5章の探偵パートの途中まで。
***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
漱石の裁判を終えて2ヶ月がたったころ。成歩堂たちはホームズの家の屋根裏部屋を間借りして事務所を設けていた。ある朝、ホームズがヴァイオリンの演奏が下手になったと嘆く。しかしよく見るとホームズが手にしているのはヴァイオリンではなく、ビオラだった。ホームズは自分のヴァイオリンを質入したあと、間違ってビオラを持って帰ってきてしまったらしい。成歩堂たちはホームズのヴァイオリンを受け取りに質屋のハッチを訪ねることにする。店主のハッチとやり取りをしていると、質屋に別の来客があった。一人は、成歩堂が大英帝国で初めて受け持った裁判の証人だった少女ジーナ。もう一人は立派な服を身につけた紳士風の青年エッグ・ベネディクト。ベネディクトはジーナが質から引き戻した上物のコートが自分のものであると主張するのだが……という筋。
漱石の事件のあと、成歩堂たちは弁護の依頼を受けることなく平和な日々をすごしていたらしい。もともとが司法留学生の代理のため、大英帝国で学ぶべきことは豊富にあったのだろう。その間の出来事が気にならないわけではないが、特筆すべきことがないならそれでもいい。
ヴァイオリンの演奏が下手になったと嘆くホームズのローテンションっぷりに少しだけ笑わさせられた。心なしか何かを発見したときに鳴るSEもホームズが喋るときだけおどろおどろしくなっていたりと、全身でガッカリな様子が伝わってきた。
さて、ここに来てジーナ・レストレードが再登場である。
確かレストレードというのはシャーロック・ホームズの原作では刑事として登場する人物だったはずだが、大逆転裁判の世界ではスリの少女になっている。2章では事件の証人として脇役もいいところだった彼女だが、今回の事件では被告人になりそうな予感がひしひしとしている。
おそらく、被害者は質屋のハッチになるのではないだろうか。
写真機で30分おきに自動作撮影する機械を発明し、ハッチの店に取り付けさせたというホームズ。ルームメイトのアイリスが以前さらっと言っていたが、本作のホームズには発明という技能もある模様。発想は現代の監視カメラそのものなのだが、1日あたり100枚近くも特製フィルムを消費するとのことで、費用が嵩みすぎるという弱点がある。十中八九、事件の証拠品として採用されることだろう。
それにしても、大英帝国における質屋の役割というものを知れたのはタメになった。
なんでも、当時のイギリスでの質屋は下流庶民の銀行の役割に近かったらしい。
劇中では次のように説明された。
曰く、月曜日に上等な服や高価な装飾品を質に出して資金を手に入れ、その金を元手に商売をする。そして土曜日になったら稼いだ金を質屋に支払い、質入品を取りもどす。稼いだ金に余剰があれば、いつか質入するために高級品を買っておく、とのこと。
日本では質屋というと、貧困にあえいでいる者が泣く泣く大切なものを金に変える場所というイメージが強いのだが、イギリスでは商売を成り立たせるための一施設に過ぎなかったのだろうか。
理想がすぎるかもしれないが、そもそも私は商売をするために借金をするという発想が嫌いである。マイナスから出発しても必ずプラスに転じる保証はないし、そもそもプラスからプラスに増やすよりも単純に難しい気がするのである。
異国の人々の商魂たくましさは、こうした生活に根ざしたものなのかもしれないが、多分わかりあえる日は来ないと思う。
さて、ホームズとの共同推理によって、エッグ・ベネディクト(偽名)の思惑を見抜いた成歩堂たち。
今後の展開に期待である。