悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

99.9―刑事専門弁護士― 第1話

久々に「弁護士もの」のドラマにお目にかかることができました。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

TBS では4月期の日曜劇場 (毎週日曜よる9時〜) で、個性的な刑事専門弁護士たちが、ぶつかり合いながらも、逆転不可能と思われる刑事事件に挑んでいく、新感覚の痛快リーガル・エンターテイメント 『 99.9-刑事専門弁護士-』 を放送することが決定した。

 刑事専門弁護士に特化したドラマは、連続ドラマ史上初。タイトルの数字は、日本の刑事事件における裁判有罪率 (起訴された際に、裁判で有罪になる確率) を示している。その確率は 99.9% とも言われ、世界一の有罪率を誇っており、日本の司法制度の高い信頼性の証明とも言えるだろう。だが、そこには大きな落とし穴が隠されている。一旦起訴されると、検察の考えたストーリーが正しいと鵜呑みにされがちなのだ。さらに、刑事事件を専門に扱う弁護士の数も極端に少ないため、丁寧に検証することは極めて困難となってしまう。だが、たとえ 99.9% 有罪が確定している事件でも、残り 0.1% が確定しない限り、それは本当の意味で “事実” に辿り付いたことにはならない。このドラマでは、最後の 0.1% まであきらめず、事実を追い求めていく姿を描いた物語である。

 

 

 

 

●感想

2016年4月17日より開始した日本のテレビドラマ。

 

主演は嵐の松本潤氏。

氏を見ると二代目「金田一少年」やら道明寺家のボンボンやらが連想されてしまうのは自分だけだろうか。他にもいろいろな作品に出演しているはずなのにどうして思い出せないのだろうか。

 

さて、本作は「リーガル・ハイ」以来の「弁護士もの」の作品である。かつてゲームボーイアドバンス逆転裁判が発売された当初は、日本のテレビドラマ界は弁護士ものの作品であふれかえったこともある。「最後の弁護人」「七人の女弁護士」「マチベン」「ホカベン」「弁護士のくず」「女はそれを許さない」などなど、時代を問わなければいくらでも思い出せるが、ここ最近はめっきり見る機会がなくなった「弁護士もの」の作品ということで、これは見るしかないと思った次第。

 

さて、表題になっている「99.9」という数字についてだが、これは日本の刑事裁判における有罪率のことである。もっとも、最近は97%くらいになっているのかもしれないが、これは世界的に見ても珍しいことらしい。

 

この数字を指して日本の検察官の優秀さを讃える人間が少なからずいるが、それは大きな間違いであることを明言しておきたい。この「99.9」%などという馬鹿げた有罪率が現実にありえた理由はいくつかある。

 

(1) 日本の検察官が「有罪判決が見込める犯罪」だけを起訴・立件するから

 

(2) 日本の裁判官があまりに多忙すぎて、検察官の御用聞きに徹していることが多すぎるから

 

(3) 日本の弁護側は検察や警察が握っている証拠をすべて見られる保証がないため、最初から不利な裁判を強いられているから

 

 

とまあ、刑事裁判を専門に研究している方々ならばもっと突っ込んだ理由まで解説してくれるのだろうが、筆者が把握している理由はこんなところである。

 

日本の裁判は、壇上に上がったら最後、ほとんど有罪が決まってしまう。裁判所に連れて行かれたら、どれだけ自分が無実だと訴えてもほとんど無意味。裁判官が信頼するのは、かつて蜜に人事交流を行っていた官僚仲間である検察官の言い分だけなのである。

 

これは言い過ぎでもなんでもなく、現実に起きている日本の裁判制度の弊害である。それに加えて被害者よりも加害者側を厚遇しているとしか思えない取り扱いの差異、相も変わらず続けられる自白偏重の捜査手法と、日本の司法の暗部は異常なほどに闇が深い。

 

法務省の肝いりではじめられた裁判員裁判だって、刑事事件専門の裁判官が自分たちの地位を確立するためだけに制定されたものだという噂も流れている。彼らが本当に人を裁くに値する人間かどうかを調査する制度が早急につくられることを願ってやまない。

 

 

まあ、そんな愚痴はどうでもいいとして、ドラマの話に移ろう。

 

第一話は、取引先の会社経営者を殺害したと疑われている工場主を弁護する話だった。

 

主人公の深山大翔(松本潤)は、刑事事件を専門とする個人事務所の弁護士だった。パラリーガルの明石達也(片桐仁)と組んで、ろくに金にもならない事件ばかりを引き受けて、裁判結果を覆すことを生業としていた。検察官の見立て捜査を次から次へと覆すことから、公権力からは嫌われていた。そして常に金欠であることから、相棒の明石からも再三注意されていた。

 

そんな深山のもとに、斑目法律事務所のマネージングパートナー(所長)である斑目春彦(岸部一徳)がスカウトにやってくる。斑目法律事務所は企業法務専門の弁護士集団なのだが、社会貢献の一環として刑事事件専門の部署を立ち上げることを決めたのだと言う。

 

年俸3000万円のオファーだったにもかかわらず、深山の答えはNO。事務所に属すのは向かないといって素っ気なく断ってしまったのである。

 

しかし、金に困っている明石からの薦めもあり、結局は斑目法律事務所に入ることにした深山たち。そこで彼らが最初に受け持つことになった事件が、上記にあげた殺人事件だったわけである。

 

斑目法律事務所における深山の上司には、香川照之氏の扮する佐田篤弘がついた。「半沢直樹」以来、日曜のドラマに頻繁に出演するようになった香川氏がどんな弁護士を演じるのか気になっていたところ、またしても非常にアクの強い人物だった。勝つためには手段を選ばない上昇志向の強い男が上司となって深山は上手くやっていけるのか。

 

ただ、深山はその佐田を上回るほどすっとぼけた性格をしているため、むしろ上司である佐田を振り回す展開になっていきそうである。

 

今回の事件のネタに使われていたトンネル用ライトにおける色彩の変化については、いつぞや木村拓哉氏主演の検事もののドラマ「HERO」においても使われていた気がする。若干意味合いが異なるところでは「金田一少年の事件簿」における塾生が皆殺しにされる話でも使われていただろうか。

 

それにしても、弁護士が主役の話だとやはり検察官は悪役として描かれてしまう。被疑者の自白を誘うために「家族はおまえのことなんかどうとでも裁いていいと言っていた」なんて嘘までついていたことといい、相当にブラックである。昔、警察官による取調べで「踏み絵」のような行為を強要した志布志事件を思い出させるような真っ黒さである。こういうのは特別公務員暴行陵虐罪に該当しないのだろうか。

 

はてさて、今回は深山のヒラメキによって無事に冤罪を晴らすことができたわけだが、次回はどうなることやら。続きが気になるところである。