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悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

松本清張「黒い画集-草-」 テレビ東京開局50周年特別企画

ハードディスク内の整理のため、録画しっぱなしだったドラマを鑑賞いたしました。。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

 この病院には、辛くて死にたくなるような何かがあったってことだ。村上弘明剛力彩芽陣内孝則の共演で松本清張異色の医療サスペンスを半世紀ぶりのドラマ化!

松本清張原作の「黒い画集-草-」は、1960年に発表された中編小説。松本清張の中でも、病院を舞台にした医療サスペンスの傑作と言われています。

薬剤管理室長の不可解な縊死事件?

それに続く院長および看護師長の突然の失踪事件?

さらに事務長の謎の飛び降り自殺?

地域の評判も高い総合病院で次々と起こる怪事件さらに、病院内を“不倫”“三角関係”“医療過誤”“復讐者”といったキーワードが巡る中、先の読めない展開が強烈なサスペンスを生み出します。

キャストも、不審な行動をする謎の入院患者に村上弘明。事件を必死で追う刑事に陣内孝則。そして、村上演じる入院患者の娘に剛力彩芽。豪華俳優陣が演じる会心のエンターテイメントをお楽しみください。

 

 

●感想

2015年3月25日にテレビ東京で放送されたスペシャルドラマ。

原作は毎度おなじみ、松本清張氏による小説「松本清張傑作選 暗闇に嗤うドクター」に収録された「草」。

主役級のキャストは村上弘明氏、陣内孝則氏、剛力彩芽氏らである。

 

村上弘明氏は、個人的には2009年よりTBS系列で年一回ほどの割合で放送されているスペシャルドラマ「警視庁南平班〜七人の刑事〜」の主役というイメージで固まってしまっている。かつて「悪党〜重犯罪捜査班」というドラマでは「おいらはチャンピオン~♪」などの耳にこびりつくような小唄を歌っていたこともあり、何かと印象に残る俳優である。

 

 

物語は、村上弘明氏の扮する沼田一郎が中毒症状によって病院へ緊急搬送されてくるシーンから始まる。冒頭のシーンが沼田を視点として始まっていたため、彼が主人公だと思って話を見始めたはいいものの、どうもそう単純な話ではなかったらしい。治療を終えた彼を見舞う娘・亜衣(剛力彩芽)とのやりとりが終わると、場面がとある工事現場へと切り替わり、視点が桐嶋刑事(陣内孝則)へと移ったのである。

沼田が入院した日、無断欠勤していた病院スタッフの一人が工事現場で首を吊った状態で発見された。警察は事件を自殺として処理しようとしたが、桐嶋刑事だけが他殺の線を疑っている、という展開である。

 

このように本作では、病院内で不穏な動きを見せる沼田と、度重なる病院スタッフの殺人事件を追う桐嶋刑事という二つの視点を交互に見せる形で進行している。その割合が6:4ほどだったため、誰が主役とは明確に言い表すことは難しそうである。

 

もっとも、このような構成になった理由の一つが、沼田の正体をギリギリまで視聴者に明かさない方針だったからではないかと考えられる。

 

沼田は小さな出版社の編集長ということになっていたが、その正体は麻薬取締官だったのである。睡眠薬などの過剰摂取で病院に運ばれてきたというのに、入院後も自ら大量に薬物を摂取したり、薬品庫に侵入しようとしたりと、なにかと怪しげな行動をしていた沼田。それらはすべて、病院内で行われている犯罪の調査のためだったのである。

 

物語の後半に入ると、沼田は桐嶋刑事に正体を明かし、互いに牽制し合う。二人とも公僕とはいえ、麻薬取締官と警察では捜査対象が異なる。病院内での麻薬取引の証拠を掴みたい沼田と、殺人事件の犯人を捜している桐嶋刑事とでは微妙に目的がかみ合わない。二人が協力することは容易ではないのだ。

 

そうして彼らの動きが鈍っている間に事件が進展してしまい、新たな犠牲者が出てしまう。最終的にその人物の死によって犯人が特定されるわけだが、これはどうしようもなかったのかと残念な気持ちにもなる。

 

今回の事件の犯人の恐ろしいところは、物語の大半にわたって真相とは何ら関係ない嘘の噂を病院内に流し続け、麻薬絡みの事件であることを隠蔽していたことである。登場人物たちはもちろん視聴者に対しても、病院がしでかした医療過誤の被害者遺族たちによる復讐だとミスリードしていた。ドラマ後半になって、病院ぐるみで麻薬の横流しをしていたとわかったときの衝撃は計り知れない。登場人物全員を怪しく描いてみせた脚本家・演出家たちの手腕は称賛に値する。

 

 

ただ、この手の話を見聞きするといつも思うのだが、どうして「麻薬」などというものの売買が成り立っているのだろうか。

そんなものに手を出せば心身ともにボロボロになることも、経済的にも社会的にも破滅することもわかりきっているのに、どうして麻薬なんぞに手を出す愚か者があとを絶たないのだろう。想像力がないのか、合理性に欠けているのか、それとも人の話を聞くこともままならないホームラン級のバカなのか。いずれにしても、自分から麻薬に手を出すような人間とは係わり合いたくないものである。

 

今回の事件では、犯人によって麻薬中毒にさせられた娘を庇うために、犯人に協力させられていた人物がいたが、その人物の行動も謎である。何者かの悪意によって無理やり麻薬中毒にさせられたのなら、その人のためにも一刻も早く矯正施設に入れるべきだったのだ。犯人は当然、極刑に処すとしても。

 

 

構成上の特殊さも相まって、かなり上質なミステリー作品に仕上がっていたと思われる。