悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 第12話

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

アルゼナルがドラゴンたちの急襲を受け大損害を受けている頃。マナの満ちた世界の首脳たちは今後の世界運営についての密約を交わす。彼らに口添えする謎の男・エンブリヲ。彼の言葉によって、世界は「作り直される」ことになった。一方その頃、アンジュはジル総司令官にこれまでの疑問のすべてをぶつける。そしてアンジュは、この世界の真実を知ることになるのだが……などの展開。

 

 

たぶん、物語の黒幕的な人物が登場したのが今回の話と思われる。

 

謎の男・エンブリヲ。その正体は、なんと「マナの満ちた世界」を作り上げた創造主だという。

 

現実世界を生きる筆者から見ても歪だった世界は、このエンブリヲを名乗る謎の男によって文字通り「作られた」世界なのだという。

 

そこに生きる人間たちも、彼らが身につけている「マナ」という特殊技能も、すべて彼が作ったものなのだという。

 

……もはや科学の領域を遥かに超える技術だと思われるのだが、彼は本当にただの人間なのだろうか。

 

まあ、だからといって「マナの満ちた世界」に生きる人間の多くがゴミクズに思えたのは、作られた存在だったからというのは早計だろう。

 

赤ん坊の頃からアルゼナルに収容されているというエルシャや、マナを使えるモモカなど、こんな狂った世界に生まれてもまともな人間性を備えている者も少数派だが存在はする。

 

狂った人間が多いのは、「ノーマ」という突然変異体を必要悪として差別するように仕向けてきたエンブリヲのせいなのだろう。コミュニティを維持するために、違うものや弱いものを徹底的に虐げるというのは古代から繰り返し成されてきた常套手段ではあるものの、「争いのない平和な世界」を作りたくて新たな人類を作ったくせに差別を肯定するというのは、なんとも自己矛盾が過ぎる気がするのだけれど。

 

 

一連の話をアンジュに教えたジルが、ガリア帝国とやらの第一皇女だったというのも驚きだが、それゆえにちょっと萎える情報もあった。

 

ヴィルキスが、「マナの満ちた世界」の創造主によって作られたものであり、それを操縦するために「高貴なる血」が必要だった、とうネタ晴らしがあったためである。

 

アンジュも含めて世界中の人間が作り物なのだとしたら、そのどこに高貴さがあるのかという失笑ものの疑問と、伝説の勇者にしか抜けない剣(笑)という弱肉強食を絶対肯定するような設定に対する皮肉めいた微笑しか浮かばなかった。

 

……まあ、そうじゃなきゃとある国の第一皇女殿下を主役に据える必要もないわけだから、必要な設定といえるかもしれないけれど。

(とはいえ、個人的には異世界に飛ばされて無双する一般人の話も同等に嫌いなわけで、そうなると「平凡な人間が頑張って功績を遂げる」話しか好みの領域に残らなくなってしまうわけだが)

 

 

ジルたちが企てている「リベリタス」とは、この壊れた世界をぶち壊すことだった。

 

そこでジルたちが手を組んだのが、「マナの満ちた世界」に受け入れられなかった旧世界の人間たちなのだという。彼らは「ノーマ」と同じくマナが使えないらしい。

 

謎の青年・タスクもその一人というわけか。

 

 

世界の真実を知ったアンジュが「リベリタス」に協力するかをたずねられたとき、その応えは意外にもNO。

アンジュはいまの生活が気に入っているからとジルの要請を拒絶した。

 

まあ、ノーマであるというだけで王女から一介の兵士にまで身をやつしたアンジュなら、これ以上余計なことに巻き込まれたくないという発想になっても仕方がないのかもしれないけれど。ただ、ジルに対する反発心から発作的に拒絶したとも受け取れるか。

 

物語の後半になって、仲間の一人であるヴィヴィアンがドラゴンに変身してしまった件から、アンジュたちがこれまで戦ってきたドラゴンの正体が人間であると判明。

 

異世界から攻めて来る人間というと、先に述べた「旧世界にとり残された人類」と同じと考えていいのか。旧世界の人間すべてが龍になれるのか、タスクはどうなのか。っていうかヴィヴィアンは何者なのか。

 

わからないことだらけである。