悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

臨床犯罪学者 火村英生の推理 第2話

相変わらず周回遅れですが、録画したものを鑑賞いたしましたので記録に残したいと思います。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

第2話は、執筆をするため旅館に泊まっていた有栖川が全身包帯づくしの怪しい人物を見かけるも、その人物が宿泊していた部屋から死体が発見されたという展開だった。

 

包帯でグルグル巻きにされた顔を見ると、多少なりともミステリー作品に触れたことのある人ならば真っ先に「犬神家の一族」のスケキヨを連想するのではないだろうか。(スケキヨは包帯ではなく、真っ白い覆面だったが)

 

このような人物が登場するということは、ほぼ間違いなく人物入れ替えトリックが使われると予想がつく。いろいろと例はあるが、すぐに思い出せるのは「金田一少年の事件簿」の「雪霊伝説殺人事件」だろうか。

 

案の定、トリック自体は予想した通りのものであり、特に目新しいことはなかった。

 

 

ただ、今回の事件における犯人の犯行動機については軽く触れたいと思う。

 

犯人は過去に、衝動的に人を殺した。通りすがりのサラリーマンをいきなりナイフで刺し殺したのである。その犯行現場を今回の被害者に見られてしまったため、犯人は1年にわたって脅迫を受け続けた。

 

犯人の家庭は非常に裕福だったため、金銭を要求されても大した損害はなかった。とはいえ、被害者の脅迫は段々とエスカレートし、金額も大きくなっていった。そこで犯人は、被害者の殺害を決意するのである。

 

普通、脅迫されている人間が考える殺人の動機は、「脅迫から逃れること」「脅迫の原因となっている情報を永遠に隠し通すこと」などであることが多い。

しかし今回の犯人においてはそうではなかった。自分の罪が暴露されれば逮捕されてしまうかもしれないという危惧はあったろうが、それについては二の次だったのだ。一番の動機は、「被害者に支配されていることが我慢できなかった」からだそうだ。

 

なまじっか金持ちの家に生まれたせいか、幼いころから人を下に見る習性が身についていたのだろう。それが行き過ぎて、ついには通り魔殺人などという凶行にまで走ってしまった。だが、赤の他人を殺そうが自分より格下の人間ならば、いくら命を刈り取っても罪の意識はないらしい。そのような人物が、自分よりも明らかに格下と思しき他人に自分の行動を制限されるということは、かつて味わったことのない屈辱と怒りをもたらしたのかもしれない。

 

高すぎるプライドは身を滅ぼす、ということなのだろう。

当方、傲慢な人間は嫌いなため、高慢ちきな輩は滑り台から転がり落ちるような勢いで破滅することを願って病まない性分である。どんどんプライドを高めて、どんどん身を滅ぼしていっていただきたい。

 

ただ、この犯人も一つだけ的を射た発言をしていた。確か、こんな趣旨の言葉である。

 

「(通りを眺めて)善人面した悪人たちが平気な顔で歩いてる」

「悪人一人捕まえたくらいで、世界は何も変わらないぞ。正義の味方は大変だなぁっ!」

 

一寸先が闇であるように、人は一人ずつ何らかの悪を抱えて生きている。その悪がある一線を越えた人間が犯罪者になるわけだが、誰がそうかなんてわかりっこない。あらかじめ、他人を傷つけることに悦びを覚えたり何の感傷も覚えないような人間がわかっていれば、人生はより安らかなものになるというのに。

 

 

それにしても、周りの人間の有栖川に対する扱いがぞんざいなのはこれから先の話でも同じなのだろうか。確かにちょっと抜けたところのある関西系のにーちゃんだが、あそこまで邪険にされるような人ではないように思えるのだが。