引き続き、和菜ルート(TRUEルート含む)における3幕・4幕のストーリーについて。
***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
居候先の遊郭での療養を終えた秋五は、いよいよ由良の捜索を再開する。
しかし、ここで七七から同級生が秋五に会いたがっていると聞かされ、止む無く会いにいくことに。
少女・綾崎楼子の登場はバラバラ殺人にも由良の捜索にも関わりのない、唐突なものだった。
しかし、秋五と楼子が数年ぶりに再会した次の日に、楼子は殺害されてしまう。
凛と同様、どのルートを通っても彼女の死は確定している。
いわば彼女は事件がまだ終わっていなかったことをプレイヤーに思い知らせるためだけに登場した死にキャラなわけだが、ちょっと扱いが雑な気がしないでもない。
ちなみにバッドエンドのルートのひとつに楼子ENDがあるのだが、このルートが非常に後味が悪いのである。
クソ小生意気な後任刑事である八木沼にメッタメタに拷問されて自白を強要されたり、楼子の殺害時の様子をつぶさに聞かされたり、現実と妄想の区別がつかないまま留置所の外に連れ出されたり……およそいいことがない。
それもこれも、楼子の求愛を拒絶すれば回避できるので、浮気根性を出さなければいいだけの話ではあるのだが。
(本作におけるサブエンディングのほとんどが、秋五がとんちんかんな選択をしたときに分岐するものなので、彼がきちんと探偵としての職務を全うしているかぎりは下手なことは起こらない。
浮気ダメ、絶対!)
冬史や雨雀からの情報をまとめると、次のようになる。
・由良と思しき人物が十数日前、上野葵町で目撃された
・その人物は、冬史が所属する「死の腕」の幹部の情婦・雹である可能性が高い
・雹が宗教組織「千里教」に出入りしていた可能性がある
・上月家は古くから「憑き物筋」と揶揄されている
これらの情報を元に、由良が千里教の施設内に隠れている可能性があると考えた秋五は、信者を装って件の団体に潜入しようとする。
プレイヤーはここで「宣託の御子」なる人物の声を聞くことになるのだが、これが由良の声そのものなのである。
秋五がこの時点で「宣託の御子」の正体に気づいていれば、何人かの人物は死なずにすんだ可能性がある。(後述する宗教団体の女や、非常に出番が少なかった双子の遊女も)
といっても、秋五と由良が離れ離れになって7年が経過しているため、声を聞いても解らなかったといえばそれまでなのだが。
千里教への潜入に失敗し、「宣託の御子」から「上月由良は死んでいる」というありがたいお告げをいただいて秋五は撤退する。
上野における最後の手がかりが潰えたことで打つ手がなくなってしまった秋五は、由良が過去にどのように生きていたのかを調べることで彼女の行方を追うきっかけをつかもうとする。
ただし、そもそも「失踪人・上月由良の捜索」という依頼は茶番なのである。
依頼人である由良と和菜の父親が、姉を捜すといって聞かない和菜を黙らせるためだけに依頼したのであって、依頼人はむしろ「由良を探し当てないで欲しい」とまで言っていた。
依頼人の意向に反してまで秋五が由良を探していたのは、彼が過去に由良と関係を持っていた罪悪感からである。
それに加えて、由良とまったく同じ顔を持つ和菜から「姉を探すのを手伝わせて欲しい」などと懇願されてしまったのでは、引くことができなかったのかもしれない。
本作の開始時点では、秋五は非常に事務的な態度を取っていた。しかし、人懐っこい和菜に絆されてか、次第に素の表情を見せるようになっていく。それもこれも秋五の中に由良の存在が残っているせいだと思うのは気のせいか。
そしてそれは和菜もずっと感じていたことらしい。さすがに天然おバカなだけでは女優は務まらないのだろう、秋五の自分に対する態度の奇妙さに薄々気づいていたようだ。
逗子に向かう途中、秋五は黙っていた過去を和菜に告げる。
その夜に、二人はベッドインすることになる。
さて私が先日、二人がどれだけ顔を合わせていたのかを鬱陶しいほど数えていたのを覚えているだろうか。
ここで、第三幕がはじまってから二人のベッドインまでの日について簡単に数えてみたい。
2月15日……捜査の打ち合わせのために和菜に会う。
2月16日……楼子とのデート。和菜の舞台公演を鑑賞するも、直接は会わず。
2月17日……二人で逗子へ移動→なんやかんやあってベッドイン。
数えてみて驚愕したのだが、なんとこの二人、まともに顔を合わせて7日するかしないかという短期間で肉体関係にまで発展しているのである。
ちなみにこれは性的描写のカットされているPS2版でも同様である。
(情事のシーンこそカットされているが、事後のCGと会話はしっかり収録されている)
「こ、これがオトナの恋愛事情ってぇヤツなんですかい……???」とこんがらがっていた当時の自分を今でも思い出す。
なんというかこう、ここまでくるともはや明白なのではないか。
結局のところ、秋五は和菜の中に由良を見ているのである。
和菜は、秋五が和菜に優しく接していたのは自分が由良と同じ姿だからではないのかと問い詰めたが、まさしくそれが正解なのではないか。
当然のように秋五は否定していたが、それは本人が否定したかっただけなのではないか。
7年前、徴兵がかけられたせいで逗子から離れなければならなくなったとき。
秋五を引き止めるために、由良は秋五の首を絞めた。
そしてそのまま二人は離れ離れになってしまった。
このときの出来事をずっと後悔して生きてきたから、依頼人から望まれてもいないのに由良を探そうとしていたのではないのか。
だったら、と言いたい。
なぜもっと早く、一秒でも早く由良を探そうとしなかったのか、と。
本作の事件は、結局のところ秋五が引き金を引いている。
彼がもっと早く動き出していれば、違う結末が待っていたかもしれない。
そう気づかされるのは終幕になってからのことのため、ここでは深く追究しないが。
今回は主に3幕のことについて触れたため、次回は4幕を中心に記録をとりたいと思う。