悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

銭の捜査官 西カネ子

たまたま番組表を眺めていたら、何となく気になる文字列が目に入ったため、鑑賞することにした次第です。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

経済犯罪を扱う警視庁捜査二課の中でも主に企業犯罪を担当する第三知能犯捜査係に配属された西加音子(真矢ミキ)は、経理から異動してきた金にうるさい超節約主婦。現場で捜査を担当するのは28年ぶりという“新人”加音子は、正義感と元気だけは人一倍だ。「数字を追う腕はなかなか」という二課長(田中健)の引っ張りでやって来た加音子だが、全くの素人とあって同僚たちは頭を抱える。そんな加音子と陣内孝則演じる銀行支店長・堂島が真っ向からぶつかり合う! 真矢ミキが新境地にチャレンジする注目の新シリーズだ。

 

 

●感想

2016年2月15日にTBSで放送されたスペシャルドラマ。ホームページに記載された紹介文によると、今後の展開を視野に入れた新しいドラマのシリーズになるとのこと。

主演は真矢ミキ氏。

原作は萩生田勝氏の小説、「警視庁捜査二課」。

 

物語は、28年間ものあいだ経理を担当していた刑事・西加音子が警視庁捜査二課に異動になったことから始まる。

それまで現場経験がまったくないという彼女は、本人すらも予想していなかった異例の抜擢に驚きながらも、日常に潜む経済犯罪の解決へと勤しんでいく。

 

50歳ではじめて捜査に臨むという、ベテランなのに初心者というちぐはぐな立場に置かれた西刑事。元が経理畑の出身なうえ、趣味は節約と言ってしまえるほどの倹約家な彼女は、とにかく勘定が素早い。そのせいか、金絡みの事件を敏感に察知することができた。ただし捜査については素人もいいところのため、被疑者に顔バレしてしまったり、重要な証人を守れなかったりと、バツがつくことも多かった。確かに、新しいタイプの刑事である。

 

大半の刑事ドラマが殺人事件を追う捜査一課を扱うのに対し、本作では経済犯罪専門の捜査二課に焦点を当てているという点も物珍しかった。ちなみに今回扱われた事件は、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺や、ショッピングモール建設を巡る地上げと収賄である。また、収賄事件に関連して殺人事件も発生したが、こちらについてはサブ要素として大きくは取り上げられなかった。事件自体も何らかのトリックが用いられたりすることもなかったうえ、殺人犯のその後についてはエンディングテロップが流れるころに口答で逮捕されたとさらっと説明するに留められた。

 

それにしても、ミステリーの世界では地域の開発計画がもちあがると、必ずと言っていいほど裏で政治家が糸を引いている。政治家が不動産会社やら建設会社やらに手を回して、開発計画に乗じて荒稼ぎしようとする展開が非常に多い。これは、現実の世界でもこのように汚いやり取りが行われているから、作家や脚本家の方々が題材にしたがるということなのか。なんにせよ胸糞悪い話である。

 

陰謀の犠牲となったラーメン屋の主人は警戒心が足りなかったため、死に追いやられたと感じた。巧妙に仕組まれた罠は気づきにくいかもしれないが、元手がないのに大博打を打とうとするのは賢いとは言えない。騙すほうが120%悪いのだが、欲を出さないで冷静に誘いの手を断って欲しかった。

 

 

「銀幕スター」「DIY」などの単語すら知らない若手刑事やら、遺体を直視できない天然失礼な女キャリア、無駄に傲慢な女検察官など、アクの強い登場人物が多かった本作。それでも極め付けなのが、主人公である西加音子であろう。役どころがどこにでもいそうな普通のオバサンなのに、演じている役者さんが真矢ミキ氏だから、言動のギャップが凄すぎて戸惑った。見目麗しい美女がオバサンの振る舞いをすると、こんなにも違和感があるとは。それはそれで楽しいけれど。

 

今後、このシリーズに展開があるのなら、次回作も見てみたいと思う。