悪意ある善人による回顧録

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カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 その3

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・追加ルートについて2

本作は2005年4月発売の原作「カルタグラ」からリメイクされるにあたり、凛・綾崎楼子・蒼木冬史・上月和菜・上月由良の5名について新規ルート及び個別エンディングが追加されています。

 

それぞれに新規Hシーンも新録されており、だいたい一人当たり通読で20~30分くらいの物語が追加されていると思っていただければ目安になるのではないでしょうか。

 

ちなみに「カルタグラ」は2005年12月には全年齢PS2版も発売されており、そちらでは初音・高城七七・蒼木冬史の個別エンディング(グッド・バッド)、および終盤において由良と対峙した際に迎える複数の結末が追加されていました。

※この結果、原作では死ななかったはずの登場人物がPS2版では死亡する展開があるなど、コンシューマ版にも関わらず物騒なエピソードまで増えているのはちょっと問題かもしれませんが。

 

またPS2版では原作「カルタグラ」でHシーンが入るタイミングで秋五と由良との追加回想シーンやその他の人物との会話シーンに置き換わるなどの変更がなされていましたが、これらPS2版独自の追加要素は今回のカルタグラFHDリメイクにおいては一切反映されていません。

 

ですので、秋五と由良が出会った当初どのような交流をしていたのか、初音・七七・冬史と迎える個別エンディングがどのようなものだったのかを知りたいのであればPS2版を手に取る以外方法がないことはあらかじめ伝えておきたいと思います。

 

 

・凛エンドについて

あんな底抜けに明るい女性をどうしてあんな無惨な死なせ方をするんだイノセントグレイ!!!

……と原作を読んだ当時は相当にショックを受けたものですが、凜は読者人気も高い登場人物だったため、2007年発売のファンディスク「和み匣」に凜を主役とした短編が収録されたこともあります。

(なお、この短編「雪に咲く花」は今回のカルタグラFHDリメイクには追加されていませんので、内容を知りたいのであれば「和み匣」ないし同作が同梱されている総集編「PARANOIA」を入手する必要があります)

 

そんな哀しい運命を背負った凛ですが、今回のリメイクによってようやく個別エンドが実装されました。

 

……がしかし、この個別エンドでも凛には非情な運命が待ち受けていました。

なんだろう、イノグレスタッフの中に明るい女性は極限まで虐め抜かなきゃ気が済まない性癖のド変態でも潜んでるんでしょうかね……?

 

原作と同様、凜は上野連続猟奇殺人事件の犯人によって拉致され、そこで無理やり右目の眼球を抜き取られるという非道な拷問を受けることになります。(なんでその痛々しいくだりをわざわざ克明に追加CGで描くんですかね……!?)

 

しかし、犯人の居場所を突き止めた秋五によって間一髪で難を逃れ、瀕死の重傷を負ったものの凜は生き延びることができました。

 

その後、凜本人の強い希望もあって彼女は遊郭・雪白を去ることになり、秋五の探偵助手として共同生活を送ることになります。

 

ここで凜の新たな立ち絵が追加されるわけですが、あの凜が着物ではなく洋装になっていることに阿久井は一種感動を覚えてしまいました。原作では着物姿のままあっけなく退場してしまいましたから、凛のほかの装いが拝める機会がくるなど思ってもいなかったので。

 

ただし、異常な殺人犯によって奪われた右目は戻るはずもなく、凜の右目には眼帯がつけられています。それでも元の明るさを喪わず、秋五の仕事を支えてくれる凜はとても強い女性だと思います。

 

思えば、イノグレ過去作には必ずと言って良いほど片目を眼帯などで隠した人物が登場していますが、カルタグラにだけはそれがなかったので悪い意味で統一感が出てしまいました。

なんだろう、イノグレスタッフの中に登場人物の中に必ず片目が喪われている人がいなければ気が済まない性癖のド畜生が潜んでるのでしょうか……?

 

このあと秋五は由良の捜索からはきっぱり手を引いてしまうため、物語としては打ち切りエンドに近い印象はありますが、おそらくあのまま平穏無事な生活を続けていくのだろうという予兆を感じさせる幕切れでもありました。

 

ちなみに凜ルートでは、とある娘から戦争を境に行方不明になった父・荒田大作を探して欲しいという依頼を受けたので、「新宿の探偵」に捜査協力を求めるかもしれない、といった趣旨のやり取りがなされます。

イノグレ過去作をプレイしたことがある人であれば、それぞれ「和み匣」の登場人物・美波栞、たこ焼き屋の親父、「殻ノ少女」シリーズの主人公・時坂玲人を指していることは瞬時にわかったことでしょう。

他の追加個別ルートでもこういった遊びがされているのはファンライクでとても好ましいですね。

 

 

・楼子エンドについて

もともと原作「カルタグラ」の後半戦で突如現れた登場人物で、登場したと思ったら即座に退場してしまったことからも出番が非常に少ない女学生だったため、個別エンドが追加されてもいきなり感がどうしても拭えませんでした。

 

なんというか、秋五の間男感・優男感が前面に出過ぎてしまって情けないというか、「テメー和菜の依頼ほっぽって一回り以上年下の女学生に手ぇつけてんじゃねえぞ!!!」といった不満が強く出てしまい、最初はちょっと冷静さを欠いたまま物語を読み進めてしまいました。

 

話の展開としては、和菜の舞台「ロミオとジュリエット」を楼子と観劇したのち、望まぬ結婚を強いられているから助けて欲しいと懇願する楼子の想いを受け入れるというところまでは原作「カルタグラ」と同様です。

 

その後、楼子が何者かに連れ去られそうになったのを助けた秋五は、その婚約者というのが「千里教」の関係者であることを突き止め、きな臭くなった婚約話から楼子を保護するために彼女を東京から連れ出し、実家の綾崎家へと送り届けることにしました。

 

原作「カルタグラ」では楼子が秋五と共に舞台を観劇したことが原因で由良および赤尾のターゲットに指名されてしまっていたため、彼女が助かるためにはこの時点で東京から離れるしか道がないことは確かなので、それはまあいいでしょう。(もちろん、秋五はそんなことはつゆとも知らなかったわけですが)

 

ただ、このあと秋五は由良を見つけることも出来ないまま捜査を打ち切り、数年後に東京で楼子と再会して幕引き……という展開にはちょっともやもやした感想を抱いてしまいます。

 

まあ、楼子の願いを聞き入れた時点で秋五の中での優先順位は楼子の安全が最上位になってしまっているので、過去の一時だけ情を交わした由良のことや、そんな由良を探して欲しいと強く願っていた和菜のことなんて頭からすっぽり抜け落ちてしまっているのでしょうけれど……やはりちょっと唐突というか、無責任な感は拭えない幕引きではありますね。

 

ちなみに先述した楼子の怪しげな婚約者として名前が挙がったのが、「虚ノ少女」で登場した「天恵会」幹部である空木であろうというのは興味深い展開ではありました。やはり碌でもない男だったわけです。

 

それにしても、楼子は血縁者に西欧人がいることからプラチナブロンドが目を引く美少女ではあったのですが、追加されたCG・立ち絵も美しい仕上がりでちょっと目を見張るものがありました。

 

 

・冬史エンドについて

誰がどう見ても冬史は秋五に好意を持っているのに、秋五本人はそれにまったく気づかないという残念な間柄だった二人。

 

由良の捜索を通じて秋五と和菜は親密になっていくものの、堅気な生き方をしていない秋五が和菜の将来を案じて彼女を受け入れないことを決めた結果、秋五と冬史がくっつくことになる、という一見すれば「まあそうなるよね」という展開が明示化された新規ルートです。

 

っていうか、原作「カルタグラ」にはもとから冬史を抱く展開があったにもかかわらず冬史の個別エンドがないこと自体が不可解だったので、それがようやく自然な話運びになったという印象を受けました。

 

話の展開としては、千里教から逃亡した時子を保護したあと、上野連続猟奇殺人事件の主犯が赤尾であるとあたりをつけた秋五と冬史が赤尾のアトリエですったもんだするところまでは原作と同様です。

 

しかしこのあとアトリエでの攻防の末に赤尾は事故死してしまい、いつの間にか千里教本部へと戻っていた時子は焼け落ちた千里教本部跡から焼死体として発見されました。芋づる式に千里教のある山林で由良と思しき遺体が発見され、和菜は失意のなか海外留学に出てしまいます。

 

秋五は転居先で冬史と協力しながら探偵業を続けることになり、ほぼ半同棲のような生活を送るようになる、といった顛末です。

 

由良が見つけられなければ、和菜が日本から離れてしまえば、秋五が結ばれる可能性が最も高かったのは冬史なのでしょうから、この話運びは非常にシンプルで自然だと思います。

 

ちなみにこのエピソード中に秋五が受けた人探しの依頼は、明言こそされていませんが「殻ノ少女」の登場人物である水原未央が依頼人で、自分の息子同然の少年を探して欲しいというものでした。

 

あとこのルートで特筆すべきことがあるとすれば、初めて冬史の失われた左腕がCGで描かれたことでしょうか。

 

 

 

 

はてさて、今回も長々と取り留めのない文章を書き散らしてしまいました。

続きはまた後日。