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悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

強き蟻 テレビ東京開局50周年特別企画

ハードディスクに録画したまま眠っている番組を処分しようとしたところ、1年前の番組が発掘されたため鑑賞いたしました。やはりこれも記録しておこうと思います。

 

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

沢田伊佐子(米倉涼子)は、31歳年上の会社役員・沢田信弘(橋爪功)の後妻として嫁いだ。玉の輿に乗り何不自由なく暮らしているように見えたが、家計の実権を家政婦に握られているため、不満な日々を送っていた。ある日、伊佐子の愛人である石井寛二の家へ向かうと、そこには血を流してベッドに横たわる女が一人。石井の元彼女だというその女は、石井と伊佐子との不倫をきっかけとして石井と口論になり、頭を打ち付けてしまったのだという。女は怪我をして気を失っているだけだと思われたが、彼女の手元には大量の睡眠薬と遺書が。あわてて睡眠薬を吐き出させ、女を病院に連れて行くように石井に告げて伊佐子は逃げ出す。しかし翌日、女が死んでしまったことが明るみになり――という筋。

 

松本清張「強き蟻」:テレビ東京

 

 

 

2014年7月2日に放送されたスペシャルドラマ。ただし、筆者が録画していたのはその再放送版で、2015年1月4日に放送されたものである。

(どうでもいいが、TV局は再放送番組に画面が見切れるほど大きなテロップを入れることを直ちにやめるべきである。再放送番組を新番組の宣伝のために流すとしたら、その作品に関わったすべての人間に対する冒涜である。公共放送の担い手として恥を知るがいい、と言ってやりたい)

 

原作は松本清張氏による同名小説。1971年に出版されたものだとか。

 

主演の沢田伊佐子役は米倉涼子氏。『黒革の手帖』、『松本清張 けものみち』、『松本清張 わるいやつら』と、松本清張原作の悪女役といえばこの人、というほどひっぱりだこである。

 

 

本作は、「未必の故意」による殺人をテーマにしたサスペンスである。

わざと罪を犯そうとするのが「故意」で、わざとではないけど罪を犯してしまったのが「過失」だとするなら、「未必の故意」はその中間にあたる概念である。平たく言えば、「相手がどうなろうとかまわない」として相手を放置して、結果的に相手を害するという消極的な故意のことだ。

 

警察は、伊佐子の愛人である石井が「未必の故意」によって元彼女を死に至らしめたとして、殺人罪で逮捕した。相手が死ぬとわかっていたのに救急車を呼んで助けを求めなかったから、という理屈である。

現場にいた伊佐子は睡眠薬と遺書を見ているため女が自殺したとわかっているが、睡眠薬は吐き出させてしまったため体内にはほとんど残っておらず、遺書は伊佐子が処分してしまって存在しない。放っておけば石井の有罪は濃厚である。

石井は石井で、伊佐子に弁護士を用意してくれてとせがんで来る。そうしなければ、自分との不倫関係を主人である信弘に暴露すると脅して。

 

伊佐子はかつてのパトロンである塩月から弁護士の佐伯を紹介され、石井の弁護を引き受けさせる。

 

このように書くと、いかにも伊佐子が善意によって弁護士を用意したように見えるが、事実は逆である。伊佐子は石井が余計なことを喋らないように監視するために佐伯弁護士をあてがったのである。

 

 

劇中で伊佐子は3人の男と不義を働いている。石井に塩月に佐伯である。

 

伊佐子は自分に自由にできる金がほとんどないことにうんざりしており、一刻も早く主人の信弘が死ぬことを望んでいる。死期を早めさせるためにワザと高カロリーの肉ばかりを食べさせたりと、身震いするほどの野心家である。

 

自分の言うことを聞かせるために、自分に利益になりそうな男を見つけては身体を許し、相手を篭絡する。なんだこの悪女は、こんな女に利用される男どものなんと不甲斐ないことか。終始やきもきされっぱなしであった。

 

 

本作は犯人探しや動機探しといったミステリーの要素よりも、伊佐子の企みが実現するかを重視したサスペンスの要素が強かった。加えて伊佐子の男性遍歴である。ハラハラというよりも、もうお腹がいっぱいといった様相である。

 

そもそも不倫や浮気を題材にした話が好みではないため、何とも言えない不快感が付き纏っていたが、それは話の出来には関係がないので割愛するとして。

 

 

終盤におけるどんでん返しは、さすがに松本清張の作品である。

妻の不貞に気づいていたのに、おくびにも出さなかった夫。

本当は殺意を持って元彼女を押し倒したのに、まんまと裁判で無罪になった愛人。

そして迎える不貞の結末。最後の20分間は息もつかせぬ展開だった。

 

結局伊佐子は10億円もの借金を背負うことになってしまったが、遺言書を握りつぶす新たな共犯者を得ることで5億円を手に入れた。ただでは転ばない女である。

 

松本清張という作家についての情報をほとんど知らないため的外れのことを言っていたら申し訳ないが、この人がつむぐ物語にはどうしてこんなにも悪女が多いのだろう。

なにか女に恨みでもあるのか。人に媚を売り人を利用し、次から次へと男を乗り換えていくという女性像には、何らかのモデルでもあるのだろうか。

 

 

緊張するという意味ではサスペンス作品として成功していると思われる。

ただ、おもしろい作品ではあっても楽しい作品ではなかったというのは、筆者の好みによるところが多いとは思うが、言わずにはいられない。

 

浮気ダメ、絶対!

人類みなが平穏に暮らすための合言葉にしてはもらえないだろうか。