悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

乱歩奇譚 Game of Laplace 第8話

ハードディスクに保存してあるアニメを絶賛崩し中です。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

第8話はパノラマ島綺譚(後編)。

 

とはいうものの、パノラマ島で起きた事件の解明は話の前半で終わらせてしまい、後半はアケチの来歴についての話となっていた。

 

 

今回の犯人もカガミ同様、同情に値する動機を持っていた。

パノラマ島に展示されたすべてのマネキンが、その犯人をモデルとして作られたものであり、そのモデルになるまでの経緯があまりにひどすぎたからだ。

金にものを言わせるような金持ちしかいないのなら、こんな世界滅んでしまえばいいと叫び出したくなるような凶行である。

 

正直、犯人が二十面相を名乗ってアケチに挑戦状など送りさえしなければ、あわよくば単なる崩落事故として片付けられていた可能性だってあったというのに。それほど犯人は自分が何故罪を犯したのかということを知ってもらいたかったということなのか。

 

 

話の後半では、アケチが中学時代の回想シーンが展開された。

 

アケチは当時から天才的な頭脳を持っていたが故に、周囲から孤立していた。しかしアケチは、彼と同レベルの知能を持つ同級生・ナミコシと出会う。

 

ナミコシは数学の天才だった。彼は数式を用いて、「すべてを見通す全知の法則」を完成させようとしていた。それは、すべての未来は確定しているという有名な仮説「ラプラスの悪魔」を参考にしたものだった。それを知らされたアケチの指摘により、ナミコシはこの法則に名前をつけた。

 

「暗黒星」という名前を。

 

この「暗黒星」というものも、乱歩作品のタイトルの一つである。2004年の実写ドラマ「乱歩R」においても扱われた作品の一つだった。たしかあの時は、仲間由紀恵氏をゲストとして迎えた1話完結の物語で、富豪の家に実子としてもぐりこまされた娘が、娘の実父の言いつけを守って富豪の一族を皆殺しにしようとする復讐劇だった気がする。

 

ナミコシは「暗黒星」という理論法則を用いて、ネットの世界で果てしない演算をはじめた。その結果として導き出されたのが、悪を断罪するという社会現象「怪人二十面相」の構想だったのである。

 

つまるところ、「怪人二十面相」を生み出したのはナミコシだったということになる。

 

アケチはこの危険な結論には欠陥があるとしてナミコシに制止を促した。しかしナミコシは聞く耳を持たず、「二十面相」の思想を世に解き放ってしまった。

 

その方法としてナミコシが選んだのが、ドクロの仮面を被って新宿で焼身自殺するというものだった。

 

ナミコシの行動を止められなかったアケチは、それから派生的に現れた新たな二十面相を次から次へと捕まえていった。彼が「宮内庁公認・特定未成年」などという訳のわからない超法規的な身分をあてがわれたのは、その実績が買われてのことだったのだという。

 

 

物語が終盤になって、ようやくアケチの素顔が見えた気がした。彼は確かに事件にしか興味がないのかもしれないが、その実かなり理性的な一面があった。彼の他人に対する無関心は、どうせ自分のことを理解できる人間などいないという諦めがもたらしたポーズなのかもしれない。

 

恐るべきことに、このアニメは残り3話で完結してしまう。

おどろおどろしい雰囲気で見る者を飽きさせなかったが、あと3話でどうやって風呂敷を畳むつもりなのかが心配になってきた今日この頃。

 

はてさて、次の話はいつ見ることになるのやら。