悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

臨床犯罪学者 火村英生の推理 第10話(終)

何週間ぶりに9・10話を立て続けに鑑賞いたしました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

第10話は、逃亡した諸星から火村宛に脅迫文が届けられた。文面によると、「火村に一番近い女」を標的とすると記されていた。同封された写真には、下宿の女主人、小野刑事、火村の受講生・貴島の3名が写っている。警察は早々に彼女たちを保護したが、諸星の狙いに気づいた火村は下宿先へと戻ってしまう。そこには逃亡したはずの諸星が待ち受けていて、火村にとある死のゲームを要求してきた……などの展開だった。

 

 

第9話に続き、今回もまた論理パズルのような事件だった。事件というより、諸星に狙われた火村がいかにしてそれをかわすかということに焦点が当てられた事件だったように思える。

 

副題となっていた「ロジカル・デスゲーム」の概要は以下の通り。

 

(1)テーブルに赤・青・緑のグラスを用意し、ワインを注ぐ。

(2)諸星は火村に知られぬよう、そのいずれか一つのグラスに「一人分の致死量」ちょうどのトリカブトを混ぜる

(3)火村は3つのグラスのうち、毒の入っていないと思うものを1つ選択する

(4)諸星は火村が選ばなかったグラス2つのうち、毒が入っていないものを飲み干す

(5)火村は自分が選んだグラスと、テーブルに残ったグラスとを再度選択できる

(6)火村が選んだものを火村が、選ばなかったものを諸星が同時に飲む

 

 

ルールを聞かされたときは、「最初にグラスが3つあったところで諸星が1つ消してしまうんじゃ、最初から毒入りか毒なしの2択なのと変わらなくない?」と思ってしまった。

そのうえ、このゲームに必勝法があるとは到底思えない。火村は自分か諸星の死を運によって決めなければならないのでは、そんなふうに思った。

 

解説を聞いて、騙された気分になったのは自分だけではないはずである。もちろんこのゲームには必勝法などというものは存在しない。しかし、より高い確率でゲームに勝つ方法はある。

 

その方法は単純。上記の手順における(5)で、最初に選んだグラスから別のグラスに変更しない、という選択を取ればよいらしい。

 

 

まず(3)の段階で火村は赤のグラスを選択したが、このとき赤のグラスに毒が入っている確率は3分の1である。その逆で、火村が選ばなかった緑と青のグラスに毒が入っている確率は3分の2である。ここまでは直感的な推測と合致する。

 

次に(4)で諸星は緑のグラスを飲み干した。緑には毒が入っていないわけだから、残った赤か青のグラスのどちらかに毒が入っているはず。ではこのとき、赤のグラスに毒が入っている確率は2分の1かというと、そうではないというのである。

 

なぜなら、毒が入っている確率3分の2の集合であった緑と青のグラスのうち、緑には毒が入っていないことが明らかになったわけだから、残った青のグラスに毒が入っている確率は元から変わらず3分の2のままだからである。

 

つまり、一度選んだグラスから別のグラスに変えたときの方が、毒が入っている確率が2倍増しになってしまうという罠が仕掛けられていたわけだ。

 

 

ただしこれらはあくまで確率の話。グラスを替えたあとのほうが生還できることだって充分にありうる。たかだか33%か66%の違いに命をかけるというのは、やはりリスキーである。

 

そこは我らが主人公・火村が賢く立ち回ってくれた。火村が(3)でグラスを選ぶ番になったとき、諸星が火村に対して数秒間だけ背を向けるシーンがあった。その一瞬の隙を見計らって、火村は3つのグラスのワインをすべて混ぜ合わせたあと、再び各グラスに3等分するという荒業をやってのけたのである。

 

こうすることで、各グラスには致死量3分の1の毒薬が含まれていることになり、それを飲んでも即死することは免れられる。もちろん飲まされるのはトリカブトなわけだから、少量でも入院検査が必須になることは間違いないが。

 

まったく、諸星からこのデスゲームを聞かされたときにはこの対処法を思いついていたというのだから、火村の頭の回転の早さは恐れ入る。

 

 

火村と諸星は相打ちの形になり、それぞれが別々の病院に搬送されることになった。しかし、またしても諸星は逃走し、同日中に火村をとあるダムへと呼び出した。

 

有栖川たちも急いで現場に駆けつけるも、2発の銃声が聞こえたあと、二人はどこにも見当たらなかった。

 

物語の冒頭で火村と有栖川が話していたような、シャーロック・ホームズとモリアーティ教授の対決の幕切れと同じような展開になってしまった。

 

 

しかし、本家のホームズが滝つぼに落ちても死んでいなかったように、火村もどうやら生還した模様である。それを匂わせるシーンで本作は幕を閉じる。

 

結局、諸星がどんな人間だったのか、シャングリラ十字軍が目指す革命がどのようなものだったのか、火村の過去に何があったのかなど、いろいろなことが謎に包まれたまま物語は終わってしまった。

消化不良気味とまでは言わないが、あともう少し話を見ていたかった気もする。

 

そんな視聴者心理をわかってやっているのか、ネット動画配信サービスの[hulu」にて3週連続でTV未公開の番外編を公開するというのである。

 

すごい気になるが、貧民たる筆者には月額課金によって動画を見るなどということは夢のまた夢である。いずれ一攫千金がかなったら続きを見ることにしたいと思う。