張り切って参加いたしました。
***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
なかのZERO大ホールにて開催されたコンサート。
霜月はるか、錫湯、aya sueki(敬称略)ほか多数のゲストが出演する2時間30分に及ぶイベントである。
ゲーム会社が主催するコンサートとしてはかなりオーソドックスな演目構成だった。
最初の数十分はこれまでの作品の主題歌をクラシックにアレンジしたものを霜月はるか氏が絶唱してくれた。バイオリンとピアノが主体に編曲しなおされていたこともあり、確かに「ライブ」というより「コンサート」というべき催しになっていた。
しばらくすると、ゲームに出演した葉村夏緒、あじ秋刀魚、優稀澪(敬称略)らによる劇中小説の朗読があった。これは数曲演奏されるごとに行われるのだが、相も変わらず不気味な物語である。作中のとある人物がダンテの「神曲」をモチーフに描いた少女の地獄巡りの物語ゆえ、声優たちの美声が余計におどろおどろしさを演出していた。
クラシックパートが終わると、舞台上にスクリーンが降りてきた。
今回のイベントは、ここからの演出がファン泣かせのものとなっていた。
スクリーンに映し出されたのは、「七つの大罪」をモチーフにしたイノグレ過去作品の登場人物たちによる独白であった。
数曲演奏されるごとに一つの罪(一人の人物)の独白が挿入されるのだが、そのたびにキャラクターたちの心の吐露を聞かされることになる。時間にして一人当たり3分ほど。
その内容が、ゲームのストーリーを補完するセリフになっており、泣けるのである。
独白は次の順となっていた。
《嫉妬者》上月由良(カルタグラ~ツキ狂イノ病~)
《怠惰者》御巫久遠(PP -ピアニッシモ- ~操リ人形ノ輪舞~)
《貪欲者》朽木冬子(殻ノ少女)
《憤怒者》七月紅緒(クロウカシス ~七憑キノ贄~)
《暴食者》茅原雪子(虚ノ少女)
《愛欲者》匂坂マユリ(FLOWERS)
《傲慢者》マリス・ステラ(天ノ少女)
7番目の「天ノ少女」はまだ発売されていない、「殻ノ少女」「虚ノ少女」に続く完結編のタイトルとのこと。(マリス・ステラは「殻ノ少女」の登場人物だが、続投予定)
ちなみに個人的には《憤怒者》は切原想子なのではないかと思うのだが、なぜか準(?)ヒロインの紅緒が想子の心情を推察するという内容になっていた。
上記の中では、一番手の上月由良の独白が一番胸に突き刺さった。
由良の独白は、カルタグラの終盤での彼女の思考になっている。(以下、独白から抜粋)
「どうぞ悲しまないでください」
「私は、貴方の腕に抱かれて眠れるだけで幸せなのです」
「たとえ貴方が私を殺そうとしたとしても」
「それでも私は、貴方を愛しているのです――」
涙なしには聞くことが出来なかった。
どれだけ由良が秋五を想っていたのか、それゆえに狂ってしまったのかが痛いほど伝わってくる内容だった。
ちなみにコンサート中に流れた映像は、会場限定で発売されたCD・DVDのセット「STELLA」に収録されている。
なお、この「STELLA」には4編のショートストーリーが掲載された小冊子が付属している。この内容も非常に興味深かった。
ショートストーリーでは、以下の人物たちが登場する。(文章は鈴鹿美弥氏による)
「迷子」・・・初音(雨宮初音)、雨雀(雨宮雀芽)、マリス・ステラ、七月紅緒、辻村星次
→迷子になった紅緒を初音とステラで助ける話。クロウカシス本編では18歳前後と思しき紅緒が小学生高学年の時代の話として描かれている。
(ステラの登場する殻ノ少女よりも、クロウカシスの世界の方が後の時代の物語のため、整合性は取れている)
「帰還」・・・御巫久遠、森夜月、高城秋五、上月和菜(高城和菜)
→ピアニッシモの物語のあとアメリカに渡っていた久遠が10数年ぶりに帰国し、玖藤奏介を探す話。よくレビューにて無能扱いされることの多い秋五がきっちり仕事をしているところが見られる。ピアニッシモと殻ノ少女の世界は第二次大戦をはさんでいるため、奏介は出征してから消息不明になったことしかわからなかった。
「シスマ」・・・七月歌音(切原想子)、月島織姫、茅原冬見
→火事のあと、病院を抜け出した歌音がどのようにして生きてきたかが垣間見える話。会話の内容から、歌音は14~5歳と思われる。路上売春で日銭を稼ぐなか、裕福すぎて満たされず身売りに走っていた織姫と出会う。冬見が雪子を養女に迎えたあと話のようだから、時代的には殻ノ少女の事件発生直前かも。
「虚ノ拾遺」・・・鳥居小羽、時坂玲人、八木沼了一
→虚ノ少女の中で語られずに放置されていた、小羽の義理の両親の消息についての話。本編での溌剌とした小羽の言動からは想像できなかったが、彼女はとある事情で精神を病んでいる。てっきり彼女が両親を殺したのだと思っていたが、そうではないということがわかってホッとした
イノグレ作品と出会って10年。
何も積み重ねず、何も得られないまま生きながらえてしまった人生を振り返りながら、数々の名曲を聴くことが出来た。
これらの作品を作ってくれたすべての人々に、本イベントに携わったすべての人々に最大級の拍手を送りたい。