悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

ソタイ 組織犯罪対策課

再放送されていたものを録画いたしました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

 六本木署の組織犯罪対策課“ソタイ”の強面警部補・二本松進(遠藤憲一)は廃ビルで死体を発見。殺されたのは架空請求などの犯罪を繰り返す“半グレ”の中田良一(勝也)だった。別件で逮捕した中国マフィアの劉周徳を半ば強引に吐かせ、半グレとの関係を探る二本松。そんな中、異動してきた比屋根真里(とよた真帆)と捜査を進めるうち、とあるNPO法人に辿りつく…。銃撃戦に乱闘!何でもアリの危険な男が命を張って捜査に挑む!!

 

 

 

 

 

●感想

2014年11月12日にテレビ東京にて放送されたスペシャルドラマ。

好評だったのか、来る4月13日にこのドラマの続編を放送することが決まり、4月10日に再放送していたものを録画した。1年半ごしの続編とは恐れ入る。

 

主演は遠藤憲一氏。

つい先日「お義父さんと呼ばせて」で演じていた朗らかなサラリーマンとはうって変わってハードボイルドな刑事役である。ヤクザと言われても納得してしまうほどの強面の氏が警察の中でもヤクザと見分けが付かない「組織犯罪対策課」の刑事として出演すると聞き、これはもう見ざるを得ないと思った。

 

なお、本作はドラマ書き下ろしの脚本の模様。期待に胸を膨らませて見る次第。

 

遠藤憲一氏の扮する主人公・二本松進は六本木署の組織犯罪対策課、通称「ソタイ」に所属する警部補である。

 

「組織犯罪対策課」というと、元は捜査4課(通称「マル暴」)と呼ばれる暴力団関連の事件捜査を行っていた部署が独立してできた課である。二本松の仕事は、六本木で蔓延る半グレや在日外国人などによる組織的な犯罪を捜査し、組織を壊滅させることである。

 

そのための情報集めとして、二本松は六本木の至るところにスパイ(通称「エス」)を囲っている。中国人の女性シンガーだったり、黒人の客引きだったり、クラブのボーイだったり、いろいろである。多くは微罪を見逃したり、見返りとして金銭を手渡したりして情報を集めさせるらしい。法律的にはかなりブラックな捜査手法ではあるものの、違法な手段に訴え出る犯罪者たちに対処するためにはキレイごとばかりではいられない。ある意味、必要悪と言えるだろう。

 

今回の事件は、二本松が夜の六本木をパトロールしているときに、情報提供者の一人である中国人女性・麗麗淡に廃ビルへ案内されるところから始まる。

麗淡は麻薬の取引のためにそのビルに通っていたらしいのだが、そこで異様な死体を見つけてしまい、二本松に助けを求めたのである。

 

廃ビルに放置されていた死体は、全身がガムテープでぐるぐる巻きにされており、まるでミイラのような有様になっていた。二本松がガムテープを切り裂いて被害者の顔を確認したところ、死んでいたのはオレオレ詐欺などを始めとする「特殊詐欺」を行っていた半グレの青年だった。

 

麗淡の代わりに遺体の第一発見者として名乗りをあげた二本松は、捜査一課との合同捜査に参加させられる羽目になってしまう。

 

時を同じくして、二本松の所属する「ソタイ」に新しい職員が生活安全課から異動してきた。名を比屋根真里(とよた真帆)と言い、酒に酔った勢いで同僚4人の手足を折ったという逸話をもつ妙齢の女性刑事だった。

 

年下の専業主夫に家事を任せて最前線に出る比屋根に対して、二本松は反感を覚える。「女は家に」などというといかにも古臭い価値観だが、こと警察という荒事を職務としていることを考えると二本松の考え方もそこまで的外れとも思えない。もっとも、比屋根が携帯電話で学校関連の話をしているところを聞きつけて以来、彼女のことを「PTA」と呼ぶセンスはどうかとは思うが。

 

二本松と比屋根は捜査一課による会議に出席し、捜査方針を聞く。

被害者の死に様は、裏切り者を見せしめとして殺す際に中国人組織がやるやり方に酷似していた。そこで捜査一課の面々は六本木を根城にしている中国人に捜査の手を伸ばすのだが、二本松は懐疑的だった。そこで彼は捜査一課とはまったく別の捜査をはじめるのだが……などが主な展開だった。

 

 

劇中、二本松と彼の上司・作田豊松(平泉成)とのやり取りが印象深い。

捜査一課は殺人犯を逮捕すればそこで捜査は終わりだが、ソタイは違う。事件の犯人に目星がついてもすぐには逮捕せずに泳がせる。なぜかと言うと、ソタイの使命は実行犯一人を逮捕することではなく、実行犯が所属する組織全体を壊滅させることだからである。

 

だから、捜査一課とソタイが協力関係を敷いたとしても、最終目的が違うためにいがみ合うことになる。殺人の実行犯を逮捕するために捜査一課が強引な手を使ってしまえば、背後にいる黒幕たちが雲隠れしてしまうかもしれないからだ。

 

そこで二本松と比屋根は捜査一課に対して捜査で得た情報をすべては渡さずに、時には嘘をついて捜査一課の行動を制限した。同じ組織にいながら互いに足を引っ張り合わなければならない状況を考えると悲しくなってくるが、やはりこれも必要悪ということなのか。

 

物語のオチとしては、外国人労働者の研修制度を悪用していた中国人によるNPO団体の犯罪だったということだが、これもなんだか切ない話である。

同種の話で思い出せる直近のドラマは2013年に日本テレビで放送されていた「ダンダリン 労働基準監督官」の中の1エピソードだろうか。海外から希望を持ってやってきた若者たちを格安の労働力としてしか見なさない人間が、ブラックどころか暗黒な労働環境で研修生たちを酷使するという話がここにもあった。たしかあのドラマでは、時給200円くらいで夜も寝させずに働かせていたのではなかったか。

 

今回のドラマにおいても中国から来た研修生たちに対して非道な扱いが横行していた。ろくに日本語も読めないような人々に自身に不利になる契約書を書かせたり、1日中働かせたり、脱走した人を殺してしまったりと、散々である。

 

このNPO団体のトップは天下りした官僚なのだが、彼は給料だけ受け取ってろくに仕事をしていない置物でしかなかった。実権を握っていたのは研修生たちと同じ中国人の女性だった。同じ国の人間が海を渡ってまでこのような非道を行うとは、世も末である。

 

一度は捜査一課に煮え湯を飲まされた二本松たちだったが、NPO団体の職員たちを逮捕することに成功する。実質的トップの中国人女性が逮捕状を突きつけられているにもかかわらず訳のわからない言い訳をして罪から逃れようとしていたところは非常に既視感があった。偏見MAXで申し開きもできないが、とかく中国人やら韓国人やら大陸に住まう外人の多くが自分の非を絶対に認めないという言動をすることはありふれているように思えてならない。その特徴を本作は上手い具合に表現していたのではないだろうか。やはり偏見がすごすぎるきらいがないでもないが。

 

しかし、NPO団体を壊滅させた二本松たちだったが、そのNPO団体を裏で操っていた元半グレの青年を逮捕することはできなかった。二本松たちが彼の会社にたずねたとき、彼は既に拳銃で自殺していたからである。といっても、ほぼ確実にその青年の裏にいた組織によって消されたのだろうが。

 

このドラマはここで幕を降ろしてしまった。二本松によるハードな捜査が実に趣き深いドラマだったものの、なんとも後味の悪い結末となってしまった。もしや、この続きを2ではやる予定なのだろうか。

 

いろいろと期待しつつ、次回を待つとしよう。