悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

エイプリルフールズ

先日テレビ放送されていたものを録画して視聴いたしました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

大ヒットとなったテレビドラマ「リーガルハイ」シリーズの製作陣と豪華キャスト陣が集結した群像コメディー。うそをつくことが冗談で済まされるエイプリルフールを舞台に、人々が軽い気持ちで放った小さなうそが大きな騒動を引き起こしていく。監督と脚本は「リーガルハイ」などの石川淳一古沢良太戸田恵梨香松坂桃李岡田将生小池栄子古田新太里見浩太朗らが出演。個性的なキャラクターにふんした彼らの怪演に加え、二転三転する先読み不可能な展開にも引き込まれる。

 

人に対して恐怖心を抱いてしまう清掃員のあゆみ(戸田恵梨香)は、一晩だけ関係を結んだ外科医の亘(松坂桃李)に対して、身ごもっていると打ち明ける。ところが亘は、エイプリルフールだからとあゆみの言葉に耳を貸さなかった。居ても立ってもいられなくなったあゆみは、亘がいるイタリアンレストランに向かう。一方の亘は、きれいなキャビンアテンダントの麗子(菜々緒)とランチを楽しんでいて……。

  

エイプリルフールズ - 作品 - Yahoo!映画

 

 

 


●感想

2015年4月1日に公開された日本の映画。

「4月1日に嘘をついてもよい」とされる風習をもとにした群像劇である。

 

群像劇ではあるものの、主演は戸田恵梨香氏ということになっている。

 

誰もが知っているような有名な俳優陣27名による、「嘘」をテーマにしたコメディ作品だった。映画オリジナルの作品であり、脚本担当がドラマ「リーガル・ハイ」を手がけた古沢良太氏によるものということで、本作も相当にぶっとんだ喜劇となっていた。

 

 

映画の冒頭は、主演とされている戸田恵梨香氏扮する「あゆみ」の視点から始まる。

 

対人恐怖症を患う「あゆみ」は松坂桃李氏扮する「亘」という下衆野郎の子どもを妊娠してしまった。あゆみは彼に結婚を迫るも、それが4月1日の出来事だったせいで取り合ってもらえなかった。亘の態度に激怒したあゆみは彼が食事しているレストランを襲撃し、リュックサックから拳銃を取り出して十数人の客を人質に立てこもってしまう。

 

彼女がどうして拳銃を持っていたのかはこの時点では明らかにされない。あゆみの持つ銃がモデルガンだとタカをくくっていた亘ほかの客たちも、銃が本物であることを知ると大混乱。レストランの内装がぐっちゃぐちゃになるほどの惨状となってしまった。

 

映画は「あゆみ」が立てこもったレストランのシーンと同じぐらいの比率で、この事件に少しずつ関わりがある別の登場人物たちの物語が平行して語られていく。

 

寺島進氏の扮するヤクザによる女学生の誘拐事件や、富司純子氏や里見浩太朗氏の扮する旧華族と思しき夫婦の旅程、いじめが原因で引き篭もってしまった中学生や、仲の良い大学生の友達、陰気な刑事や占い師などなど、全部を語ろうとすると映画のネタバレをすべて言い尽くしてしまいそうで困ってしまう。

 

映画の主軸は「妊娠したと嘘をついて亘に結婚を迫っているあゆみ」の物語なわけだが、当然このエピソードも幾重にも伏線が張られて二転三転する。「そこだけは本当だったのかよっ!」と騙された気になるところも小気味よいアクセントになっていた。

 

個人的には、滝藤賢一氏の扮するタクシー運転手やハンバーガー店の二人(古田新太氏、木南晴夏氏)が、ロイヤルな夫婦に粗相をしでかして大慌てするシーンが最高におもしろくて抱腹絶倒ものだった。全体を通して笑いの絶えない映画だが、ここだけは別格におもしろかった。

 

また、単純な喜劇では終わらず、涙を誘うような重い話も上手い具合に織り交ぜてきており、映画を見ている間まったく飽きが来なかった。

 

惜しむらくは、すべての登場人物の話が「あゆみ」のエピソードにゆるく繋がっているだけという点だろうか。この人とこの人が知り合いだったのかーなどという驚きはあるものの、複数のドラマを2時間という枠のなかで順不同に放送したいう風にも捉らえられてしまう。これがもし、登場人物全員がひとつの事件に繋がっていたという展開になったら文句なしにスタンディングオベーションしていたかもしれない。

 

まあなんにせよ、気軽に見れる大衆娯楽作品の一角である。これを見てつまらないと言ってしまう人は、おそらくドラマ自体に興味がない人なのではないだろうか。それくらい作品としての出来は良いと感じた。