悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

乱歩奇譚 Game of Laplace 第2話

ハードディスクに保存してあるアニメの突き崩し作業を実行中です。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

第2話は「人間椅子(後編)」。

 

結論から述べると、不快感MAXなお話だった。

ただし、それが即ち作品の質を落とすとか、「もう二度と見てやらねーぞクソがっ!!」などという文句に繋がっているかというと、そうでもないのが不思議である。

 

物語は、コバヤシ少年が警察に連行されるというニュースが流れるところから始まる。このニュースというのが製作スタッフの底知れない悪意を感じる出来になっており、少しだけ笑わせてもらった。現実のマスコミにおける決め付けの加害者報道や、物知り顔な専門家たちによる的外れな意見、相も変わらず高齢者に大人気な「ゲーム脳」による責任転嫁論と、世の中の偏見を押し込めたようなニュース内容だった。ただし、このニュースが流れるやすぐにまったく別のニュースと差し替えられるという演出がなされる。これもアケチらによる報道規制の一環なのだとしたら、この世界のマスコミは相当に権力の弱い存在だと思われる。

 

続いて視点はハシバへと代わり、舞台は教室へ移動する。

このとき、第1話と違ってモブらはシルエット表示ではなく、しっかりと一人ひとり詳細に描かれていた。どうやらこれは、コバヤシ少年がその他大勢の人物たちをシルエットにしか認識できないということらしい。いったい彼が何ゆえそんなにも退屈を感じているのか、事件に巻き込まれたことで初めて生きている実感を覚えたという趣旨の発言をしていることからも、彼の異常性が垣間見える。

 

物語の前半では、警察に囚われたコバヤシ少年がアケチらに自分の推理を聞かせることが主だった。途中、みょうちきりんな検死官が出てきて遺体の状況をグロテスクに解説してくれたりと、とにかく気味の悪さが前面に押し出されていた。

 

コバヤシ少年の姦計により真犯人がうかつな行動をしてしまったことで、事件はスピード解決する。

 

もとはといえばこの事件は、今回の事件の被害者であるコバヤシ少年らの担任教師がきっかけとなっている。彼は多数の女性を愛し、その愛を永遠のものとするために相手の女性を殺害して、死後はイスに加工するという凶行を繰り返していた。この事件が発覚しなかった原因の一つに、被害女性たちが担任教師を愛していたがゆえに、不自然な行動とはとられなかったからというものがある。確か、原作でもそのような成り行きだった気がする。

 

個人的な倫理観からすると、女をとっかえひっかえするような男にどのような魅力があるというのか、まったく理解しかねる。コバヤシ少年を罠に陥れた犯人に至っては、彼に愛され続けることができるなら椅子になっても構わないと思っていたとまで言っていた。

 

今回の話と直接は関係ないが、最近立ち読みした本の一節に次のような趣旨の文章が載っていた。

曰く、「女性が浮気をするのは、より優秀な遺伝子を獲得して、後世に自分の子孫を残すためである」「そのために女性はまず経済的に自分を支えてくれる者を夫とし、それでいて子どもを産みたい相手は別で探す」のだという。

 

怒りで頭がどうにかなりそうな考察ではあるが、この一節は被害女性らの心情を理解する足がかりになりそうではある。つまるところ被害女性たちは、担任教師がいかにとち狂った連続殺人鬼であったとしても、彼のもつ遺伝子に強烈に惹かれたのではないか。それはフェロモンと言い換えてもいいかもしれないが、まともな倫理観で物事を判断できるような状態ではなかったのだと推測する。

だいいち、まともな人間が「その人に愛されるためならその人に殺されても良い」なんて考える世の中なら、私は今すぐこの世界からドロップアウトしたい。

 

 

それはさておき、今回の事件を一応解決に導いたことにより、コバヤシ少年はアケチのサポート役に捻じ込むことができた。

事件の真犯人と対峙しているときと良い、残虐な事件について思考をめぐらせているときと良い、このコバヤシ少年という存在の底が見えてこない。事件の犯人が述べていたように、コバヤシ少年には探偵としてよりも、犯罪者の素質があるのではないだろうか。

 

今回は前後編の話だったが、次回は1話完結のようである。

はてさて、次回を見るのはいつになることやら。