悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

新春ドラマスペシャル 坊っちゃん

録画していた番組を鑑賞しましたので、念のため記録をとることにいたします。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

 

●あらすじ

 親譲りの無鉄砲と真っ直ぐ過ぎる性格で、子供の時から問題ばかり起こし、周囲からいつも問題児として扱われてきた坊っちゃん二宮和也)。唯一、住み込みの女中・清(宮本信子)だけは立派な気性だと褒めてくれ、坊っちゃんのことを何かとかばってくれていた。
物理学校を卒業した坊っちゃんは、校長(佐藤浩市)から松山の中学に教師の口があるが行かないかと勧められる。鎌倉より遠くに行ったことがない江戸っ子の坊っちゃんだが、特に就職のあても無かったので松山に赴任することを決める。
着任早々、校長(岸部一徳)から生徒の模範になるようにと言われ、模範とはどういうことか聞く。校長の代わりに教頭(及川光博)が教えると「できません」と答えて、教師たちをあぜんとさせる坊っちゃん。その場は収まり、同僚の数学教師(古田新太)が坊っちゃんの下宿先を世話してやると言う。離れた教頭の席では、画学教師(八嶋智人)が何やらコソコソ教頭と話していた。
下宿先に向かう途中、坊っちゃんは同僚の英語教師(山本耕史)が町一番の美人・マドンナ(松下奈緒)と密かに思い合っていて、しかもその女性を教頭が狙っているという話を聞く。田舎にもいろいろとあるものだと思いつつ下宿先へ着くと、なんだか隣の男(又吉直樹)が気に掛かる。
そして、いよいよ教べんを執ることになる坊っちゃん。しかし生徒たちとは、とんとうまくいかない。団子屋で団子を2皿食べたこと、温泉で泳いだことが学校中に知れ渡り、生徒からからかわれる。初めての宿直の夜には生徒たちから蚊帳の中にイナゴを入れられるというイタズラを受けた。やった人間を問い詰めるも、認めようとしない。「人にも自分にも、うそをつくのだけは、まっぴらごめんだ」。
やがて、マドンナの両親(小林薫浅野ゆう子)を巻き込んだ赤シャツの卑劣なはかりごとを知り、ずるいことが許せない坊っちゃんの快刀乱麻な大暴れが学校を、街を、人々を変えていく―。

www.fujitv.co.jp

 

 

●感想

 

夏目漱石没後100年を記念してフジテレビで放映されたスペシャルドラマ。

 

学生の時分に原作を読んだきりだったため、詳しい内容を忘れかけていた。

異常に直情的で負けん気の強い新米教師が理不尽な事柄に食って掛かる――たしか、そのようなストーリーだった気がする。

 

クラシカルな文学作品を読むとたいてい悲劇だったり精神問答が多かったりと、何かと不愉快な思いをすることが多かったが、本作の読後感が非常に良かったことだけはおぼろげに記憶していた。

 

 

 

さて、本作の主人公『坊ちゃん』は、ウソがつけない激情家である。その激しすぎる気性から前職で問題を起こしてしまう。仕事を干されたのち、母校の紹介で四国の中学校へと赴任することになるのだが、そこでも彼は激怒する。

 

新米教師をバカにする生徒たち。

他人の恋路を邪魔する似非エリート教師。

 

正直者がバカを見て、卑怯者だけが得をする。そんな理不尽が許せないと、彼はひたすら怒るのである。

 

現実の誰もが『坊ちゃん』のように怒りを露わにして、言いたいことを腹いっぱいに言える訳ではない。そんなことをすれば漏れなく解雇されたり、卑怯者たちのいい的にされてしまうからだ。

本作の気持ちいいところは、普通の人たちが抱えるそういった悩みを吹き飛ばすかのような『坊ちゃん』の明朗快活な言動であろう。

 

 

スペシャルドラマでは怒りに燃える『坊ちゃん』役を二宮和也氏が好演してくれた。

そのほか、坊ちゃんの家の使用人・清役に宮本信子氏、山嵐役に古田新太氏、赤シャツ役に及川光博氏などなど、豪華俳優陣が多数出演。大変満足のいく芝居であった。

 

 

夏目漱石の小説では「こころ」を読みかけたまま放置してしまっているため、いずれそちらについても触れられたらと思う。