***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
軟禁したアンジュに対して、エンブリヲは驚くべき提案をする。それは、彼女を自分の妻に向かい入れるというものだった。彼女と力を合わせ、古い世界とアンジュたちがいた世界をひとつにすることで、今ある世界を壊すことを目論むエンブリヲ。彼の申し出に対してアンジュは……などの展開。
エンブリヲが不死身らしいということは以前からわかっていたことだが、刺されても銃撃されても何事もなかったかのようにしていられるのはどういう理屈なのか。
異常な自己治癒力によって傷を塞いでいるというよりも、攻撃されたこと自体をなかったことにしているかのような、瞬時にタイムスリップでもしているかのような不思議な回避方法を取るエンブリヲ。彼が旧世界の人間だったのだとしたら、いったい自分自身にどんな改造を施したらこんな超人じみたことができるというのか。
それにしても、やはりエンブリヲの胡散臭さというか下衆っぷりは見たまんまであった。
サリアたちを篭絡したその口で、今度はアンジュを自分の妻にするなどと、本当によくもまあ言えたものである。
それもこれも、アンジュたちは所詮自分が作った人間の一人だから、何をしても構わないと考えている節があるような気がしてならない。
エンブリヲはこうも言っていた。
「旧世界の人間たちは野蛮で好戦的でね、足りなければ奪い合い、満たされなければ怒る。まるで獣だった。彼らを滅亡から救うには人間を作り変えるしかない。そしてこの世界を創った」
「だが今度は堕落した。与えられることに慣れ、自ら考えることを放棄したんだ。君も見ただろう、誰かに命じられれば、いとも簡単に差別し虐殺する。彼らの腐った本性を」
「人間は何も変わっていない。本質的には邪悪で愚かなものだ」
……なんだか、まるで人事のように言っていますけれどもね、そんな上から目線な言葉を口走っているエンブリヲ自身もその「野蛮で好戦的」な旧世界の人間だし、なによりも生命を弄ぶその姿勢は「いとも簡単に差別し虐殺する」新世界の人間と何が違うというのだろうか。
こんな彼が創った世界だからこそ、「本質的には邪悪で愚かな」人間が溢れる結果になったのではないか。
結局のところ、エンブリヲというのは、自分が思い通りにならなければ気が済まない駄々っ子と何も変わらない。
アウラという強大なドラゴンを閉じ込めて、そこから生まれるエネルギーだけを強奪して、まるで新世界の神を気取っている。
こんな人間の思い通りになど、だれがなりたいものか。
アンジュが、というか普通の人間ならこんな男に対して反感を覚えないはずはないのだけれど……
やはりアンジュたちが作られた人間だからなのか、エンブリヲはそんな彼女たちをたやすく操ってしまう。
痛覚を50倍にするだの、触覚すべてを快感に変えるだの、それなんてエロg……もとい、えげつなさであろう。
アンジュが母から伝えられた「永遠語り」という歌は、エンブリヲが言うには宇宙の構成理論を音楽に変換したものだという。
それを歌うことによって、ヴィルキスが超性能を発揮し、果てには二つの地球を一つに融合できるというのだから、まったくとんでもない話である。
二つの世界を一つに融合するということは、数話前にドラゴンの世界に現れた空間歪曲が世界中に出現するということで、それはつまりその場にいた人間すべてが時空の渦に飲み込まれて死ぬということである。
エンブリヲは、二つの世界をまとめて壊す気でいるのだろう。
エンブリオから陰湿な拷問を受け続けたアンジュだったが、サリアの心変わりによってその場から逃げ出すことに成功した。
しかもその場にサラマンディーネが援軍に訪れるという都合のよさである。
果たしてアンジュは、得体の知れない不死身の力を持つエンブリヲとどう抗っていくのだろうか。