悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

お義父さんと呼ばせて 第1話

設定の奇抜さに目がいきがちな本作ですが、キャストに惹かれて視聴することにした次第です。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

●概要

“息子”遠藤憲一 VS “父親”渡部篤郎 愛する娘の結婚相手は、自分と同い歳のオッサン!"

“結婚したい男”VS“結婚させたくない男” !

大道寺 保、51歳、独身。中堅専門商社の部長。仕事に没頭するあまり、これまで結婚に縁は無かったが、真っ正直に生きてきた。そんな保が28歳も年下の女性・花澤美蘭と運命的に出会い、その笑顔と温かさに触れて、人生で初めて結婚を決意。

花澤紀一郎は51歳、既婚。一流総合商社で華々しい実績を重ね、最年少役員を務めるエリートビジネスマン。妻と3人の子どもに恵まれ、自らの家庭を理想的だと信じている。年齢は同じだが生き方も考え方もまるで正反対の2人が、ある日、衝撃的な出会いをする。


「娘の彼氏」と「娘の父親」として・・・。

 

自分の人生で縁のなかった“仲の良い一家団らん”に憧れ、自分も花澤家の家族の一員になりたいと思う保。一方、長女・美蘭が自分と同い年の彼氏を連れてきたことが引き金となり、完璧だと思っていた自分の家族から次々と噴出する問題に、父親として、夫として頭を抱え、これまでの生き方に疑問を感じ始める紀一郎。このドラマは、そんな相容れないオッサン2人がいつしか心を通わせ、壊れた家族を再生していく物語。

 

 

 

●感想

フジテレビ系のテレビ局で放送中の連続ドラマ。

ドラマオリジナル脚本とのこと。

主演は遠藤憲一氏と渡部篤郎氏の二人。

 

遠藤憲一氏というと、「依頼された仕事は何でもこなす」というストイックな仕事人気質で名の知られた名俳優である。主要人物から脇役まで何でも承り、ハードボイルドな役を演じたかと思えば馬鹿馬鹿しいまでのコメディタッチな役を演じるという守備範囲の広さである。

筆者の記憶の中では、彼が登場した最古の作品は実写の戦隊アクションドラマ「忍者戦隊カクレンジャー」になる。近年ニコニコ動画で同ドラマを視聴したとき、悪の組織の幹部として彼が出演しているのに気づいたときにはえらく驚いたものである。

 

渡部篤郎氏を意識し始めたのは、2009年にNHKドラマ「外事警察」で主演を飾ったころになる。しかしあの当時はプライベートに忙殺されていたためにこのドラマを見ることができなかった。その後、「ビターブラッド」「ST 赤と白の捜査ファイル」「銭の戦争」「デザイナーベイビー - 速水刑事、産休前の難事件 -」などで渡部篤郎氏を見かける機会を得たが、彼もまた印象的な俳優の一人である。

 

 

さて、この物語は花澤美蘭(ハナザワミラン)の彼氏である大道寺保(ダイドウジタモツ)が、美蘭の父・紀一郎と同じ年齢だったことによる喜劇である。

 

美蘭が23歳なのに対して、保は51歳。28歳差という超歳の差カップルである。

 

二人の出会いは非常にシンプルなものだった。プラスチック製品を扱う中小専門商社に務めていた保は、PCの操作能力が未熟のため、よくPCをフリーズさせていた。トラブルが起こるたびに、商社にシステムを導入したIT企業にヘルプ人員を派遣してもらう。その派遣員が美蘭だったのである。

(第1話の美蘭の発言によれば、保に会いたいがために毎回自分から率先して派遣されていたらしい。きっかけは美蘭による一目ぼれだったのだろうか)

 

保がしがない会社員なのにたいして、紀一郎は大手企業の最年少役員として雑誌に掲載されるほどのキャリアマンである。妙に軽快なノリと刷新的な志向のため、旧態依然とした会社勤めの保とは真反対の人物と言っていい。彼も保と同じ51歳なのだから、美蘭が生まれたとき彼は28歳だったことになる。(ちなみに美蘭には兄と妹が一人ずついる)

 

 

ドラマの冒頭は、波止場で逃げる保を紀一郎が追いかけるシーンから始まる。出オチ感満載の滑稽な映像である。今後のドラマでは、どうしてこのような悲惨な状況になったのかを説明していくらしい。

 

 

第一話は、他人の結婚式を眺めているうちに結婚の意志を固めた保が、美蘭の家族に会いに行くという筋であった。二人が交際をはじめて1年が経っているというし、時間経過だけを考えるなら問題ないように思える。

 

しかし、自分と美蘭の歳の差を考えると、歓迎されるはずもない。はやくも臆病風に吹かれる保。

 

一方で美蘭はというと、そのような些事などまったく問題ないと言わんばかりのあっけらかんとした態度である。保の態度に業を煮やした美蘭は保に対して、父・紀一郎に関する嘘を教え込む。年齢が71歳で、まだ働いているけど平社員で――など。それを信じてしまうあたり、保も人が良すぎるというかなんというか……

 

そして面談当日。美蘭の祖父が老人ホームで問題を起こし、追い出されるというトラブルに見舞われているとも知らずに、保は花澤家にやって来た。彼氏は26歳だと聞かされていた紀一郎は二重の意味で大混乱である。

 

それからの保と紀一郎の掛け合いが最高におもしろかった。お互いに美蘭に嘘をつかれていた為、相手を警戒しながらの微妙な間合いである。表面上は和やかなのに敵意満載な嫌味を繰り出す紀一郎と、焦りのあまり失言を繰り返す保。保が美蘭との交際は真摯なものであり、結婚は真剣に考えた末でのことだと言っているにもかかわらず、「お前の未来は誰にも看取られず孤独死することだ」とまくし立てる紀一郎。今後もこのように愉快なやり取りが見られるとしたら、ドラマの視聴を続けていきたいと思う。

 

 

それにしても、保がオモチャメーカーの社長に謝罪に行くまでの描き方が、ヤクザの鉄砲玉のようにしか見えなかったため非常に笑った。狙ってやっているのはわかっているのだが、確かに保役の遠藤憲一氏の強面な風貌ではこういったハードボイルドな演技がよく似合う。

 

奇抜な設定による一発屋ドラマにならないよう、今後の展開には重々期待している。