和菜ルート(TRUEルート含む)における3幕・4幕のストーリーについて(その4)。
***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
4幕の『和菜を受け入れる』ルートについて。
このルートは2週目以降に選択でき、選択することによってTRUE ENDまで一直線に突き進んでいく。
和菜との同居を容認した秋五。
和菜は自分たちと違って堅気だから、付き合い方は良く考えろと楼主・雨雀から忠告されていた。それにもかかわらず秋五は、自分の手を取ろうとする和菜の願いを跳ね除けられなかった。
本作は和菜が正ヒロインであるし、なにより和菜は純真無垢な気持ちの良い女性である(「好青年」と言うと男性っぽい印象になるため、表現に困る)。和菜を選ぶこと自体はさほど悪いことではない。
しかし秋五のこの選択は、真犯人の立場からすると火に油を注ぐものだったとも言える。それについてはまた後日にまわすとして――
ひとまず同居後の初夜を迎えた翌日、秋五と和菜は路傍で負傷した時子を発見する。
『和菜を受け入れない』ルートでは秋五が一人で時子を発見していた。この場面に和菜が加わることで時子の態度が軟化するのである。
時子は気を失う直前、和菜の顔を見て「由良さま」と口走る。
それを元に秋五は推理し、ある仮説を立てる。
先日、簾越しに面会した千里教の教主こそ、上月由良だったのだと。
(正直気づくのが遅すぎる気がしないでもないが、由良と「似ている」人物が宗教団体に出入りしていたという情報だけではそこまで推測するのは難しかったのだろうか)
秋五は時子に問い質すも、返ってきた答えはNO。
確かに千里教の教主は上月由良だったが、彼女はすでに殺されており、秋五が先日会った人物は別人だと聞かされる。
そして秋五は、時子の口から千里教に関する様々な事実を教えられる。
曰く、
・発足当時は天恵ノ会という小規模な団体だった。
・当時の教主が信者の女性に手を出す事件がたびたび起こっていた。
・二年前、教主が後継者として盲目の女性をつれてきて、そのまま失踪した。
・新しい教主の補佐という名目で、のちのバラバラ殺人の黒幕が幹部として入団した
・「宣託の御子が自らの命を引き換えに、千里教信徒たちを破滅の日から救う」という教義がある。
・上記を含む教義・予言をまとめたのは事件の黒幕である。
・数々の事件は、予言を現実のものとするために黒幕が別人に実行させていたもの。(秋五を襲撃し、冬史に成敗された人物)
・そのうちの数件は、黒幕自らが手を下していた。
・現在の教主は、教主復活の予言のために黒幕が用意した偽物である。
・殺される予定だった偽者が、逆に教主である由良を殺害した。
これらの情報を得た秋五は、懇意にしている有島刑事に黒幕の指名手配をお願いする。
凶悪な殺人犯をいち探偵が捕らえる責務はない。秋五が有島刑事を信頼していることとあわせると、この行動は自然な流れだったと言える。
しかし、やはり秋五は詰めが甘い。
彼は有島刑事と落ち合うために、自宅に和菜と時子を二人きりにしてしまったのである。
凶悪な殺人事件の重要な証言者を、か弱い女性とたった二人きりに、である。
おまけにその事実をホイホイ口に出してしまった。その事実を誰が聞いているかを考えもせずに。
秋五が帰宅すると、時子が首を吊って死んでいるのを発見する。
おまけに和菜はどこにもいない。家の前を見張らせていたチンピラは、家を出入りしたのは和菜一人だけだったという。
現場からは遺書のようなものが出てきたため、有島刑事たちは時子の件を自殺として片付けようとする。
その際の有島刑事の不自然な振る舞いを見て、ようやく秋五は気づくのである。
事件の、千里教の背後に、有島刑事がいたことに。
秋五が有島刑事に会いに行ったとき、彼は冬史から受け取った千里教信者の名簿を持っていた。その中身をもっとよく確認していれば、先述したようなうかつな発言はしなかっただろうに。
しかも、秋五は和菜と逗子に訪れたとき、偶然にも七七と顔を合わしている。
七七は、冬史が成敗したバラバラ殺人事件の実行犯が単独犯だとは思えないとして、独自に調査を続けていた。調査の末に、実行犯と千里教の関係を突き止め、千里教で使用しているマークが薬売りで有名な奈良橋家の家紋と同じだということも調べていた。秋五はこの話を七七から(無理矢理)聞かされている。
おまけに、由良捜索の依頼人である由良と和菜の父親から由良に関する昔話を聞いたとき、「ナラハシカズマ」なる人物が上月家に訪れていた事実も聞いていた。
秋五がこれらの情報をもっとはやくに結び付けられていれば、少なくとも時子が死ぬ結果は避けられた。
やはり秋五は、とことん「気づけない」男である。