悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

カルタグラ ~ツキ狂イノ病~ (その8)

和菜ルート(TRUEルート含む)における3幕・4幕のストーリーについて(その3)。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

 

まずは、4幕の『和菜を受け入れない』ルートについて。

 

和菜からビンタをいただいた翌日、秋五は宗教団体「千里教」の幹部・祠草時子を路傍で発見する。

 

彼女は1幕からちょいちょい秋五の出先に姿を見せており、上野連続バラバラ殺人事件の際には参考人として警察に連行されていた。ただし、たいした証拠も無いためすぐに釈放された模様。

 

プレイヤーは日と日の間に犯人視点のストーリーを見させられる。主人公である秋五はあずかり知らないことだが、時子が犯人と深いかかわりを持っていることをプレイヤーは知っている。

 

秋五は犯人に見切りをつけられて襲撃された時子を自宅に匿う。もちろん、先日潜入に失敗した千里教の内部情報を引き出すためである。

 

ただし、時子は何もしゃべろうとしない。あとからやって来た冬史からの脅迫に対しても眉ひとつ動かさない。

 

時子から情報を得るのは無理だと判断した秋五は、ひとまず場所を移して冬史から調査報告の続きを聞くことにする。

 

冬史が持ってきたのは、千里教の信徒の名簿。脱退した元幹部が持っていた半年以上前の記録だという。

 

この名簿こそこの物語のキーアイテムなのである。実際、秋五はこの名簿から推測した事実を頼りにバラバラ殺人の黒幕にたどり着く。

裏を返すと、この名簿がなければ秋五は何にも気づくことができなかったとも言える。そういう意味では、事件解決の立役者は冬史なのではないかとも思える。

ただし、膨大な資料の中から事件解決に必要な情報を読み取ったのは秋五である。それだけは本作における彼の数少ない功績と言っていいだろう。(終幕において、七七もその点は指摘している)

 

秋五たちが名簿とにらめっこしていたその日の夜、和菜は誘拐されてしまう。

 

秋五にとって、和菜が狙われているなどということは寝耳に水だったろうから、用心しろと言われても無理な話ではあるのだが、非常に危うかった。秋五が名簿を手にしていなければ、そこから犯人の情報を掴んでいなければ、十中八九和菜は殺されていただろう。

(とはいえ、和菜は「死の腕」の幹部の情婦・雹なのではないかと疑われ、一度はチンピラたちに襲撃されている。それを考えると、秋五も和菜も危機意識が低かったとも言えるか)

 

名簿を元に犯人の住居を訪ね、ブラフをかけて相手を挑発する秋五。この時点で秋五はそこに和菜が監禁されているとは知らない。

一悶着あったあと、秋五は犯人を取り逃がしてしまう。さらに、帰宅後には時子に殴られて気を失うという貧弱っぷり。戦争に行っていた割には少々弱すぎるというか、油断しすぎな気がしないでもない。

 

そんな彼の詰めの甘さが、事件を迷宮入りさせてしまう。

 

秋五が目覚めた時にはすべてが終わっていた。「やり残したことがある」と言って出て行った時子も、捕まえそこなった犯人も、千里教本部で起きた火事にまかれて死んでしまったのだ。

 

おまけに、千里教の敷地にある山地から由良の死体が出てくる始末。秋五たちの捜索は唐突に終わりを告げたのである。

 

一応、バラバラ殺人の首謀者は火事にまかれて死んだ人物だということで決着したが、どうして由良が死んだのか、何一つわからないまま月日が経っていく。

 

やがて和菜は演劇の勉強のために海外へ留学し、秋五は単調な仕事の日々に埋没していく。

 

そしてある日、秋五の前に死んだはずの由良が姿を現すのである。

 

 

 

――この「和菜エンド」を迎えなければ、秋五の新宅に押しかけた『和菜を受け入れる』という選択肢が出てこない。事件の真相が知りたければ、この何とも言えない微妙な幕切れを一度は体験する必要がある。

 

 

このルートでの出来事は、終幕で七七が解説する「IF」の事態にあたる。

よくもまあこんなに都合よく事が運んだものだと感心したが、詳しくは終幕での感想にて記録をとりたいと思う。

 

 

次回は、『和菜を受け入れる』場合についてを予定。