悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

臨床犯罪学者 火村英生の推理 第9話

何週間ぶりに9・10話を立て続けに鑑賞いたしました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

 第9話は、シャングリラ十字軍の諸星たちによって拉致された有栖川。諸星は、有栖川を亡き者とすることによって火村の秘められた犯罪衝動を開花させようと目論んでいるという。有栖川が処刑されようというそのとき、彼が連れられた地下室を用意した男が裏切り者として処罰されることになった。男はシャングリラに従うか死ぬかの二択を迫られ、止む無くシャングリラの軍門に下ることに。しかしその直後、男は毒を盛られて死んでしまい……などの展開だった。

 

 

有栖川が大ピンチに陥っているとき、火村は前回の話で逮捕された高校生・坂亦の取調べに加わっていた。

 

ここで火村のポリシーの一端が垣間見れた。彼はなぜ犯罪に無尽の興味を抱きながら、決して罪を犯すという一線を越さないのか。それは、一線を越えそうになっていた昔の自分を心底軽蔑しているからだった。故に彼は、「美しい犯罪」などというものがありもしない幻想だということをかつての自分やすべての犯罪者たちに証明しつづけるため、臨床犯罪学者の道を選んだのだという。

 

火村が一線を踏み越えないきっかけは、間違いなく大学時代に知り合った有栖川の存在が大きいのだろうが、その点についてはあまり語ってくれなかった。それでも、火村が警察に協力して推理を披露するのが、罪を犯せないことに対する欲求不満からきているのではないとわかってほっとした。

 

さて、有栖川サイドへと視点は移る。

 

今回の事件はある一室で起こった毒殺事件という、論理クイズのような小規模のミステリーだった。おそらく、原作も短編なのではないだろうか。昔読んだ「2分間ミステリ」(ハヤカワ・ミステリ文庫)を見ているような気分になった。

 

まあ、論理も何も毒を購入していた人間がストレートに犯人だったわけだから、火村が推理をしなくてもいずれは犯人は特定できていただろう。この事件についてはそれ以外に言うことは特にない。

 

 

それにしても、諸星という女の気味悪さは尋常ではない。

 

シャングリラ十字軍は何かからの「革命」を目指している思想集団らしいが、実質的には諸星を教祖とするカルト宗教団体と変わらない。諸星の言うことを盲目的に実行する過激な構成員たち。中には爆弾テロ犯として全国指名手配されている者もいるというのだから、もはやただの犯罪結社ではないかと思えるのだが。

 

とかく特定の思想を持った人間が寄り集まると、他集団を排斥して自分の殻に閉じこもり、言動が過激化していく傾向がある。世界最大派閥の宗教であるキリスト教が布教と同時に異教徒の弾圧を行ってきたことは余りにも有名な話だ。正直、互助会の域を超えた集団はすべて犯罪結社認定していいと思うのだが。結社がもたらすものは、幸福よりも不幸のほうが多い気がするのは気のせいか。

 

 

なんやかんやあって有栖川は無事に救出され、諸星は再び逃走を図った。

 

しかし後日、諸星から火村宛に脅迫文が送りつけられる。そこで今回の話は幕となった。

 

引き続き、10話の感想を記したいと思う。