悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

青鬼

かねてから知人より勧められていたため、「ハンニバル」を見るまでの繋ぎとして鑑賞いたしました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

転校生のシュン(須賀健太)はクラスに溶け込むことができずにいたが、ある日、化け物が出ると評判のジェイルハウスの前で同級生と会い、その不思議な洋館に入ってしまう。窓からのぞき込む不気味な目玉など異様な光景に恐怖を感じた彼女らは玄関から外に出ようとするものの、扉は開かない。そして、巨大な青い影が彼女たちに迫っており……。

 

青鬼 - 作品 - Yahoo!映画

 

 

 

●感想

2014年に公開された映画。ホラー作品のためか、PG-12指定されていた。

主演はAKB48入山杏奈氏。

原作は「RPGツクール」で作成されたフリーゲームや、それから派生した作成群である。

 

RPGツクール」+「ホラー」というキーワードなら、自分の中では「囚人へのペル・エム・フル」「コープスパーティ」「Gu-L」の3つが連想される。ただしいずれも1990年代から2000年前後にかけての作品であり、2016年現在に学生の身分である人々には馴染みがないかもしれない。

(もっとも、「コープスパーティ」に関してだけは現在に至るまで、漫画化やゲーム化などのメディアミックスがされているが)

 

上記のいずれも、当時の技術力ではリアルで精彩な画面づくりが難しかったため、一見するとちゃちな作品であるかのように思える。実際、キャラクターやダンジョンなどはドラゴンクエストなどでおなじみのドット絵&2D画面だ。それでもこれらのゲームは、筆舌しがたい恐怖感をプレイヤーたちに与えてきた。一体なぜか。

 

その理由は、「シチュエーションの怖さ」を巧みに表現していたからである。

 

たとえば「囚人へのペル・エム・フル」は、悪意ある考古学教授の手によってピラミッドの地下遺跡を探索する羽目になってしまった主人公が、非日常の異世界をさ迷い歩く心細さを見事に表現していた。それは安易なグロ画像によってではなく、BGMの使い方や、ときおり差し挟まれる主人公の独白などにより、平常心という名の外堀を恐怖と混乱で埋め尽くすような方法であった。

 

 

今回の議題となっている「青鬼」も、もとはRPGツクールの作品だということだが、残念ながら筆者は未プレイである。そのため、こちらについては多くを語るべきではないだろう。(映画版のストーリーは原作をいじっている点があるらしいが、比較できないためそちらも触れない)

 

上記で述べたように、秀逸なホラー作品は視覚情報だけに頼らずに、ストーリー運びによって「非常識」と「常識」をすり替えて、視聴者に恐怖心を蓄積させていくような描写をしていると個人的には考えている。本作について言うなら、その点はギリギリ及第点と言っていいだろう。

話自体はとてもシンプルだ。古い洋館に入っていったはいいも、どういうわけか外に出られなくなってしまう。脱出の手段を考えるうちに、仲間(?)が次々に未知の怪物の犠牲になっていく。監禁→何物かの襲撃→死の恐怖という、とてもスタンダードな構成である。

 

ただ、劇中では青鬼の正体については何も触れてくれないため、ホラーというよりもモンスターものの映画に近い気がしないでもない。青鬼の気色悪いビジュアルによって無理矢理観客の恐怖を引き出そうとする意図がなかったとは言えないとも思う。

 

しかし、登場人物の一人がすでに死んでいたというどんでん返しの展開は、素直に驚かされた。そうなると、今作における怪現象はその死んだ人物の無念が引き起こしたと見ていいのだろうか。そのあたりの謎が丸投げされているのは少々残念ではあるが。

 

 

AKBの入山杏奈氏が主演とはいうものの、どちらかというと本作のキーパーソンである須賀健太氏の方が目立っていた。演技面についての不満は特にない。良くも悪くも、基本だけはおさえてあった。

 

 

本作は70分と非常に短い作品のため、サクッと見るにはちょうどいい。過度な期待をしないで見れば、それなりに楽しめるだろう。

もう一度見たいか、続編を見たいかと言われると、正直NOではあるけれど。