悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

虚ノ少女 《 NEW CAST REMASTER EDITION 》 その4

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

 

・雑感

紫の誘いに応じて美術部に加入した雪子は、少しずつ打ち解けるようになった。

小羽が言うには、彼女は幼いころに雪子と同じ保育施設で仲良く遊んでいたはずなのだが、当の雪子自身はそのことを覚えていなかった。雪子は昔から「忘れっぽい」のだという。

 

12月も中旬に差し掛かるころ、東京に一人の来訪者が現れる。嵩宮めぐりである。

彼女はある人物を探すため人形集落を発ち、東京は上野までやって来ていた。

人探しを依頼するための探偵を探していた彼女は、たまたま出くわした冬史より、時坂探偵事務所を紹介される。

 

同じころ、真崎は朽木病院を退院した。しかし真崎は自殺を図るにあたって借家を引き払っており、どこにも帰る場所がなかった。

連続殺人事件の重要参考人でもある真崎を野放しにするわけにもいかず、玲人は探偵助手という名目で真崎を雇い、監視をすることにした。

 

玲人が事務所を留守にしている間、めぐりが人探しの依頼をしにやって来る。来客対応していた真崎は、そんなめぐりを見て思わず彼女のあだ名を告げてしまう。

真崎こそ、めぐりが探していた張本人だったのだ。

 

真崎が自殺を図った理由は、故郷である人形集落の出身者に見つかったことで、実家に居場所が知られてしまったからである。

所在が割れてしまえば、彼は実家を継ぐために見合い結婚させられてしまう。

しかし真崎には、実家を倦んでいると同時に、どうしても故郷に帰ることができない事情があった。

 

偽名を使って暮らしている真崎を慮って、めぐりは深くは追及しなかったが、彼女もまた使命を帯びて上京してきた身である。

というのも、その真崎の見合い相手というのがめぐり自身だったのである。

彼女が言うには、以前にも何人か見合いの候補が居たらしいが、種々の事情によりご破算になり、めぐりに話が回って来たらしい。

 

だが、真崎は人形集落に戻るつもりはなく、実家を継ぐ意思もないことをめぐりに伝えた。真崎の回答を予期していためぐりは彼の意を酌み、人形集落へ戻っても真崎を見つけることはできなかったと伝えるつもりであると言ってくれた。

 

 一方そのころ、玲人は連続猟奇殺人事件の捜査が進展しないことを危惧していた。

そこで玲人は、最初の被害者と面識がありながら素性の判然としない真崎の過去を調べることで事件へのアプローチを試みる。

その手段として玲人は、かつて真崎のカウンセリングを担当していた精神科医を訪ねることにした。

その医師の名は、六識命。かつて玲人の恋人を含め何人もの女性を惨殺し、2年前の猟奇殺人事件を教唆した疑いで今なお警視庁の代用監獄に留置され続けている男である。

ろくに口を開こうとしない六識だったが、 玲人が提示した推理に対して彼は静かに首肯する。

 

真崎が頑なに素性を隠す理由。それは、彼が殺人を犯して逃亡中の身だからである――と。

 

 

一方そのころ、玲人から自由行動を許された真崎はめぐりの観光につきあっていた。
真崎はお茶の水にあるホテルにめぐりを送り返したあと、めぐりを訪ねてきた菜々子と遭遇しそうになり、隠れるように逃げ帰った。

 

その日の晩、めぐりは連続殺人の犠牲者となってしまう。

翌日、玲人は八木沼からの報せを受けて事件を知る。


3人の被害者のうち2人も関わりがあった真崎は、再び重要参考人として連行されることになる。

 

いよいよもって、事件の中心に真崎がいることが濃厚になってきたため、玲人は警察のつてを頼りに真崎の過去の記録を読み返す。


従軍名簿によれば、真崎という人物は戦場にて病死していることが判明。
しかし、本物の真崎が組み込まれていた師団の中に、たった一人だけめぐりと同じ人形集落の出身者が含まれていた。

 

玲人はその人物こそ真崎の名を騙っている張本人であると看破する。

 

ついに身元を明かされた真崎は、復員後に殺人を犯したのち、10年近く東京に潜伏していたことを自供するのだった。

 

 

 

 

 

 

ついに起きてしまった第3の殺人。

ここから「ヒンナサマの祟り」事件は一気に進行していく……と思いきや、この直後から再び過去編が始まるため、またしばらくの間は昭和32年の世界からはサヨナラすることになる。

 

さて、物語も中盤に差し掛かるかといったところでようやく真崎の正体が明らかになった。

まあ、玲人が真崎の本名を指摘する際に表示される選択肢は3つしかないうえ、そもそもここまで話を読んでいた読者であれば、彼が何者かなんてことはわかりきっていたことだろう。

 

ここまでの真崎の印象としては、「何か」から逃れることばかり考えている覇気もやる気もないダメなオッサンというイメージしか与えられていない。それはひとえに「燃え尽きてしまった」ことが原因なわけだが、その経緯はまもなく語られることになる。