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悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

グッドパートナー 無敵の弁護士 第1話

ドラマ 邦画

今期二本目の「弁護士もの」の存在をすっかり忘れていました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

竹野内 豊、10年ぶりにテレ朝連ドラ主演!
ライバル弁護士はワケあり元夫婦!?
竹野内 豊vs松雪泰子
スタイリッシュな法務&ホームドラマ、誕生…!

  

 企業法務を専門とし、日々企業から持ち込まれる案件に法律を駆使して立ち向かっていく弁護士軍団“ビジネスロイヤー”――これまでにドラマや映画で描かれてきた“弁護士”といえば、多くが刑事事件を扱ったいわゆる“法廷モノ”や、詐欺や離婚などといった民事事件を扱うモノでした。
  そんな“弁護士ドラマ界”に新風到来…! 企業法務を専門に扱う弁護士事務所を舞台に、スマートでブリリアントな弁護士たちが理不尽な悪に立ち向かい、ラストにはスカッと爽快な気分にさせてくれます!

 

  ロー・ファーム『神宮寺法律事務所』のパートナー弁護士――しかも元夫婦である男女を竹野内 豊と松雪泰子が演じます。連続ドラマでは初めての共演、そして初めての夫婦役(元、ですが)に挑むふたり。弁護士としてライバル同士でもあるふたりは、依頼案件に関して理路整然と法律論を戦わせることもしばしば…。しかしひとたび話が脱線してしまうと、冷静さを失い、途端にお互いのことを「パパ」「ママ」と呼び合って、痴話ゲンカのような争いを始めてしまいます。


  渋いルックスの中にもチャーミングさを兼ね備えた竹野内演じる咲坂健人と、強くハンサムな女性弁護士でありながら、時折、妻らしさ、母親らしさを見せてしまう松雪演じる夏目佳恵。企業弁護というビジネスドラマの中に、ふたりが垣間見せるコミカルな家族感に、是非ご注目ください!

 

  杉本哲太賀来賢人、山崎育三郎、馬場園梓(アジアン)、大倉孝二、そして國村隼といった個性的かつ実力派の最強共演陣を迎え、名匠・福田靖氏が手掛ける完全オリジナル脚本によってニュータイプの“法務&ホーム”ドラマが誕生します。
  ときに笑って泣けて、ラストにはスカッと爽快な気分でドラマを見終えられる――今作は弁護士ドラマの決定打となること、間違いなし! 新たなヒーローの誕生をお見逃しなく…!

 

 

 

 

●感想

2016年4月21日から放送開始した日本のテレビドラマ。

 

主演は竹野内豊氏。

古くは「冷静と情熱の間」から始まり、「人間の証明」ではクールな刑事を、「BOSS」や「素敵な選TAXI」ではお調子者を演じるなど、温度差の振れ幅が広すぎる名優の一人である。昔から氏を見ると、その佇まいからブラッド・ピットと重なって見えてしまうのは自分だけかもしれないが。

 

さて、TBSにおける「99.9」に引き続き2本目の「弁護士もの」のドラマである。ただしこちらは刑事事件を扱うのではなく、企業法務専門の事務所に持ち込まれた民事事件を扱うといった違いがある。

 

竹野内豊氏の扮する主人公・咲坂健人は、神宮寺法律事務所に所属する凄腕のパートナー弁護士。会社の顧問弁護士などを勤めることによって生計を立てるビジネスロイヤーである。

 

そんな彼の元に、ひとりの新人弁護士がアソシエイト(≒アシスタント)としてやってくる。それが、賀来賢人氏の扮する熱海優作である。

(氏のことは2014年に放送されたドラマ「Nのために」が初見だと思われる。それ以来、あまり見かける機会に恵まれなかったが、ここに来てまた弁護士役とは……)

 

場の空気を読めずに素っ頓狂で「ゆとり」な振る舞いをしでかす熱海だが、それ以上に自分本位なのが咲坂である。これから二人がよきコンビになっていくのかというと、それがこのドラマの本筋ではないらしい。

 

咲坂は12年連れ添った末に別れた元妻がいた。名を夏目佳恵(松雪泰子)と言い、彼女もまた神宮法律事務所で働くパートナー弁護士の一人だった。別れた夫婦が同じ事務所で働き続けているというとなんとも奇妙に見えるが、取引先で手一杯の中小規模な弁護士事務所だとそういうこともあるのだろうか。本作のタイトルともなっているグッドパートナーとは、業務成績でライバル関係にあるこの元夫婦のことを指しているのだと思われる。

 

さて今回の話の感想に移りたいと思う。

 

咲坂は神宮司所長(國村 隼)経由でとある小さなデザイナー会社からの相談を受ける。女社長によると、ある国内有数の広告代理店からキャラクターの無断使用による著作権侵害で1億円もの賠償金を請求されているのだという。

 

ことの経緯はこうだ。デザイナー会社は、広告代理店からマスコットキャラクターのデザインを依頼された。依頼の内容は広告代理店にだけ有利な内容で、請負額20万円で著作権の一切を引き渡すというものだった。しかし、女社長たちが広告代理店の無理難題を聞き入れてキャラデザインを完成させたにもかかわらず、一方的にデザインは却下されてしまう。会議が終わったあと、デザインがをゴミ箱に投げ捨てる無配慮っぷりである。

 

そのあと女社長のもとに、地方の小さな村で開かれるお祭りのイメージキャラクターのデザインの仕事が舞い込んだ。偶然にもその依頼内容が、先日広告代理店に却下されたデザインのイメージとあっていたため、女社長はそのデザインを流用してしまったのである。

 

必死に完成させたキャラがゴミ箱に捨てられ、日の目を浴びないことが悔しかったのだろう。その気持ちはわかるが、注文書には「著作権の一切を広告代理店に譲渡する」と明記されていた。完成したデザインを広告代理店に引き渡した時点でデザインの著作権は広告代理店が握っており、それを生かすも殺すも広告代理店の自由なのである。彼らに無断でデザインを使ってしまったら、著作権侵害で訴えられても文句は言えない。

 

……というのは法律上の建前である。だからと言って、女社長を含めてたった3人だけで回している小さな会社に対して、逸失利益を換算したうえで1億円もの賠償金を請求するなんて、『夢の国の黒鼠』を擁する某海外企業も裸足で逃げ出す著作権ヤクザっぷりである。まあ、どうせ本邦最大手の広告代理店である某電通も似たようなことをやっているのだろうから、黒鼠だけが悪者なわけではないのだろうけど。

 

この著作権という法律だが、本当の本当に厄介な代物である。文章を書くうえでの引用規定しかり、二次創作における許可しかり、そんな細かいところまで規定して誰を守るための法律なのかと叫び出したくなる衝動に駆られる。音楽業界では「カス」と呼ばれて久しい某JASRACなんかが、ある歌手が自分で作った歌を自分の店のBGMに流したといってその歌手に使用料を請求したなんていう都市伝説まである。

 

「創作物の権利を守る」というお題目は立派である。中国やらネットやらで粗悪な海賊版が出回ることを考えたら、法律的な自衛手段が必要だと言うのもわかる。しかし、それはあくまでそのものを作った製作者自身が守られれば済む話であって、その周辺にいる人間たちが金や権力にものを言わせて更なる利益を荒稼ぎするための方策になってはならないはず。いまや著作権という言葉を聞くと、「ああ、またどっかの大手企業が立場の弱いクリエイターたちから金を巻き上げようとしてるんだろーな……」という薄ら寒い気持ちにしかならない。大企業に勤める法務部やら弁護士やら弁理士の皆々様方には大変申し訳ないが、あなた方の職務は本当に誇りあるものだと胸を張って言えるのかと問いたい。単なるパテントトロール著作権ヤクザに成り下がってはいないかと言ってやりたい。

 

さてこんな愚痴はどうでもいい。ドラマの話である。

 

咲坂は依頼を受けた段階で、正攻法で闘っても勝てないことを理解していた。何せ注文書(≒契約書)には著作権が広告代理店のものであると明記されているからだ。しかも、同種の事件で裁判になった場合、訴えられた側が勝てた例は1件もないというから最悪である。

 

そこで咲坂はある奇策に打って出た。いわゆる、「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」というやつである。

 

広告代理店の顧問弁護士を勤めるのは、外資系の巨大な弁護士事務所だった。しかも今回の事件には6人もの弁護士が出張ってきていた。咲坂はそこを突いたのである。

 

日本でよく見られる弁護士の給与体系は前金+成功報酬である。事前にある程度のまとまった金と諸費用を払っておいて、裁判に勝った場合にそれらに上乗せして支払うという例のあれである。

しかし、外資系の弁護士事務所はやり方が違う。これは初耳だったのだが、彼らはタイムチャージという方式によって給与計算するらしい。簡単に言うと、時給制というわけだ。彼らが事件に対処するためにかかった時間に時給を掛けて給与を計算し、都度依頼主に請求するのである。

この方式における広告代理店の顧問弁護士たちの時給はおよそ7万円、アシスタントの時給は3万円ほどだという。しかも弁護士たちはがめつい事に、昼食の時間も経費に計上し、仮に飛行機で長距離移動するときなどは「移動時間中に書類を読んだ」といって移動時間すべてを時給に換算するのだという。ああ、それは海外で弁護士が幅を利かせるはずだよな、と納得した瞬間である。誰彼構わず訴えまくって、裁判によって巨万の富を奪い取ることを当然の権利だと主張する海の向こうの人たちの考え方には頭が痛くなる思いである。濡れ手に粟って言葉を知っていたら、こんなこと恥ずかしくてできないと思うのだが。

 

まあそれはいいとして、咲坂は広告代理店が顧問弁護士たちに支払う依頼料が倍々に増えていくことを見越して、次から次へと小さな反訴を繰り返したのである。裁判所を通して訴えられた内容は、いかにちっぽけで些細なものであったとしてもキッチリ反論しなければ自分が負けてしまう。そのため、弁護士集団は咲坂をバカにしながらも、キッチリと反論材料をかき集めるべく仕事をする。そして当然、彼らが働いた分だけ広告代理店には莫大な依頼料がかかっていくというわけである。

 

広告代理店がそのカラクリに気が付いたときには時既に遅し、もう1200万円もの依頼料が発生していた。いくら超巨大企業だからといって、たった20万円で買い取ったデザインの賠償金を取るためにそれ以上の身銭を切れるはずがない。たとえ裁判に勝ったとしても相手は小さな個人事務所レベルの会社である。1億円なんて賠償金が払えるはずもないし、裁判が終わるまでに数千万円もの費用がかかってしまうことは想像に難くない。

 

大企業特有の唾棄すべきプライドだけで訴えを起こしていた官僚のボンボンを部下たちが説き伏せ、結果として著作権侵害の訴えを取り下げることに成功した。闘わずして勝つとは、なんという搦め手だろうか。久方ぶりに心の底から感心させられてしまった。

 

 

この咲坂という弁護士、顔が良いだけで後先考えずに突っ走るきらいがあると元妻からの評判だったが、それだけではなかったらしい。作戦が失敗したと思い込んで不様に取り乱すところや、所員たちの手の平返しにもだいぶ笑わせてもらった。今後も引き続き視聴していきたいドラマである。