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悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

カルタグラ ~ツキ狂イノ病~ (その13)

PCゲーム

終幕およびストーリー全体についての感想などを記録いたします。(その4)

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

 

由良が関わった事件についての疑問はまだある。

 

雹の失踪、上野連続バラバラ殺人と続いたあと、秋五は由良の捜索を再開させる。

2月17日、秋五は信者を装って千里教に潜入し、教主である「宣託の御子」との面会を果たす。

「宣託の御子」の正体は由良なわけだが、このとき彼女は奇妙な反応を見せている。

雹という通り名の女が教団を出入りしていないかを探る途中で、秋五は千里教が上野連続バラバラ殺人を予言したという話を切り出す。

すると由良は、

 

「上野の猟奇殺人……?」「それは、なんのことでしょうか?」

御簾の向こう側から、震えるような細い声。

 

といった反応をしたのである。

 

 

これはどう解釈すればよいのか。

秋五が千里教に潜入した時点で乙羽や凛を含む6人の女たちが殺害されている。6人のうち凛については由良が赤尾に指示を出し、さらに赤尾が深水に指示を出して殺させたはず。由良が事件のことを知らなかったはずがない。

では上記の反応は演技によるものだったのか。

このときの由良の反応を好意的に解釈するならば、由良が知らなかったのは事件についてではなく、事件の予言についてだったのではないかと考えられる。

千里教の教義や予言は、初代教主が作った猥雑な内容を、赤尾が整理して作り変えたものである。由良は雹が教主復活の予言を現実のものとするために用意された替え玉であることを知っていた。教主である以上、教義や予言については熟知していたはず。

 

由良が知らなかったのは、予言が教団の布教に利用されていたことなのではないか。

1幕において、時子が上野界隈にて千里教の予言を声高に謳いあげる場面があるが、これは由良のあずかり知るところではなかったのではないか。

時子の行動は赤尾の脅迫によって成されている。由良のために教団を強固なものとしたい赤尾によって、予言が流布されたのだと筆者は予想する。

 

教団にさしたる執着もない由良にとって、教団の知名度を上げたいなどという欲はない。由良としては、赤尾や時子の一連の行動は予想外だったはず。

とはいえ、それで由良の計画に何らかの支障が出るわけではない。

むしろ、教団と事件を結びつける情報が公になることで、バラバラ殺人の黒幕が赤尾であることを印象づけることができる。

簾越しに秋五と会話していた由良の動揺が短かった理由は、このような損得計算があったからなのではないか。

 

 

つぎに、首を吊った時子の事件について。

千里教の内部告発者である時子は、千里教のフィクサーである有島刑事にとって邪魔な存在だった。タダでさえ赤尾の暴走により教団の存続が危機にたたされている状況で、教団内部にまで警察の捜査が及んでしまえば、有島刑事と教団の関係が発覚する恐れがある。そのため有島刑事は、時子を始末することにした。

しかし有島刑事は千里教の裏の支配者であるため、教団の信徒には顔が知られていない。時子を消すにしても、動かせる手駒がほとんどいなかった。

そこで彼は、時子暗殺の役目を由良に任せた。

 

有島刑事と由良は、由良が人体実験を受けていた10年前からの顔見知りである。当然彼は、由良の抱える秘密も知っていたはず。

 

7年前に秋五と由良が出会ったとき、由良は両目を包帯で覆っていた。だから秋五は彼女が盲目であると解釈した。

 

しかし実際は、由良の視力には何ら問題はなかった。

由良が包帯を巻いていたのは、「瞳」を誰にも見られないようにするためだったのだ。

 

有島刑事は由良の眼が見えることを知っていた。それにもかかわらず、千里教の防空壕で秋五と対峙した有島刑事は、「盲目の由良を2年間世話してやった」という趣旨の発言をしている。

これはどうしてだったのだろう。由良の目が見えようと見えまいと、有島刑事にとってはどうでもいい情報のはずである。それなのに有島刑事は、「由良は眼が見えない」と秋五に再確認させるような物言いをした。

 

このときの秋五の頭には、雹が和菜のふりをして秋五の自宅に帰り、時子を殺害したという構図ができあがっていた。秋五にとって由良は死んでいる存在である。秋五にとって、由良が時子暗殺の実行犯であることはありえない。

そのうえで有島刑事は、「盲目の由良には時子を殺害することは不可能」という刷り込みを与えようとしたように見える。

まるで無意味な行動に思えるのだが、理由はなんだったのだろう。

 

万が一、秋五が有島刑事との死闘を生き残った場合に備えて、最後の意地悪を仕掛けたのだろうか。それとも、長年利用してきた由良に一抹でも罪悪感があったからなのか。

 

 

明確な答えは出せそうにもない。有島刑事の真意はいまも謎のままである。