。

 

 読めばきっとわかるはず。彼の未来がどう続いていくのか、是非とも思いをはせてください。

 

 ※ただちょっと気になるのは、玲人が『彼女』に対して「会った」ことを伝えた日は昭和46年3月4日のはずなので、3篇目の表題は1年ズレているのではないか、ということですが……

 

 

……さて、記事の表題は『カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その1』なのにほとんど『殻ノ少女』シリーズの話しかしていないタイトル詐欺になってしまいましたが、文句ならこんなとてつもない小説を「カルタグラ FHDリメイク」の発売に重ねて通販特典としてくっつけたイノグレ側に言ってやってくださいね。

 

――「いいぞ、もっとやれ!!!」って。

 

 

 

※※※ 2023/5/8 追記 ※※※

ちなみに、原作「カルタグラ」に関するネタバレ全開レビューも当ブログにて掲載しています。

いまからおよそ7年ほど前に17編にわたって書き散らした内容なので見返すとイロイロと恥ずかしさもあるのですが、ネタバレを踏んででもシナリオの全体像が知りたい、という方がいらっしゃればご高覧いただければと。

「カルタグラ ~ツキ狂イノ病~ (その1)」

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その0

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・前段

お久し振りでございます。

 

筆不精がたたり、月に数回の呟きをするばかりで最後にブログを更新してからもうすぐ2年が経ちそうな勢いで恥ずかしいばかりです。

 

しかし、今回ばかりはつぶやきだけでは到底語りつくせぬほど言いたいことがあるため、敢えてブログをしたためることにした次第であります。

 

本日ついに、全イノグレファン待望のビッグニュースが舞い込んできました。

 

カルタグラFHDリメイク発売日決定!

(2023年4月28日)

カルタグラ~ツキ狂イノ病~ FHD (18歳未満閲覧禁止!!!)

 

 

新オープニングムービー及び新テーマ曲公開!

 

 

 

……もうね、本当にもうね、この日をどれだけ心待ちにしてきたことか。

 

カルタグラの発売が2005年4月28日、

 

阿久井が初めてプレイしたPS2カルタグラの発売が2005年12月15日、

 

実に18年ぶりのリメイクですよ!?

 

発売当初生まれた子供が、成人向けゲームをプレイできてしまう年数が経ってるわけですよ!?

 

長かった……本当に、長かった。

 

辛い事ばかりの人生だったけれど、心の底から大切で大好きな作品の新たな1ページに再び相見える幸福に感謝を。

 

ここまで活躍しつづけてくれたイノセントグレイにも万雷のごとき拍手を捧げたい。

 

 

 

・新オープニングについて

カルタグラのオープニングムービーはそれぞれ100回以上は見ているけれど、

 

今回のオープニングはまた一味違った趣の作り方をしていて興味深い。

 

旧2作のオープニングでは、登場人物の紹介を兼ねて作品全体の雰囲気を余すところなく表現することに力を入れていたように感じる。

 

一方の新オープニングでは、最初から最後まで一貫して『上月由良』という女性の哀しいまでの心の吐露を映し出そうとしているように思えた。

 

 

原画兼ディレクターの杉菜水姫氏の絵のタッチが18年前と比べると水彩画チックになっていることもあり、より儚げな雰囲気が強調されている。

 

霜月はるか氏とMANYO氏が再びタッグを組んだ表題曲「孤独の海」は、そんな映像美に哀愁と愛執を際立たせる。

 

悲惨な生い立ちの中、高城秋五という青年との出会いに運命を感じながらも、戦争によって引き離されてしまった由良の悲哀と絶望が楽曲と歌詞に滲み出ていて、もうとにかく胸が苦しくて仕方がない。

 

 

※以下、動画からの耳コピ。正確な歌詞・表記ではないので注意。

 

⇒2023年2月22日 更新

 本日到着した「孤独の海 イラスト&絵コンテ集」に歌詞の手書きメモが併記されていたので、それを正式版と仮定して表記を訂正しました。

 

震える唇から 漏れ出す吐息もまた
混ざり合う悦びを 得ることもなく消え去った

 

孤独を食み 渦巻く感情に
絡みとられ 動くこともできず
顔をふさぎ 闇に沈み込んだ
私の中 彷徨うの

 

行かないで その背中を見つめて
触れてしまえば すぐにひびらく
波の音がかき消す
きっとこのままいられるはずないでしょう

※ひびらく(疼く)=ひりひり痛む。 ずきずきする。

 

「行かないで」と秋五に哀願したとき、由良はまだ年端も行かない少女だった。

 

秋五の後ろ姿が映し出されるシーンが、まるで涙で滲む目で何度も瞬きをしたかのような情景を映像のブレで表していて、やるせなさで言葉に詰まってしまう。

 

ちなみに、PC版とPS2版とではレーティングに差があることから、出征を告げてきた秋五を引き留めようとする由良の行動にかなりの差があることも言い添えたい。

 

PC版では愛を喪う絶望ゆえに、愛情と執着がそのまま呪いに変わってしまったかのような佇まいで秋五の首に手をかける。

 

一方でPS2版では、愛はもちろんのこと秋五の命が見知らぬ地の果てで失われる現実に耐えられず、まるで幼子の駄々のように、縋りつくような思いで心中を図ろうとする。

 

どちらにせよ一度は「失くすくらいならいっそ」という行動に出てしまうのが実に哀しいところだが、由良の置かれた境遇を考えるとやはり同情的になってしまう。

 

自分にとって唯一「幸せ」だと言える何かを理不尽に取り上げられそうになったら、もう他に生きる希望が何一つ残されないのだとしたら、きっと誰だって死に物狂いで「それ」を留めておこうとするに違いない。

 

由良にとってのその手段が「死と言う名の永遠」しか考え付かないほど追い詰められているというのが、どうしようもなく哀しくなってしまうが。

 

 

 

……あと話は変わるが、テーマ曲が新しく書き下ろされるにあたり作品自体にちょっとしたイメージの変更があることも見逃せない。

 

これまでのカルタグラのテーマ曲「恋獄」「LUNA」「硝子の月」では、いずれも曲中で「月」を連想するフレーズが多く含まれていた。

 

しかし今回のテーマソング「孤独の海」では、映像からもわかる通り海中や波打ち際を連想する表現が多々含まれている。

 

これはもしや、ダンテの神曲において煉獄篇の始まりが、地獄巡りから脱出したダンテが海のような世界を目の当たりにするところから着想を得ているのだろうか。

 

 

 

あとさらに話は変わるが、ムービー中に出てくる和菜の表情があまりにも凍り付いていてドキッとさせられた。

 

一度でもイノグレの過去作に触れたことがある人であれば、上月和菜という人間の天真爛漫な明るさはイヤと言うほど知っているはず。

 

『余程のこと』でもない限りあんな虚無に満ちた表情をする女性ではないはずなのに、一体どういうことなのか気になって仕方がない。

(そもそも、アレが本当に和菜本人なのかも含めて)

 

 

 

なんにしても、この限られた映像の中にちりばめられた真意を知るには、実際にゲームをプレイするしかないというのがもどかしい。

 

嗚呼、早く月日が経ってくれないものだろうか!!!