悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

殻ノ少女《 FULL VOICE HD SIZE EDITION 》 その6

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 余談

ついに全国で緊急事態宣言が解除され、いよいよ元通りの生活へとゆっくりな足並みで戻っていくのかという期待感1割失意9割な今日この頃。

 

本来なら議題違いなためこの場で書き記すものではないのでしょうが、

これはもう自分自身の人生にかかわる重大事件なため恥も外聞もなく申し上げたい次第です。

 

2020年6月19日発売のウルトラジャンプ7月号にて、あの伝説的サイコミステリー

電波的な

連載されることが決定しました!!!!!!!!!!

 

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ウルトラジャンプ告知_20200619

 

個人的には「カルタグラ」と並んで「狂おしいほどの愛」を思い知った傑作であるため、これはもう大々的に宣伝せざるを得ない。

 

発売してからすでに10数年も経っているライトノベルだけあって原著はすでに絶版になっていますが、連載と合わせて既刊3巻が7月に新装版として発売されるとのこと。

 

イノグレ作品が好きな方、サイコな雰囲気の漂うミステリーが好きな方、荒廃したリアリティが好きな方……皆々様どうぞいらっしゃいませ。

 

主人公を盲愛してくるヒロインとの機知に富んだ応酬と、絶望的な事件の顛末と、最後に残った確かな希望が読者の心を掴んで離さないことでしょう。

 

読むなら今しかない、乗るしかないこのビッグウエーブに!!!!!

 

・雑感

 イースターの卵に詰め込まれていたのは、行方不明になっていた女学生の身体の一部だった。

 

魚住が言うには、ほんの数日前にも同じように別の被害者の身体の一部が打ち棄てられた状態で発見されているという。

 

しかし、どちらの事件も同一犯による犯行と断定できるだけの証拠はまだ挙がっていなかった。

 

そんなとき、警察庁から派遣されてきた管理官・八木沼了一の指揮のもと、二つの事件を合わせて扱う捜査本部が立つことになり、玲人も捜査に協力することに。

 

一方そのころ、上野の探偵である高城秋五はとある筋から人探しの依頼を受け、私立櫻羽女学院を監視していた。

 

探し人の名前は、朽木冬子。

依頼人から手渡された写真には、彼女と玲人が一緒に写されていた。

 

自分たちが探されているとは露知らない玲人。

彼は捜査の合間を縫って、紫の親友・綴子の著作が出版されることを記念してパーティの準備をしていた。

 

だがしかし、綴子はその日を境に行方不明となり、ほどなくして腕だけの遺体として発見される。

 

目が覚める度、自分の顔見知りが次々と消えて行ってしまう。そんな錯覚に襲われるほど、玲人は自分の無力さを痛感させられる。

 

犯人と思しき目撃情報は一貫して、黒づくめの服をまとった人物だったということだけで、詳しい人相まではわからないという。

 

捜査が行き詰りかけたころ、悲劇は再び起こる。

 

自らの出自に疑念を抱き、日々虚弱に陥っていた冬子が、不幸にも交通事故に巻き込まれてしまったのである。

 

事故の原因は、彼女が常用している薬がなくなってしまい、投薬できなかったためだった。虚弱体質だった冬子はそれにより貧血を引き起こし、車の前で横転してしまったのである。

 

冬子の親友である水原透子はその事実を知り、自らの責任を思い知る。彼女は玲人が冬子に麻薬の類を渡していると誤解し、薬を棄ててしまったのだ。

 

失意と絶望の中で透子は病院を飛び出してしまう。

 

そんな透子を謎の人物が迎え入れる。

 

しかし彼女は気づいていなかった。その人物こそ、綴子たちを殺害した凶悪犯であるということに……

 

 

 

 

手足だけの遺体が見つかる。

物語のキーパーソンとなる少女が事故で重傷を負い、その引き金となった少女が事件の被害者になる。

 

――などなどの要素はまさしく「魍魎の匣」の展開のオマージュそのものなので、聡い読者だとこれだけで犯人に目星がついてしまいそうではある。

 

しかし、ここまであからさまに類似点を残しているのは一種のパロディ目的であって、むしろ後半戦の事件の主眼は犯人どうこうというよりも「朽木冬子は何者なのか」ということのほうなのではないかとも思える。

 

秋五は誰に頼まれて冬子を探していたのか。

朽木家に訪ねてきた紳士は、どうして冬子に対して奇妙な反応を見せたのか。

 

冬子の出自には謎が多いが、そんな彼女を調べている者が他にもいる。

 

彼らの調べによれば、冬子の遺伝子には父親の遺伝情報が欠けているということらしい。

 

冬子がファンタジーの存在でない以上、父親は実在するはずである。理論だって考えれば遺伝子研究が進んでいない時代背景もあって調査が完全ではなかったということなのだろうが……

(それとも彼らが言うように、冬子は母親からの単為生殖によって生まれた「神の子」とでもいうのだろうか)

 

 

なお余談だが、ここまでわざと無視してきた問題にようやく焦点を当てたいと思う。

 

殻ノ少女」がHD版となるにあたって大きな変更点は画像のHD化とフルボイス化である、と本記事の「その1」で述べたと思うが、実をいうとそれのほかにもう一つだけ追加要素がある。

 

それは、章と章の間に語られる何者かのモノローグである。

 

本作を音声ありでプレイしている読者であれば、その声の主が誰なのかはすぐに察することができる。

朽木冬子である。

 

しかし、冬子の生い立ちや人物像を知れば知るほど、モノローグの声の主が語る内容との「ブレ」が気になるようになる。

 

物語の後半戦に入り、透子が行方不明になるくだりまで来るとその特徴はついに顕著になる。

 

つまりこのモノローグすらも大きなミスリードのひとつとしてイノグレが新たに用意したものだったのだろう。

 

では、彼女は本当は何者なのか。

 

この時点では名前こそ上がっていないものの、大概の読者ならもう気づいているのではないだろうか。

 

彼女こそが、「殻ノ少女」その人であるということに。

 

 

 

さて、そろそろ一年も折り返しを過ぎるころ合いになってきたことだし、いよいよ本作のレビューもどきも終盤に差し掛かっている。

 

ここいらで一気に物語を読み上げたいものだが、果たしてどうなることやら。