悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

カルタグラ(Nintendo Switch版) その2

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

プレイし終えてみての前置き

Nintendo Switch版「カルタグラ」が発売されてからちょうど2か月経った2週間前に、ようやく本作を読み終えました。

 

PS2版⇒原作PC版⇒FHDリメイク版ときて今回のSwitch版なので、少なくとも4回以上は「カルタグラ」の全シナリオを読み続けてきたわけですが、今回はFHD版の移植作ということなので、全シーンをFHD版と共に読み比べるという検証作業とセットで読破してみました。

 

結果として、おそらくFHD版との差異はほぼすべて網羅できたのではないかと自負していますが、変化が細やかすぎる部分も非常に多かったため、それらすべてをあげ連ねるのはやめておきたいと思います。

(列挙するだけで疲れますし、おそらくそこまで細かな差を知りたがる奇特なファンは私くらいしかいないでしょうし)

 

とはいえ、携帯ゲーム機であるニンテンドースイッチで「カルタグラ」が読めるというのは、原作が発売した2005年当時では考えもしなかったことでしたので、それだけでも感動の連続ではありました。

 

FHDリメイク版は18禁PCゲームであることから、ゲームの挙動は使用しているPCによって大きく異なるのだろうということは想像に難くありません。

実際、私が使用している低価格帯のデスクトップPCだと、会話の途中でキャラクターの表情や姿勢が切り替わる際、一瞬前の画像が見切れてから切り替わるという「微妙な間」があったんですよね。

それがSwitch版だと、スチルの切り替えもキャラクターの立ち絵の切り替えもぱっぱと速やかに変化するんですよ。「微妙な間」なんてコンマ数秒の待機時間など存在しない。

 

UIもSwitch向けに工夫が凝らされていましたし、「次の選択肢へ移動」「前の選択肢へ移動」を駆使することで、大変なルート分岐も楽々検証することができました。

 

あと個人的には、「エンディングリスト」がただの達成記録にとどまらず、シーン再生機能を兼ねていたことも非常に好感度が高いですね。

本作はあくまでコンシューマー向け移植されたアドベンチャーゲームですので、原作やFHDリメイク版にあったようなHシーンのシーン再生なんて搭載できるわけもありませんが、代わりにエンディングにいたる直前のシーンから読み始められて、エンドロールまで見られるのはなかなか親切だと感じます。

 

総じて、アドベンチャーゲームとしてはものすごく「読みやすい」部類であったと言っていいと思います。

 

心残りな点について

ただ――ただですよ?

今回、Switch版が発売するにあたって、新規描きおろしCGが追加されるというのが(大々的ではないにせよ)一つの宣伝文句になっていました。

 

しかしながら、全編通してみて追加されたCGは、以下の4つのみであり、シーン追加はされていないことが確認できました。

 

・END4「凛の幸せ」に至る前の秋五と凛の仲睦まじい挿絵

⇒FHDリメイク版で追加された凛とのHシーンに入る直前の会話シーンに追加された。(Hシーン自体はカット)

 

・「サクラメント編」の和菜ルートにおいて、秋五の下宿先にて秋五と再会した和菜とのキスシーン

⇒原作「サクラメント編」において和菜とのHシーンに移行する直前の会話シーンに追加された。(Hシーン自体はカット)

 

・END15「トゥルーエンド」(和菜エンド)に至る前の、秋五と和菜とのキスシーン

⇒FHD版で追加された和菜とのHシーンに移行する直前の会話シーンに追加された。(Hシーン自体はカット)

 

・END18「海の光」(由良エンド)に至る前の、布団で寝そべる全裸と思しき由良の肩口から上の部分だけを(秋五視点で)見下ろすセミヌードのシーン

⇒FHD版で追加された由良とのHシーンに移行する直前の会話シーンに追加された。(Hシーン自体はカット)

 

 

――まあ、この物語の正ヒロインは和菜なのですから、彼女が一番描き下ろしCGが追加されていることについては、何ら文句はありません。むしろ当然と言ってもいいかもしれません。

 

しかし……それにしたって追加CGが4点のみというのは、少しばかし寂しい結果ではありましたね。

 

FHDリメイク版では凛のほかに楼子や冬史の個別エンディングが追加されていたこともあったので、彼女たちにも何らかの追加があってもおかしくないと思っていたのですが、結果としては既存CGの拡大編集や画角カットに留まるものだけでした。こればかりはちょっと残念と言わざるを得ません。

 

 

既存CGの再編集という意味では、結構攻めたCGを使っているシーンもあったので、そこは驚かされたポイントではありました。

 

基本方針として「乳首は隠す」というCGの微修正・拡大編集が多岐にわたってなされていたのですが、「乳首さえ見えなきゃいいんだろ!?」と言わんばかりの雨雀のCGの数々や、上述した冬史との個別エンディングにおいてHシーン前後で用いられたCGを駆使してのセミヌード画像などなど。CERO規制に抗いつつも移植前のお色気要素の片鱗だけでも見せつけてやりたい……そんな思惑を勝手ながら感じ取ってしまいました。

 

 

その他もろもろについて

Switch版に移植されるにあたって、とにかく文章やセリフの編集がいたるところで細かくなされていました。

 

以前別記事でも言いましたが、殊更に性的な表現はNGということだったらしいのです。

たとえば、以下のような変化が見つかりました。

 

・年齢表記はすべて削除。

⇒劇中に何度か、秋五が新聞の記事を読むシーンがあるので、原作ではそこで登場人物たちの年齢が明らかになるのだが、Switch版では年齢は意図的に隠されている。

 これは、秋五と由良が出会った年数と、新聞に表記される現時点での由良の年齢とを計算すると、由良が当時14歳以下であったことが簡単に計算できてしまうためだと思われる。

 たとえZ指定作品であっても、20歳前後の青年が未成年者と不純な関係にあったと明言することは避けるべき、というCERO側からの指示だろうか。現代劇ならともかく、昭和中期の日本における人間関係にまで現在の価値観で表現規制を敷くのはどうかと思うが……

 

・芹・小雪が新造として客を取っている下りが全カット。

⇒そのせいか、END5「襲撃者」に至るシーンにおいて、千里教の地下施設で芹・小雪が強制売春の被害にあっている下りがものすごいぼかされているのが気にかかりました。

 CGカット、セリフカットだけならまだしも、地の文を大量にカットしたうえに男のうめき声しか聞こえないんじゃ、「何が起こっているのか」想像するのは原作未読者ではかなり厳しかったのではないかと。

 

・初音ルートにおいて、初音が遊郭「雪白」の遊女になる日が近づいている、という下りが地の文やセリフのカットによってぼかされている

⇒PS2版と違ってSwitch版では雪白は「遊郭」で、そこで働く女性たちは「遊女」であると明言しているにもかかわらず、初音が「遊郭に上がる」ということが何を意味しているか自明であるにもかかわらず、それをぼかす意味とは……?

 

・END9「暗闇の光」に至るシーンにおいて、秋五が不良警官たちから散々な拷問・虐待を受ける下りの地の文が差し変わっている

⇒たとえば、原作だと「タバコの火を睾丸に押し付けた」という恐るべきシーンだったはずが「首筋に押し付けた」に変わっている、など。(それでも凶悪な拷問には違いないが)

 

・上野連続猟奇殺人事件の解決後、あらためて逗子に向かう列車内における秋五と和菜の会話において、秋五が由良と知己であったと説明するセリフの一部がカット

⇒由良と交際していたことを認めるくだりまではそのままだが、秋五がやけっぱちになって和菜から嫌われるために「オレは、お前の姉を、何度も抱いたんだ」と直接的な表現をする一連の下りがカットされている。

 結果としてSwitch版では「秋五と由良は恋人関係だった」ことまでは明言しているものの、実際にどんなやり取りがあったのか(肉体関係があったのか)について和菜は推察した、という表現で統一されている。

 

 

そのほかだと、物語上の整合性や画面の見やすさなどを整えるための修正というのも大量になされているようでした。

 

・時系列周りの細かな修正が至る場所で確認できた。

(例1)

たとえば、2月7日の秋五と和菜とがミルクホールで会話したあとの地の文において、由良と思しき女が葵町で目撃されたのは「一週間前」ではなく「二週間前」に修正。

(例2)

上野連続猟奇殺人事件の解決後、逗子から東京に戻ってきた直後に秋五は警察に連行されたが、その様子を報じた新聞が「2月18日朝刊」ではなく「2月19日朝刊」に書き換わっていた。確かに、秋五が2月18日の夜に逗子から東京に戻ってきてそのまま警察に連行されたなら、その様子を最速で報じることができるのは翌日である「2月19日朝刊」のはず。

(例3)

秋五の部屋に匿った時子を冬史が尋問する際、死の腕の幹部の情婦・雹と思しき女が逃げ出した時期が「二週間前」と明言するセリフがまるまるカットされた。

尋問が行われたのは2月22日。二週間前ということは2月8日。しかし、実際に雹が行方をくらましたのは「2月8日の二週間前」であるはずなので、尋問の時点から数えると四週間前というのが正しい。セリフの再録をせず、周辺台詞をカットすることで整合性をとったらしい。

(例4)

千里教にまつわる事件の【黒幕】が由良を世話していたと秋五に説明する際のセリフが「二年間」ではなく「三年間」に変わっていた。

Switch版において、基本的に女性陣セリフの追加・修正はなかったと認識している。既存のセリフをカットしたり順番を入れ替えたりすることはあっても新録はない――はずである。(ごく一部、秋五のセリフが新録されたかも、という部分はあるにはあったが)

しかし、ここでの【黒幕】のセリフの話口調は聞き覚えがないのも事実。明らかにFHDリメイク版にも原作にもなかった音声なのである。もしやPS2版の音声か、とも思ったが、それも違うらしい。だとすると、別のシーンから「さん」という発音のセリフを探しだし、違和感がないように音声を切り張りをした、ということなのか……?

⇒実はこの「黒幕が由良を世話していた期間」については、10年前に阿久井がしたためた別記事 においてもかなり細かく検証した部分だったので、この修正が加わったのは実に興味深い変化である。これで由良の過去にまつわる時系列の整合性が取れるようになった。

 

・立ち絵を引きで表示するのではなく、顔面をズームアップするシーンが増やされていた。

⇒会話中の位置関係の都合から、明らかに相手が秋五と顔を近づけていた場合にズームアップに直されるのはもとより、登場人物からの「圧力」を感じさせるための演出として、ズームアップ表示に直されたと思われるシーンも散見されました。

 たとえば、千里教の入信者に成りすまして「宣託の巫女」に話を聞こうとした秋五に対して、時子が警告のセリフを発するするシーンなど。

 

・基本的に夜の屋内のシーンは「明かり一つない真っ暗な部屋」ではなく「窓の外から街灯か月明かりが差し込んでいる部屋」であるとしてCGの光量が修正されている

⇒FHDリメイク版で地味に気になっていた部分で、真っ暗な部屋で登場人物たちが会話すると立ち絵も含めて薄暗い配色になっており、そんなシーンが少なからずあったので画面が見づらく感じていたのだが、Switch版では暗い部屋での立ち絵は光量が絶妙に調整されていて見づらさは感じなかった。

 

 

――総じて、ただ漫然とSwitch版へと移植するのではなく、シナリオの整理を含めて徹底的にやってやる、という強い意気込みを感じる修正の数々で、非常に驚かされた。

原作を何度も読んでいる自分ですら見落としていたような部分にまで修正が入るとは、凄まじい仕事量だったろうに……その熱意には文句なしに敬意を表したいと思う。

 

 

まとめ

原作が発売された2005年当時には、まさかゲーム機器がここまでの進化を遂げるとは想像もしていなかったし、まさか「カルタグラ」を手元で読めるようになるとも思ってはいなかったが、コンシューマ移植作品としてはかなり上等な出来栄えになっているように思えた。

 

驚かされたのは、原作18禁版におけるエログロシーンのうち「グロ」の要素については微修正にとどまるだけで、大筋そのまま採用しているシーンがほとんどだったことだろうか。例の鉄柵のシーンとか、PS2版では画角カットで首から上は見えないように修正されていたものだが、Switch版では目元にうっすらと影が差していることにして画像自体はそのまま使っていて、依然として痛々しいのなんのって……恐れ入りましたよ。

 

Switch版ではほぼすべてのエロ要素は排除されており、あったとしてもお色気描写にとどまっているので、ミステリのシナリオだけを楽しめればよいという人にとっては充分な内容になっていたのではないかと。

 

とはいえ、会話の流れから「あ、このあとHシーンに入るんだな?」という直前でシーン暗転・切り替えがたびたび差し挟まれるので、そこで何があったのか気になるという場合には、やはりFHDリメイク版を読むことをお勧めすることになるだろう。

(非常にエロティックなCGの数々に驚くことになるかもしれないが、それも「カルタグラ」の魅力の一つでもあるわけなので、気になるならば是非に)

 

 

はてさて、これにて「カルタグラ」は本当の本当に物語の終焉を迎えてしまったのかもしれないと考えると、やはり一抹の寂しさはぬぐえないものがある。

降ってわいたような移植話で、1年近く楽しみに過ごさせてもらったが、なんやかんやSwitch版を通して改めて「カルタグラ」の魅力を再確認できた2か月間だったように思う。

 

イノセントグレイでは現在、「カルタグラ」のトゥルーエンド後の時系列にて、別主人公・時坂玲人を据えた「カラノショウジョシリーズ」3部作のセット販売に向けていろいろと準備していると報じられている。

併せて、何か最新作の開発も並行しているということらしいので、そちらについても気長に待つことにしたい。

 

 

ーー追伸

Switch版「カルタグラ」の初回限定版付属冊子「雪中花」についてだが、描かれているのはEND18「海の光」(由良エンド)の後日談になっている。

これらはイノグレ作品群からすると正史ではなくif展開の後日談にはなってしまうが、あの後どうなったのかを知ることのできる唯一無二の作品であるので、気になるならばなんとかして初回限定版を手に入れてほしいところである。

 

カルタグラ(Nintendo Switch版) その1

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・前置き

ついにこの日がやってまいりました……

 

カルタグラ(Nintendo Switch版)

本日(2026年2月5日)堂々の発売です!!!

 

当初は2025年12月に発売予定だったものが、諸般の事情により販売延期になった時にはどうなることかと思いましたが、

すでに店頭にも商品が並んでいることを確認でき、ようやく一安心できました。

 

帰宅後、amazonからの荷物が郵便受けにぎゅうぎゅう詰めになっているのを見たときにはどうしたもんかと思いましたけれども、中身が傷ついていなかったのは何よりでした。

 

さっそくゲーム本編を進めようかとも思いましたが、やはり今回の一番の目玉と言ってもいいのは、初回限定版に付属されている冊子(および付属小説)ではないでしょうか。

 

・初回限定版付属冊子「雪中花」について

公式ホームページにて「書き下ろしアフターストーリー&アートブック(B5サイズ)」と告知されていた冊子となります。

 

前半1~45Pがこれまで発表されてきたカルタグラに関連する新旧イラストの数々が掲載され、

後半46~59Pが書き下ろし小説「孤独の月」(見開き挿絵:杉菜水姫氏、小説執筆:鈴鹿美弥氏)という構成となっています。

 

新旧イラストといっても、原作2005年発売のPC版の頃のイラストがそのまま載っているわけではなく、2023年のFHDリメイク版発売にあわせて原作関連イラストを現在の筆致にリファインしたものが載っています。

その他は、2023年の画展「白夜」で初めて発表されたイラスト数点と、今回のSwitch版発売を受けて杉菜氏がtwitter(現X)で発表していた描きおろしイラスト数点などが掲載されていて、視覚的にも豪華な仕上がりになっています。

 

アートブックだけでも一見の価値があるというのに、後半には書き下ろし小説までついてくるのですから、まったくもってファン泣かせのアイテムです。

 

ただ……この小説「孤独の月」の内容を詳しく語ってしまうとネタバレもいいところですので、一定期間が経つまでは詳しくは触れないでおこうと思います。

 

内容の概要だけ搔い摘んで述べるとするならば、ゲーム中に到達できる「とあるエンディング」の後日談が、とある2人の視点で交互に描かれています。

(見開きイラストで描かれている人物と、帰ってきた「彼女」の物語--とだけ言っておきましょう)

 

おそらく、2023年FHDリメイク版を読んだ多くのプレイヤーが気になっていたであろうエンディングの続きが読めるのですから、まさしく必見の内容と言ってよいでしょう。

 

ただし、この物語は数あるイノグレ作品群の正史から見てIFストーリーに該当するものですので、その点は注意が必要です。

以前、このブログで阿久井が想像していたような、「カルタグラ」本編のあとの出来事、すなわち同じ世界線の関連作品である「殻ノ少女」の物語が始まるまでに起こった出来事が描かれているわけではありませんでした。まあ、このあたりはどっちが良かったとは言い難く、甲乙つけがたくはあります。

 

 

・ゲーム本編について

本作はもともと18禁アドベンチャーゲームであり、2005年発売の原作も、2023年発売のFHDリメイク版も、当然のことながらエログロ要素満載の物語でした。

 

それがニンテンドースイッチへとコンシューマー移植されるにあたり、Z指定(18歳未満購入不可)を食らってしまったのは、まあ仕方のないことだったと言うほかありません。

 

とはいえ、カルタグラは一度、2005年12月にPS2版へと移植されたことがあります。その際にはD指定だったことを考えると、今回はなぜZ指定になったのか、その理由は気になっていました。

 

まだゲーム本編の2割程度の部分までしか読み進められていませんが、これらの視点も含めて、以下に現時点での所感を書き残しておこうと思います。

 

・オープニングの演出の違いについて

先ほどちょろっと述べましたが、「カルタグラ」という作品は今回発売されたものも含めると、大きく分けて4つの版が存在しており、それぞれ物語の始まりの演出が毎回異なっています。

 

・2005年4月PC版「カルタグラ~ツキ狂イノ病~」

⇒とある女が、山中でとある女を埋めるシーン

⇒「ああ、雪が降っていたのね」

⇒オープニングムービー1(使用曲は「恋獄」)

⇒本編開始

 

・2005年12月PS2版「カルタグラ~魂ノ苦悩~」

⇒とある女が、山中でとある女を埋めるシーン

⇒「ああ、雪が降っていたのね」

⇒オープニングムービー2(使用曲は「LUNA」)

⇒本編開始

 

・2023年4月PC版「カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》」

⇒上月由良による独白「sea of solitude」

⇒「そして、私はあの方と出逢うーー」

⇒オープニングムービー3(使用曲は「孤独の海」)

⇒とある女が、山中でとある女を埋めるシーン

⇒「ああ、雪が降っていたのね」

⇒「ただ、待ち続けるーー」からなる一篇の詩

⇒本編開始

⇒本編のEND12「グランドエピローグ」到達後、「サクラメント編」開始直前

⇒オープニングムービー4(使用曲は「恋獄(2023年リメイク版)」)

 

・2026年2月Nintendo Switch版「カルタグラ

⇒とある女が、山中でとある女を埋めるシーン

⇒「ああ、雪が降っていたのね」

⇒「ただ、待ち続けるーー」からなる一篇の詩

⇒本編開始

⇒上野公園にて5人目の犠牲者の遺体発見

⇒高城秋五、上野弁天堂にて殺人事件を調べることを宣言

⇒オープニングムービー5(使用曲は「恋獄(2023年リメイク版)」)

 

 

――というように今回は、ゲーム本編がはじまってもなかなかオープニングムービーが流れないので「???」と思っていたのですが、まあ物語の冒頭ではないのだとしたら、この物語においてあまりにも象徴的な「あの遺体」を発見した直後あたりにムービーが流れるのだろうと予想していました。

結果は当たらずとも遠からず、といったところでした。

 

とはいえ、今回が初見のプレイヤーからすると、物語を読み始めておよそ1~2時間経ってからようやくオープニングムービーを対面することになったでしょうから、「だいぶ遅いオープニングだな?」と思った方もいるかもしれません。

 

しかし、ここから物語が一気に苛烈になっていくことを想えば、確かにここを区切りとしてオープニングムービーを差し挟んでも違和感はありませんでした。このあたりは演出の妙でしょうね。

 

・PC版との文章・セリフの差異について

先ほども述べた通り、まだ本編の2割程度しか読み進めていない時点での所感なので、後日ぜんぜん違った意見を述べているかもしれませんが、悪しからず。

 

とりあえず、2023年FHDリメイク版にてようやっと追加された凛との個別エンディングまでは読み進めましたので、そこまでを基準として記録を残します。

 

まず、基本的にはほとんどの文章・ボイスはFHDリメイク版のまま変わっていません。

 

しかし、殊更に性的な内容は、地の文・セリフともにカットされていました。

 

~例1~

上野連続猟奇殺人事件における被害者たちの遺体の特徴として、遺体に噛み跡が残っている=食べられていることまでは述べているが、「性器」が欠損している説明はカット

⇒のちに、犠牲者の一人の遺体が犯人の根城で見つかった際にも、下腹部が切開されているであろう様子がスチルに映り込みつつも、腰から下(つまり股座より下)の部分は画面が暗くされていてはっきりとは見えないよう修正されていました。

 

~例2~

上野公園で5人目の犠牲者が発見されたあと初登場する八木沼刑事による、人格を疑うほど品のない発言の全カット

⇒遺体を前にして「いや本当に勿体ないよ」と言って笑う、あまりに不遜な態度を秋五に窘められた際に「はあ、勘弁してよ。どうして僕が、あんな淫売なんかのために?」という下りまでは描写が残っていました。

 「あの下品極まりない発言がなければ八木沼らしくない!」とまでは言いませんが、八木沼がいけ好かない男であるというインパクトは弱まりましたね。

 

・PC版とのイラストの差異について

これは本当に驚いたんですけれども、「グロ」描写に関してはPC版から大きな差異はないんですよ。それこそ、Z指定されても仕方がないくらい痛々しいイラストが描かれます。

 

~例1~

5人目の犠牲者が犯人に拷問された末に殺害されるシーン。

目玉をキリで繰りぬかれるという描写も、ほぼそのまま描かれています。(PC版では、犠牲者の目をこじ開けた際に目玉が若干飛び出ていましたが、さすがにswitch版では目玉は眼窩の奥に収まったままの状態として描かれていました)

 

~例2~

上野公園で発見された5人目のバラバラ遺体は、ほぼPC版と同様にイラストが表示されました。細かな点としては、次のような描写の違いが見受けられました。

・PC版……遺体の切断面(肉や骨)が丸見えで、血肉が赤黒く痛々しく描かれており、よりおぞましい印象を受けました。

・switch版……遺体は全体的に薄い雪で白く覆われていて、特に遺体の切断面がはっきりとは見えないように工夫されていました。それでも、グロいことはグロいです。

まあ、遺体が長い時間、雪の降る野外に放置されていたことを考えると、switch版の描写の方がリアリティがあると言っても差し支えない程度の修正と言えるのではないでしょうか。

 

~例3~

2023年FHDリメイク版で追加されたシーンとして、犯人の根城にて、ある人物が片目を無理やりえぐり取られるという展開がありましたが、なんとこのシーンもほぼそのまま当時のイラストが表示されてました。

ただし、抜き取られた目玉自体が画面に映り込むことは避けたかったのか、その部分だけはイラストの拡大表示修正によって映り込まないよう修正されていました。

 

 

――とはいえ、差異が少なかったのはあくまで18禁版のエログロ描写における「グロ」の部分であり、「エロ」の部分は大半がカットされています。

 

特に、コンシューマーゲームでは「たとえZ指定だろうと乳首が映り込んだらいけない」という縛りでもあるのか、PC版イラストで女性の乳首がチラ見えしていた場面ですら、徹底的に乳首が見えないようにイラストが微修正されていました。まあ、このあたりはPS2版でD指定を食らった時と同じですね。

 

そのほかですと、例えばこんな違いがありましたね。

・七七が初登場した際の「自発的パンチラ」シーンは、ウィンクのみに修正。

⇒これについては、七七という人物の異常性を象徴するシーンの一つだったので、Z指定なら残してもよかったんじゃないかとも思いましたが、やはり実妹が兄を性的に誘惑する(と解釈されうる)シーンを残すのはコンシューマー作品的にはZ指定でもアウトだったんでしょうね。

 

・秋五の回想シーンにおいて、PC版では由良との情事を描いていたシーンが、それを匂わせる描写にカット・短縮されていた。

⇒由良が秋五に対してディープキスしているんだろうけど、本番行為があるとまでは断定できない描写。しかも、由良の服装はセーラー服ではなく、自室に幽閉されていた時のものに変更されていました。

 PS2版においてこの部分は、まるまるシーンの差し替えがあったことを考えると、ずいぶん思い切ったことをしたな、と感じました。まあ、switch版の描写は明確にやってる描写にはなっていないし、許容されるだろう、という判断だったんでしょうか……?

 

遊郭「雪白」の秋五の自室における凛とのやり取りをカットすることで、本番行為があっただろうことを「匂わせる」に留める描写になった。

⇒事後に秋五の部屋を訪れた初音が「廊下の向こう側まで聞こえていた」と怒っているので、イチャツキじゃすまないような何かはあったのだと察せられますよね。

 

※ちなみに、イノセントグレイのデビュー作でもある「カルタグラ」は、「エロ」描写にもかなり力を入れていた作品でしたので、描写がカットされた部分が気になるのであれば、18禁イラストの美しさを体感するためにPC版を読んでみるのも一興かもしれません。

 

 

・描き下ろしイラストについて

⇒これについては、まだswithc版の全貌をプレイしたわけではないので断定的なことはまだ言えないんですけれども、「おそらくこうなのでは?」と推察することはできます。

 

現時点では、2023年FHDリメイク版で追加されたEND4「凛の幸せ」までを閲覧しましたが、当然ここでもエロ描写はカットされています。

しかし、本番行為に移行する前の睦言の段階で、杉菜水姫氏による描きおろしイラストが1枚表示されました。

 

このことから察するにおそらくは、このあともHシーンそのものについては全編カットするものの、その周辺のやり取りのシーンにおいて描き下ろしイラストを追加することで、描写の物足りなさをカバーする方針なのではないか……? と思われるのです。

 

現時点においては、PS2版で見られたように「Hシーンがあった箇所を別の撮りおろしシーンに差し替える」ということはまだ確認されていませんので、おそらくシナリオの追加という意味でのイラスト追加はないのではないかと推察されます。非常に残念なことではありますが……

 

 

・あとがき

はてさて、まだまだいろいろと言いたいこと・書きたいこともあるのですが、ブログを書いているとゲームをやる時間が減ってしまうため、とりあえず今回はこの辺で記録を終えたいと思います。

 

また近々、進捗に応じてメモ感覚で記録を述べていこうと思いますので、ご興味があればお付き合いくださいませ。

カルタグラ Nintendo Switch版 発売延期&新OP公開!

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

長らくブログの更新を怠っとりましたが、年の瀬も近づいてきたということで久しぶりに情報をまとめさせていただきたく。

 

・発売日延期のお知らせ(泣)

まず非常に残念なことに、ニンテンドースイッチ版「カルタグラ」の発売日が

諸般の事情により2025年12月25日から延期になってしまいました。

 

 

カルタグラ」の新発売日は年明け、2026年2月5日(木)となります!!!

 

ちなみにこの日付を見たとき、個人的にも「うん?」と思ったんですが、

延期発表からすかさず原画担当の杉菜水姫氏がぽろっと次のようにこぼしておりまして。

 

 

そうなんですよ。

カルタグラの舞台設定って、昭和26年(1951年)の2月6日から主人公・高城秋五の視点で物語が始まるんですよ!

 

劇中では雪深い東京は上野の街を舞台として愛憎ひしめく事件の渦中へと巻き込まれていくことになるわけですが、

実際の暦や空気感に近いなかで物語を読み進めるのも趣があって大変結構なのではないでしょうか!?!?

 

 

・新オープニングムービー公開!!

これ実は地味に気になっていた問題ではあったんですよね。

カルタグラ」はこれまで、2005年4月発売の原作を含めて3つの版が存在するわけですが、いずれもオープニングムービーが新録されているという特徴があるのですよ。

 

いずれの版での歌曲は霜月はるか氏が担当しているものの、曲も違えばムービー自体もまったく異なる内容になっている。

しかし、どのオープニングムービーも作中の寂しげで、それでいて激しい感情を秘めた雰囲気を余すところなく表現しており、大変美しい出来栄えになっています。

 

いずれもyoutubeで見れると思いますので、見比べてみるのも一興ではないでしょうか?

 

www.youtube.com

 

<<カルタグラ歴代テーマ曲>>

・2005年4月:「カルタグラ~ツキ狂イノ病~」

 ⇒ オープニング曲「恋獄」 ……3拍子の名曲。アコーディオンの音色が最高。

 ⇒ エンディング曲「久遠…」 ……これは歌曲ではなく、BGMのみ。

 

・2005年12月:「カルタグラ~魂ノ苦悩~」

 ⇒ オープニング曲「LUNA」 ……非常に珍しい5拍子の歌曲!!

 ⇒ エンディング曲「恋獄」

 

・2023年4月:「カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》」 (FHDリメイク版)

 ⇒ 第1オープニング曲「孤独の海」 ……4拍子の歌曲だが、これも深い情念を感じる。

 ⇒第2オープニング曲「恋獄」(2023年リメイク) ……コーラスがいいアクセントに!

 ⇒エンディング曲はルートによって「孤独の海」、「恋獄」(2023年リメイク)、「LUNA」(2023年リメイク)が使い分けられている。

 

・2026年2月:ニンテンドースイッチ版「カルタグラ

 ⇒オープニング曲「恋獄」(2023年リメイク)

 ⇒現時点では第2オープニング曲は未発表。エンディング曲も未発表。

 

 

……はい、というようにですね、何とあの名曲「恋獄」がカルタグラのオープニング曲として再び採用されたわけなんですよね!!

 

しかもこのオープニングムービー、何が凄いかって言うと原作カルタグラのオープニングムービーと8割近く同じ構図・演出で展開させているんですよ!!

 

もちろん使われているキャラ絵、スチルは2023年FHDリメイク版の画像が使われていて、演出面でもいろいろとパワーアップしているのですが、この新旧比較が20年の月日を感じさせてちょっと感涙してしまいそうになるんですよね……

ここまでイノセントグレイ作品を追い続けてきて本当に良かったと思わずにはいられません。

 

余力がある人は、ぜひとも過去の「カルタグラ」のオープニングムービーも見てほしいものですね。私は当時、あまりの美しさに心をわしづかみされて、軽く100回以上はリピート再生してましたからね。

イラストの美麗さと、「恋獄」の持つ狂おしいほどの愛執が絶妙にマッチしていて本当にたまらんのですよ……

 

「この身体滅ぶまで、貴方を求め続けるでしょう」

 

言われてみてえっすよそんなセリフ!

誰かに対して思ってみてえわこんなセリフ!

 

 

<<余談1>>

実は私はPS2カルタグラからイノセントグレイの作品を鑑賞しだしたためか、オープニングムービーの歌曲としての「恋獄」も、エンディングムービーの歌曲としての「恋獄」もどちらも素晴らしいと思っていて、いや本当にあの曲って物語の始まりを印象付けるにも物語の終わりの余韻を残すのにもぴったりで心底神曲だと思うんですよね!!(オタク特有の早口)

 

 

<<余談2>>

ちなみにPS2版で登場した「LUNA]に関しては、当時ゲームを発売していたKID社が後年倒産したことをきっかけに歌曲の権利関係が複雑になってしまったのか、5年くらいオープニングムービー用のショートバージョンしか発表されていない状態が続いたこともありました。

 

カルタグラはその後、2007年4月にファンディスク「和み匣」に収録された「サクラメント」編という後日談・完結編が描かれていますが、その際にはクラシックアレンジされた「LUNA」(5拍子から3拍子へと変更)がテーマ曲として発表され、このとき初めてフル版の歌詞が公開されました。

 

原曲よりもリメイク曲のほうで初めて曲の全貌が分かるという、ちょっと不思議な経緯をたどった曲ではありましたが、2011年に発売されたイノセントグレイ×霜月はるか氏のベストアルバム「トロイメライ」によってはじめて「LUNA」のフルバージョンが発表されました。実に6年もの月日がかかったわけですね。

⇒ Innocent Greyベストアルバム トロイメライ

 

 

 

はてさて、思い出に浸りながらオープニングムービーに関する話題だけでアレコレわーきゃー騒いでしまいました。

 

とりあえず2026年2月までは何があっても生き延びなきゃならないことが確定しているので、辛い人生がまだまだ続きますけれども、やるだけやってみようかと思います。

 

また何かしら追加情報がありましたらツイッター(現X)またはブログにて更新していきたいと思ってますので、

ご興味があればご高覧いただければと。

 

カルタグラ Nintendo Switch版 発売日決定!!

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり**~

 

・発売日決定の祝い

イノセントグレイのデビュー作にしてミステリーADVの金字塔「カルタグラ」が、

まさかのニンテンドースイッチ移植版の発売が発表されてから早半年が経ちました。

 

あまりに続報がなく、年内発売と言っていたのに予定が延期になったのかとあきらめかけていましたが、ついについに、発売日が発表されました。

 

2025年12月25日(木)、Nintendo Switch版「カルタグラ」発売決定!!!

 

 

 

いやはや、めでたい! 実にめでたい!!

 

原作の「カルタグラ ~ツキ狂イノ病」がPC向け18禁アドベンチャーゲームとして発売されたのが2005年4月28日、

内容の一部を差し替えた全年齢PS2版「カルタグラ~魂ノ苦悩」が発売されたのは2005年12月15日、

そして18禁版カルタグラのシナリオ増強およびFHDリメイク版が発売されたのが2023年4月28日のことでした。

 

およそ20年という長き時を超えて、

「カルタグラ」は再び全年齢版へと様相を変え、皆々様の元へとお目見えいたします!!

 

これが喜ばずにいられますか!

 

まだイノセントグレイの公式発表も、移植先企業であるプロトタイプ社の公式ホームページにもほとんど情報が掲載されていませんが、

twitter(現X)および各社ゲーム情報誌からの発表ですので、確定情報といってよいでしょう

 

※2025/9/24更新

 朝8時ごろにプロトタイプ社の公式ホームページが更新されました。

 amazonで商品を予約すると、パッケージイラストのクリアファイルが店舗購入特典が付くようですね。

 イノセントグレイは長らく店舗購入特典を導入せず、公式通販で一定金額以上の買い物をしたときのみ時期ごとの特典品をつける試みをしていましたが、

 記憶が正しければおそらくイノグレ関連作品としては「和み匣」以来の店舗購入特典ではないでしょうか。

 

www.prot.co.jp

 

 

・現在発表されているNintendo Switch版の新要素

しかもですよ?

web版ファミ通の記事には見逃せない文言がいくつも報道されています。

 

 

Switch版では、原画を手がける杉菜水姫氏により新たに描き下ろされたイベントCGの追加やフルHDの対応が行われているほか、初回限定版では後日談『サクラメント』の更に先の物語が楽しめる“書き下ろしアフターストーリー”が同梱となる。

 

パッケージ通常版 希望小売価格 7,920円(税込)、

パッケージ初回限定版 希望小売価格 13,200円(税込)、

ダウンロード版 販売価格 6,800円(税込)

 

「パッケージ初回限定版」につきまして
通常版ゲームパッケージと共に、以下のスペシャルアイテムを収めた特装ボックス仕様です。
  • A5アクリルパネル
  • クリアカード(100×148mm)8枚セット
  • 書き下ろしアフターストーリー&アートブック(B5サイズ)
「A5アクリルパネル」は、Nintendo Switch版用に新たに描き下ろされたメインビジュアルを使用。
「書き下ろしアフターストーリー」は、後日談「サクラメント」の更に先の物語が綴られます。

※初回限定版は無くなり次第、販売終了となります。

www.famitsu.com

 

なんとなんと、ゲーム本編のアフターストーリーが描かれた短編小説が付いてきてしまうのです!!

 

なんと素晴らしいことでしょうか!

 

 

・過去作で描かれた内容との比較

イノセントグレイはこの数年かけて、「カルタグラ」と同じ世界線である昭和中期の日本を描いた18禁アドベンチャーゲームをリメイク作を含めていくつも発表してきました。

 

殻ノ少女《 FULL VOICE HD SIZE EDITION 》2019年12月20日発売

虚ノ少女 《 NEW CAST REMASTER EDITION 》 2020年8月28日発売

天ノ少女《PREMIUM EDITION》 2020年12月25日発売

カルタグラ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》2023年4月28日発売

 

※物語上の時系列でいうと以下の通り。

  カルタグラ=1951年(昭和26年) ……主人公:高城秋五

 ⇒殻ノ少女=1956年(昭和31年)  ……主人公:時坂玲人

 ⇒虚ノ少女=1957年(昭和32年)  ……主人公:時坂玲人&真崎智之

 ⇒天ノ少女=1958年(昭和33年)~1964年(昭和39年)  ……主人公:時坂玲人

 

 

これらの作品は、いずれもパッケージに短編小説数十ページ分が付録としてついており、どれも本編で描かれなかった幕間の物語を補完する必見の内容になっていました。

 

しかし、カルタグラFHDリメイク版で付属していた小説はカルタグラの舞台よりもさらに数年前である1946年(昭和21年)を描いた内容となっており、

カルタグラのあとから殻ノ少女の物語に続くまでの間に、全く描かれていない空白の数年間が存在するのです。

 

原作カルタグラが発売してから数年後、ファンディスク「和み匣」というオムニバス形式のアドベンチャーゲームが発売されましたが、

そこに収録された「サクラメント」というやや短めな物語がカルタグラの続編および完結編として描かれていました。

 

2023年発売のカルタグラFHDリメイク版は、原作の「カルタグラ」に「サクラメント」の内容を付け足した完全版となっており、

カルタグラ本編をクリアするとそのまま後日談に当たるサクラメント編を読むことができました。

 

ただ、サクラメント編で描かれている物語は、トゥルーエンドの場合であっても1952年(昭和27年)12月から1955年(昭和30年)までの間であり、

「殻ノ少女」の物語が始まる1956年(昭和31年)までの間にまだ空白の1年間が存在していました。

 

 

これまでどの媒体であっても、この間に起きた出来事が語られたことはありません。

 

 

しかし!!

Nintendo Switch版カルタグラの初回限定版を買えば!!!

描かれていなかった時期に秋五たちの身に何があったのかが垣間見れる可能性が高い!!!!

すごすぎる!!!!!

 

過去3回の画展における公式図録の付録小説ですら描かれていなかった時期のことが、ついに知ることができるとは、何たる僥倖!!

 

巷では探偵としての能力に欠けるだの、活躍の場をド変態妹にかっさらわれただの、発展家だのすけこましだの人でなしだのとアレコレ言われることもある高城秋五さんですけれどもね!?

 

彼がその後、どのような愛を育んでいったのかを見られる機会があるというのなら、絶対に見逃すわけにはいかないんですよ!!!!!

 

それがこの物語のヒロインに対する最大限の礼儀にもなるから!!!!!

 

 

・全年齢版移植は単なる劣化対応ではなく、補完対応である!(※2026/4/19一部追記)

しかも本作は18禁作品から全年齢作品に移植されるにあたって、原画家である杉菜水姫氏の描きおろしイラストが追加されるというじゃないですか!!!

 

これは、どうしても18禁版カルタグラおよびサクラメントにあったエログロなシーンを全年齢版でそのまま描くわけにはいかないので、

 

・ヒロインとのHシーン ⇒ 誰かの回想シーンや会話シーンへの置き換え

・殺害シーンやグロイ遺体のシーン ⇒ 残虐すぎる部分は画角を工夫するなどして見えないようにカット

・露骨に性的・暴力的なセリフ ⇒ 穏当なセリフに収録しなおすか、セリフの一部分をカット

 (具体例:女郎 ⇒ 夜の蝶、拷問 ⇒ 単語をカット、食人描写 ⇒ 仄めかすにとどめる)

 

ーーといった対処がPS2版カルタグラにおいては取られていました。

 

 

これら対処によって元のシナリオから若干の余白が生まれたことにより、

その穴を埋めるためにPS2版カルタグラでは原作カルタグラで語られていなかった物語の補完がなされたり、

原作カルタグラには存在しなかった個別キャラクターとのエンディングも増えていたりしたので、

悪いことばかりではありませんでした。

 

しかしPS2版カルタグラについては追加イラストの担当者が杉菜水姫氏ご本人ではなかったため、

どうしても若干そのほかのスチル絵とくらべると場面が浮いて見えてしまうという如何ともしがたい弱点がありました。

 

 

それが今回はどういうことでしょう。

Nintendo Switch版カルタグラにおいては、杉菜水姫氏ご本人の美麗なタッチのイラストで、新規シーンが描かれることになるわけですよ!!!

 

いやこれもう、単なる全年齢移植にとどまらないですよ!?

ストーリーが増強されたFHDリメイク版カルタグラを、さらにストーリー補強するって言っているのに等しいわけです。

 

完全版だったカルタグラFHDリメイク版を、究極完全版にしようとしていると言っても過言ではない!!!!

 

もちろん、18禁作品だからこそ描ける大人チックでエッッッッッなシーンや、身も心も削り取るような残酷なシーンだって作品の魅力なわけで、

それらが削られた全年齢版を不完全と評する向きもなくはないですが、

そんなもん18禁版と全年齢版どっちもやって、頭の中でストーリーを補完し合えばそれでいいじゃあないですか!!!

 

全年齢版で興味を持ったあと、18禁版がプレイできる年齢まで待ってプレイしたっていいじゃあないですか!!!

 

こちとらイノセントグレイ作品のストーリーテーリングに心惹かれて20年ファンをやっているわけで、

新たなストーリーが公開されるってだけでもはやご褒美以外の何物でもないんですよ!!!!!

 

今から楽しみすぎて絶対に死ねない!!

何があっても生きる!!

 

※2026/4/19追記

 詳しくは別記事記載の通りですが、残念ながら新規描きおろしイラストはあっても、PS2版のようにシーンが追加されるといった対応はありませんでした。

 なので本作は、あくまで「往年の名作サスペンスである『カルタグラ』のシナリオの大部分がNintendo Switchでも読める」ということに主だった価値を見出すことになりますね。

 元が18禁PCゲームであることを考えれば、魅力あるシナリオ部分だけでも間口を広げて体験してもらうことには、充分意義があることだとは思います。

 --ただまあ、PS2版から「カルタグラ」を読み始めた私としては、やっぱり今作でも追加シーンは欲しかったところなので、そこだけは残念ではありますが……

 

・余談1

ちなみにですが、現在判明しているNintendo Switch版カルタグラにはイノグレ作品でよくある「副題」が付いていないことがめちゃくちゃ気になっています。

(※リンク先の一部18禁注意)

 

カルタグラ Nintendo Switch版パッケージ

 

18禁版カルタグラの副題は「ツキ狂イノ病」で「The sickness of possessory and crazy」、

PS2版カルタグラの副題は「魂ノ苦悩」で「The suffering of soul」。

※ちなみにカルタグラはかつて携帯電話版として物語を3分割した「カルタグラ 旋律ノ螺旋」というものが配信されていた時期もあります。

 

しかし今回のSwitch版では副題が表記されず、新規公開されたパッケージイラストのタイトルロゴには「an affliction of the soul, in which love twists into obsession and madness」という英文が記されていました。

※直訳すると「愛が執着と狂気に変わる魂の苦悩」

 

これは18禁版カルタグラのキャッチコピーである「それは、妄執と狂気に至る愛」と、カルタグラという言葉の本来の意味である「魂の苦悩」を掛け合わせた意味なのでしょう。

※PS2版カルタグラでは「狂気」というフレーズがセンシティブ判定される恐れがあったのか「それは、すべてを焼き尽くす妄執の愛」というキャッチコピーに差し替えられていました。

 それからするとSwitch版では英文とはいえ「狂気」=「madness」という単語をタイトルの説明文として使おうとしているわけですから、より原題に近しくて「crazy」よりかは語感が丸まってそうな表現にしようという工夫が見られますね。

 

 

まだ副題が発表されていないだけか、それとも「殻ノ少女」シリーズに合わせて副題を付けない方針に切り替えたのか、どっちなんでしょうね……?

 

 

・余談2

いにしえのイノグレファンの中には、PS2版カルタグラの存在を覚えていて、かつ2023年発売のカルタグラFHDリメイク版を未プレイという方も少なからずいらっしゃるようで。

 

過去のブログ記事でも何度か触れていますが、改めて明記いたします。

 

カルタグラFHDリメイク版には、全年齢PS2版カルタグラにおける追加要素は一切反映されておりません!!

PS2版にのみ追加されているエピソードやら、追加エンディングのルートやらも、すべてFHDリメイク版には含まれていません!!

 

そして今回発表されたSwitch版のカルタグラは、FHDリメイク版を全年齢向けに一部表現を改変し、ところによりシーンが追加されることが明かされています。

これは原作カルタグラからPS2版カルタグラに移植されたときと同様に、原作のエログロシーンを排除する代わりに、新しいシーン(および描きおろしイラスト)が追加されることが示唆されています。

 

18禁描写の有無よりも、ストーリーの追加を重要視するファンにとっては、新しい物語が描かれることを喜ばしく思わずにはいられません。

 

 

 

はてさて、今回も語りたい欲求が大爆発してしまいました。

ひとまず初回限定版の予約が開始したら即座に注文して、今年のクリスマスはカルタグラでパーリナイしたいと思います。

 

※年末は仕事納めやらグラブルフェス2025やらコミケやらでクッソ忙しいんですが、そこはもう愛と根性でやってやりますよ……!!!

 

HUNDRED LINE -最終防衛学園- その3

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

hundred-line.com

 

●各ルートについて(続々)

・14:SF編2

「推理編」にてエンディング100に到達すると、「SF編」のシナリオロックが解除され、ようやく23日目以降の物語の続きを読むことができるようになります。

 

この「SF編」では、ほかのルートで説明されていなかった不可解な点がおおよそ解明する、いわば最後のルート分岐ということになっています。

 

このルートによって、澄野は雫原が自分と同じように別の100日間を経て過去に遡ってきたことを知るわけですが、雫原の身に起きている現象は、澄野の置かれている状況とは全く異なることが説明されます。

 

雫原の説明をまとめると、以下の通りになります。

・雫原はすでに146回もの時間遡行を繰り返しており、だいたいのルートにおいて100日間を過ごしているため、およそ40年近くもの間タイムループに囚われ続けている。

 

・タイムループは自らの意志で行っているのではなく、雫原が100日目を待たずに死亡するか、100日目の午前10時以降、つまり最終防衛学園から全方位ミサイルが発射されて地上の全生物が焼き尽くされる時間に到達すると、時刻に多少のズレはあっても、必ず2日目の夜間に意識が引き戻される。

 

・雫原自身がタイムループしていることに気づく時期にはタイムラインによってかなりのバラつきがある。過去のタイムリープのすべての記憶を、何十日もあとになって気が付くこともある。

 

・過去の経験則によると、雫原自身が特防隊の仲間たちにタイムループの事実を話すと、例外なく悲劇的な結末を迎える。

 

・何十回目かのタイムループを経て雫原は山中で謎の老人と出会い、謎のラボにある「パラレリープ装置」なるものを発見する。操作方法を突き止めるまでさらに幾度となくタイムループを経たが、この装置を使えば、別の世界線=タイムラインにおける同じ日の同じ時間に空間転移=パラレリープすることができる。移動できるのはあくまで別世界線のパラレリープ装置への平行移動だけであり、特定の場所を指定することも、過去や未来に移動することもできない。

 

・ただし、パラレリープするためには惑星フトゥールムを覆っているブラッドスペース(=異血の魔力的なエネルギーが満ち溢れている亜空間)の波形が適切なタイミングでなければならず、その時期はタブレット端末による計測によって予定を確認するしかない。つまり、任意のタイミングでパラレリープできるわけではない。

 

 

ーーここまでの説明を聞いても、澄野としては腹落ちしない点がありました。

なぜなら、澄野の認識としては今自分がいるSFタイムラインはあくまで「2週目」の世界だからです。しかも雫原と違って強制的に時間遡行に巻き込まれている認識はなく、自らの能力によって記憶を過去の自分に転送してきていると思っています。

 

ただ実際には、このルートにおいて澄野は別のタイムラインでの出来事を次から次へと徐々に思い出していくことになります。それらは雫原にとっては既に体験してきた出来事であり、やはり澄野もすでに何回もタイムループを繰り返していると納得せざるを得なくなります。

 

雫原はこの無間地獄とも呼べるタイムループから逃れる手段を探し続けていますが、一向に解決の予兆も見えないまま、時の牢獄に囚われ続けていました。

 

しかし、このSF編では澄野が「蒼月を拘留する」「タイムリープの事実を話さない」という選択をしたことがきっかけとなり、特防隊の仲間たちが全員生き残っている状態が続いていきます。このことは雫原にとっても、ほかのさまざまなルートを経験してきたプレイヤーたちにとっても唯一無二の事態であり、これを指して雫原は「奇跡」であると評しています。

 

この奇跡的な積み重ねの先に、もしかしたらタイムループを脱出できる手掛かりがあるかもしれない。澄野と雫原は仲間たち全員を守りながら、タイムループの謎を解き明かすことを目指していきます。

 

その最中、雫原は他のタイムラインで起きるであろう悲劇を未然に防ぐため、澄野と共に数々のタイムラインへとパラレリープを繰り返し、別世界の澄野たちの行動に干渉をし続けることになります。

 

このパラレリープに使う防護服こそ、ほかのルートでは不審者だったり殺人鬼だったりデスゲームの主催者だったりが着ていた、例の真っ黒な防護服です。澄野は他のタイムラインにおいて、この防護服を着た人物の姿を見る機会がありましたが、それらはだいたいにおいて、SFタイムラインから一時的に転移してきていた澄野と雫原の姿だったわけです。

 

ちなみにこのパラレリープ装置には非常に便利な機能が搭載されており、雫原がこれまで観測してきたタイムラインをチャート表として見ることができます。これらは、プレイヤーがチャプターセレクト画面で確認できるものとまったく同じものです。つまり我々プレイヤーは、知らず知らずのうちにパラレリープ装置の機能を使っていたことになるわけです。

 

澄野と雫原は、殺人鬼タイムラインの澄野の脳内から「ギィ」による殺人衝動を治癒しようとしたり、ワザワイの箱タイムラインにて「ギィ」に取りつかれた過子が様々な悪事を働く前に取り押さえようとしたりするものの、結論としてはすべてうまくいきません。

 

ただし二人は、20日目にノモケバタイムラインに時空転移することで、ほかのタイムラインでも時々登場する謎の老人から重要な証言を聞くことができます。

かつて、二人が囚われているような時の牢獄に囚われるタイムループ現象を研究していた「イノネ・ノリロウ」博士が、その研究結果を一冊の本にまとめたものがあり、もしかしたらその本にはタイムループを抜け出すための手掛かりとなる情報が記されているかもしれないというのです。

 

その本の名は「呪輪廻考(じゅりんねこう)」といいます。作中では老人自身が「呪術廻戦」と字面が似ているが偶然だ、と思いっきりパロディ発言を繰り出しますが、澄野と雫原にとっては貴重な情報です。

 

ただその本がどこにあるのか全く手掛かりがないため、ひとまず学園の図書室に収蔵されている膨大な書籍の中に「呪輪廻考」がないか、わずかな可能性にかけて何日もの間探し続けることになります。

 

結果としてその本は学園内に存在したのですが、よりにもよって本は拘留中の蒼月への差し入れとして渡されてしまっており、蒼月は澄野への嫌がらせとしてすでに本のほとんどを食べてしまっていました。

 

この時点でループから抜け出す手掛かりがなくなってしまい、二人は当面の目標を失ってしまうことになりますが、敵陣営は彼らの事情にかまうことなく学園へと攻め入ってきます。タイムループを抜け出すことも重要ですが、仲間たち全員の命を守ることも、二人にとって大切な目的です。

 

しかしこの後、雫原は過去のループによる知識をSIREIに提供することで、蒼月を完全に仲間に引き入れることに成功することになります。

蒼月が人類を皆殺しにしたいという凶悪な思想に取りつかれているのは、彼が生まれながらにして自分以外の人間を正しく識別できない認識障害に陥っているためです。バケモノは抹殺しなければならないというある種の歪んだ使命感によって、蒼月は数々の悪事を働いてきました。

(その場に飴宮がいたなら、間違いなく伝説的な名シナリオのエロゲ作品「沙耶の唄」かよ、とツッコミを入れそうな症状ではあります。っていうか実際、絆イベントにおいて飴宮はお勧めの名作エロゲとしてこのタイトルそのものを名指ししちゃってますし……)

 

実際、カリスマ澄野編では面影の薬品の効力によって澄野が人間離れした存在になっていくことで、蒼月の目から見ても正常な人間の姿に見えるようになり、蒼月が澄野の側近に落ち着くという奇妙な展開になったこともありました。

そのほか蒼月は、ノモケバ編ではノモケバを自身の体内に寄生させた飴宮の姿が正常な人間に見えたことをきっかけとして、飴宮を守るために自己犠牲を払ったこともあります。

これらの展開から、蒼月は「彼が人間に見える人物には積極的に味方をしてくれる」人物であることがわかります。

 

SFタイムラインの蒼月は1週目とは違い、SIREIを破壊しようとした未遂の罪はあるものの、まだ誰のこともその手にかけていません。いちおう、まだ仲間にできる余地がある状態ではありました。しかし、凶悪な思想に取りつかれている蒼月を仲間にできるとしたら、正しい手順で蒼月の認識障害を治療することが必要でした。

 

ただし、青春編でもSF編のように蒼月を洗脳することで正常に戻せないか試したことはありましたが、このルートでは洗脳がうまくいかず、結局蒼月は澄野たちと敵対してしまいました。

 

今回もまたうまくいかないのではないかと思われたのですが、雫原はSIREI達がイヴァーの洗脳に用いている機械の改良方法を過去のループで熟知していたため、それによって蒼月に対して完全な治療を行うことができたというわけです。

 

これ以降、蒼月は1週目で猫をかぶっていた時のように青臭い発言を繰り返す優男風な立ち振る舞いに戻ることになります。さらには自身が食べてしまった「呪輪廻考」の概要を澄野と雫原に教えてくれるまでに協力関係が築かれることになります。

 

蒼月曰く、時間の牢獄から抜け出すためには、終点となっている時点においてより多くの異血のパワーがタイムルーパーの周りに存在していることが必要である旨が記されていたと言います。

これは言い換えると、100日目の午前10時の時点において、特防隊の仲間たちが全員生き残っている状態であれば、タイムループを抜けられる可能性があることを示唆していました。

なぜなら雫原の過去146回のループの経験では、100日目を全員が生存した状態で迎えたことはただの一度もなかったからです。

 

この情報は澄野と雫原に希望を与え、決意をより強固なものへと変えました。何が何でも仲間たちを全員守り抜き、100日目を迎える必要があります。

 

しかし最終ルートだけあってか、話はそう簡単には進みません。

 

ワザワイの箱タイムラインから転移してきた「ギィに寄生された過子」が妨害してきたり、様々な困難が彼らに直面します。

 

ある展開では、「ギィに寄生された過子」によって味方5人が殺害されてしまい、しかも脱出ポットが故障しているために100日目の全方位ミサイル攻撃から逃げ出す手段さえないという絶望的状況に陥ることがあります。

 

この展開において澄野は度重なるタイムリープの負担に耐え切れず、PL障害という副作用によって命を落としてしまうのですが、彼は死の間際に雫原に対し、その時点で生き残っている仲間たちを急いで「推理タイムライン」に逃がすように指示を出します。その時間軸では全方位ミサイル攻撃が実行されないことを、澄野は思い出したからです。

 

これこそが「推理編」のエンディング100において、死んだはずの仲間たちが100日目に全員集合できた経緯です。彼らはSFタイムラインにおいて、「ギィに寄生された過子」の魔の手から逃れた生き残りだったわけです。

 

とはいえ、仲間たち全員を守りきることができなかった雫原は、結局タイムループから抜け出すことはできないため、SF編の仲間たちが無事に推理編の仲間たちと合流できたことを確認できたのち、ただひとりSF編のタイムラインへと戻っていきます。すでに息を引き取っている澄野と共に、全方位ミサイル攻撃によって消滅するまでのセリフには、心揺さぶられるものがありました。

 

よくできたエンディングの一つであるとは思いますが、このような展開だけで終わってしまってはあまりにも無情すぎます。

 

他のとあるルートにおいては、PL障害によって瀕死の状態になっているのは澄野ではなく雫原であり、ここでも全員生き残ることはできないのかというあわやな展開が進行します。

 

しかしここで澄野が男を見せると、これまで助け合ってきた特防隊たち全員たちの協力によって、澄野は雫原を連れて脱出ポッドに乗り込むことができ、見事100日目の午前10時を通過することができました。雫原は、ようやく時の呪縛から解放されたというわけです。

 

100ものエンディングの中で、蒼月やイヴァーを含めた全ての味方が生存した状態で結末を迎えるのは、SF編におけるエンディング55ただ一つだけとなっており、到達した際の達成感は一入のものがありました。


(厳密にいえば、エンディング54でも蒼月やイヴァーを含めた特防隊員たちは全員生き残った状態で脱出ポッドに乗り込んでいるものの、全方位ミサイル攻撃を止めることができなかったため、フトゥールムの全生物は焼き殺されてしまします。その中には当然、イヴァーの義理の娘であるカミュンも含まれています。脱出ポッドの中で焼き尽くされるフトゥールムの光景を目にしたイヴァーは洗脳状態から覚醒し、人工天体の人類を皆殺しにすると宣言して幕を引くことになります)

 

ただしSF編では、真相解明編で明るみになった戦争の真実や、澄野たち特防隊員たちの真実について、澄野たちは何も知ることなく人工天体への帰還を果たすことになってしまいます。

 

そのため、一見ハッピーエンドに見えるけれど、彼らは「全方位ミサイル攻撃によって惑星フトゥールムの全生物を焼き尽くして惑星丸ごと乗っ取る作戦」をご破算にして人工天体に向かっていることになるため、その後の物語には一抹の不安が付きまといます。

 

これについては澄野自身も、人工天体についた途端に命令違反の咎で処刑されるかもしれないと心配していますが、ここまで助け合ってきた仲間たちとの絆を信じ、どのような目にあおうとも全員で生き残ってみせると決意を新たにします。

 

 

いやーまさか、全員(カミュンを含む)が無事に生き残れるルートがたったの一つしかないとは、恐れ入りましたよ。どんだけみんな悲劇が大好きなんだよと言いたい。

まあなんにせよ、何とかしてまともなハッピーエンドを迎えたいという欲はそれなりに達成できることができました。

200時間余りも澄野たちに付き合ってきた以上、特防隊の全員のことが大好きとなっていたため、何とかしてやりたいという思いが募っていましたので……

 

 

●残った謎について

しかし……しかしです。

これまで100ものエンディングを見渡してきたというのに、実は伏線回収されていない、謎のまま残っている問題がいくつも存在します。

 

たとえば、SF編の感想で少し触れた謎の老人や、「イノネ・ノリロウ博士」について。

 

雫原が言うには、老人はノモケバタイムラインなどの特定のタイムラインでしか絶対に出会うことができないという謎の存在です。しかも彼が教えてくれた博士の名前は、明らかに日本人名なんですよね。

 

最終防衛学園が設置されているのが実は地球ではなく惑星フトゥールムであるということは既に分かっています。つまりは、異血やタイムループの研究をしていたのは現地人であるフトゥールム人ではなく、侵略者である地球人の方だったということを意味しています。

 

ではそれをなぜ、現地人っぽい謎の老人が知っているのか。もしや彼もまた、タイプリーパーなのではないか。そもそも老人はどうしてノモケバの幼体なんていう危険物を保管していたのか。わからないことだらけです。

 

謎はまだまだ残っています。

 

SF編において雫原は、パラレリープ装置を発見したきっかけが、何者かが夢枕にでて「あの装置はいつか君たちの助けとなる」という言葉を聞いたからだと澄野に証言しています。

 

澄野はそれを指して単なる夢だろうと一笑に付していますが、プレイヤー視点としては見逃せない情報です。なぜなら雫原はこのほかにも、折に触れて「白衣を着たおばさん(推定50代)」にアレコレ助けてもらったと澄野に話しているからです。

 

たとえば澄野はSF編の90日目において、「炎の少年(シオン)」の命を救いつつ全方位ミサイル攻撃を止めるため、赤子ジャーという装置の材料を集めに青春タイムラインへと移動したとき、雫原と何者かが会話しているところを目撃します。

 

澄野は話し相手の姿も、話している内容もはっきりと知ることはできませんでしたが、雫原と誰かが話していることだけは識別することができていました。直後、澄野は雫原に誰と何の話をしていたのか問いただしますが、雫原は困惑気味に、「白衣を着たおばさん(推定50代)」から赤子ジャーの材料と、とあるメモリースティックをもらったと証言するのです。

 

いわくそのメモリースティックには「装置+(プラス)の設計図」が入っており、白衣のおばさんが言うには「縦だけじゃなくて横にも移動できるもの」であるとのこと。

 

澄野の視点どころか、プレイヤー目線から見ても何のことだかさっぱりな謎の情報です。この情報の意図するところは、ほかの全ルートにおいても察することすらできませんでした。

 

おそらくタイムリープ装置を改良し、同じ日付同じ時間に平行移動するだけでなく、過去や未来にも移動できるようにするための設計図が入っている、という意味なのでしょうが、劇中においてそれらが活かされる場面が全くなかったことが気がかりで仕方がありません。

 

ネット上の未確定情報では、ハンドレッドラインにDLCにてストーリーが追加されるのではないかと噂されており、この「白衣を着たおばさん」の正体やらタイムリープ装置の改造やらは、このときにはじめて語られることになるのかもしれません。

 

謎というか、投げっぱなしの伏線は他にもあります。

 

SF編のとある展開では、ワザワイの箱タイムラインから移動してきた「ギィに寄生された過子」によって、昏睡中の霧藤が誘拐されるという話があります。

 

澄野が度重なるタイムリープの負担によって長い間意識を失っている間に、霧藤の身にも不幸が起きており、彼女もまた昏睡状態に陥っていたのです。

雫原曰く、仲間たち全員にタイムループのことを説明するためにラボに向かったが、その帰りの道筋で隕石が落下してきて、隕石から発せられた光を浴びた霧藤は、そのまま意識を失ってしまいます。しかも、その隕石と同じように、霧藤もまた光を放つようになっていました。

 

まったくわけのわからない状況ですが、澄野たちは霧藤を拉致した「ギィに寄生された過子」から、次のような発言を引き出せています。

 

いわく、

・とある奇怪な種族がトリームレイという特殊な光を浴びると体の組成が変化して、特異体というものになる。
・特異体は寄生生物ギィの種族にとって貴重な食材で、母星に帰って体を献上しなければならない。

ーーだそうです。

 

とある奇怪な種族というのは、ほぼ間違いなく「地球人」のことでしょう。

これこそが澄野を含めた14名の特防隊員と、不正規隊員である霧藤の明確な違いだからです。

澄野たちは、「神の再来」と称された「炎の少年(シオン)」の遺伝子によって生み出されたクローン体であり、実質的にはフトゥールム人ということになります。

 

なぜ、惑星フトゥールムから何百光年も離れた地球人のことを、フトゥールムの伝承として生息していたはずのギィが知っているのか気になるところではありますが、その説明はありませんでした。

 

しかし「ギィに寄生された過子」が言うところによると、澄野たちが戦っていた100日の間、どこかのタイムラインでは「ギィ」を母星へと運ぶための、「ワープ機能のある宇宙船」が山中に隠ぺいされていたはずだというのです。

 

幸いにして澄野たちは霧藤の奪還に成功することができますが、これまで読み進めてきた100ルートの物語において「ギィの宇宙船」の存在が絡んできたことは一度もなかったはずです。これもまた、未回収のまま放置された伏線ということになります。

 

 

あと、タイムループ設定そのものについての疑問というものも残っています。

 

たとえば以前、独裁政権編の解説をした際に、エンディングの一つに防衛戦の終結時点から10数年かけて、イヴァーの義理の娘・カミュンと共に独立政権を樹立するために奮闘し続けるというものがあると言ったかと思います。

 

しかしこのルートの存在は、雫原の説明したタイムループの条件と大きく矛盾しています。

 

SF編における雫原曰く、タイムループの終点は100日目の午前10時=全方位ミサイルミサイル攻撃の開始時刻であり、その時間を経過すると雫原の意識は2日目の夜間へと引き戻されるとありました。

そして、澄野も別のタイムラインの出来事を徐々に思い出したはいいものの、そのいずれも100日目以降の記憶がなかったことから、澄野も雫原と同様に無限タイムループに囚われているのだと彼らは解釈していました。

 

ではこの矛盾をどう解釈すればいいのか。作中では明確な答えは提示されていないため、推測するしかありません。

 

考えられることの一つは、雫原のタイムループと、澄野のタイムループは違うルールで実行されている似て非なるものなのではないか、という推論です。

 

なぜこんなことを述べるかというと、澄野はSFタイムラインにおいて独裁政権編の出来事やノモケバ編の出来事を全く思い出すことがなかったからです。しかし、少なくとも雫原はSFタイムラインの時点でノモケバ編の存在を知っていたます。だからこそ雫原は、澄野の視点ではノモケバタイムラインの出来事はSFタイムラインのあとに澄野が体験するから、いまの澄野は知らないのではないか、という推論を述べたのです。

 

確かに、雫原と澄野が全く同じ順番であらゆるタイムラインを体験していると考えるのは不自然ではあります。どちらかというと、無数に存在する平行世界のなかで、たまたま二人の意識が同じ世界線にいるときだけ、二人の認識が一致しているのではないかと考えた方がしっくりくるでしょう。

 

たとえば、雫原の認識では「ギィの殺人衝動に操られている澄野」に殺される世界を体験したことがあると話していましたが、澄野はもちろんのこと、プレイヤーの視点ではそのようなタイムラインは確認できません。このことは、雫原が嘘をついていない限り、二人は必ずしもその時点において共通するタイムラインの記憶を保持している保証がないことを意味します。

なんといえばいいのでしょうか、例えば1から10までの数字があってそのすべてを読み上げろと言われたときに、片方は1から10の順番で読み上げたが、もう片方は10から1の順番で読み上げてしまったせいで、5の時点で5そのものは双方共通して読み上げているものの、片方にとって読み上げ終わった1の数字を、もう片方の方はまだ読み上げていない、というような状態だと言えばわかりやすいでしょうか。

 

劇中で雫原自身が言っていた通り、タイムループを観測できるのは、あくまでループしている本人だけであって、同じ世界に二人以上タイムループできる能力者がいたとしても、ある人物がタイムループしたかどうかを、別の人物の視点では観測することはできない、というわけですね。だからこそ、タイムルーパー同士がどのような順番で別世界を体験し続けているかは、その本人にしか知りようがないことになります。

(実はこれと同様の時間遡行問題は、今年アニメ化が決まっている大人気シミュレーションゲーム「グノーシア」でも語られることになるため、微妙にホットな話題でもあります)

 

ーーまあ頭が痛くなるような細かな話は置いておくとしても、少なくともプレイヤーが観測した澄野のうち、防衛戦のあと十数年にわたって行動し続けた澄野が存在する以上、澄野にとってのタイムループの条件は雫原と完全に同じなわけではないことが予想されるわけです。

 

ノモケバ編や独裁政権編に到達した澄野は、単独で無限ループの解除条件を満たしたのかもしれません。しかしこれらの推論を裏付ける根拠が物語中において語られてはいない以上、結局は推論の域を出ない話ではありますが……

 

 

 

さてさてーーあまりにも膨大遠大すぎる物語ゆえに忘れている要素もかなり含まれている気がする一方で、語りだしたらいつまでも語ってしまいそうな恐ろしさもあります。
正直、こうして思い出しながら文章を書き起こしてみると、だんだん疲れ果ててきました。

 

ひとまず各ルートの概要についてはこの辺にして、あとは気が向いたときに、各キャラクターたちの総評でもしてみようかと思っています。

それではまた、機会がありましたら。

 

HUNDRED LINE -最終防衛学園- その2

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

hundred-line.com

 

●各ルートについて(続)

・11:恋しちゃったんだ編/SF編1

1週目の100日間を過ごした主人公・澄野は、これまでの死闘を繰り広げたことによって、自らの特殊能力=特異科目「復習」が進化していることを知ります。

今度こそ誰も犠牲にせずにこの戦争を生き延びるため、澄野は自らの能力によって意識を過去に遡らせて、100日間をやり直すことを選びます。

 

そうして2週目が開始するわけですが、この2週目の開始時点というのが、蒼月の暗躍が始まった2日目の夜間になります。

 

1週目では最序盤の段階で、澄野たち特防隊の面々に碌な説明もしないままSIREIは破壊され、雫原は行方不明になってしまうのですが、澄野はその決定的場面に行き会うことができたわけです。

 

ここで蒼月の凶行を止めると、彼を処刑するか拘留するかを選択することができます。

真相解明編ほか、これまで説明したすべてのルートに進むためには蒼月を拘留する必要があります。

 

蒼月を中庭の檻に拘留したあと、澄野は他の仲間たちにあれこれ説明を求められます。そりゃあまあ、仲間たちの視点からすれば出会って2日もたっていないのに、蒼月は裏切り者でSIREIを破壊しようとしていたが、その現場にたまたま遭遇したので彼を拘留することにしたーーなどと説明されても、飲み込み切れないものがあるでしょう。「なんでそのことに気づいたの? 何か隠してるんじゃないの?」という当然の疑問をぶつけられるわけです。

 

ここで澄野は1週目を経験してタイムリープしてきた事実を話すか話さないかを選択することになるわけですが、タイムリープしてきた事実を話さないことを選択すると、ルートは真相解明編から大きく分岐してしまうことになります。

 

このあたりから、雫原の奇妙な言動を澄野は目撃することになり、彼女と二人きりで話をする機会が出てきます。

 

1週目の雫原は何か大きな秘密を抱えており、その事情を聴きだせないまま彼女は行方不明となってしまったため、澄野は9日目の夜に彼女が何を知っているのかを聞き出そうとします。

 

この時の選択によって「恋しちゃったんだ編」か「SF編」のどちらかに分岐することになるのですが……まあ、「SF編」については語りだしたらキリがないルートではあります。

 

「SF編」に進むことによって、実は雫原も過去に別の100日間を経験してタイムリープをしてきたのだということが判明します。しかも澄野とは違い、これが2週目というわけではなく、100週目を超えており、それはもはや時間遡行を意味するタイムリープではなく、同じ時間枠を繰り返すタイムループである、と説明されます。

 

ただし、SF編はこの説明がされる10日目の夜間で「シナリオロック」が発生し、物語が強制終了してしまいます。その先の物語を読むためには「エンディング34・36・72・76」の4つに到達していることが条件となります。具体的にはすでに説明した「ワザワイの箱編」のエンディング2つと、まだ説明していない「血みどろ編」のエンディング2つを読んでいる必要があるわけです。

 

仕方がないので9日目の夜に戻ってもう一つの選択肢を選ぶと「恋しちゃったんだ編」にルート分岐することになりますが……なんというかまあ、その名の通りのラブコメ展開が発生することになります。

 

9日目の夜の選択によって澄野と雫原は誤って事故にあってしまい、澄野は2週間余りも昏睡状態に陥ってしまいます。しかも澄野たち二人は過去の記憶を失っており、そのため澄野は雫原から何かを聞き出そうとしていたことを思い出せなくなっています。

 

その代わり澄野は、どういうわけか大鈴木・凶鳥・川奈の三人それぞれとキスをしている場面が頭に浮かんでしまい、日常生活に支障をきたすほど困惑してしまいます。

 

澄野の様子がおかしいことに気づいた喪白は、澄野の精神的ケアをかねてとある提案をしてきます。それは大鈴木・凶鳥・川奈の三名それぞれと25日間ずつ重点的に交流を重ね、頭に浮かんだ場面というのが予知によるものなのか、澄野は誰が好きになるのかを検証するというものでした。

 

三人の女の子たちはそれぞれに強烈な個性を放っており、それぞれに魅力的な人物でもあるため、この奇妙なラブコメ展開は読んでいてそれなりに面白くはありました。

 

ただそうはいっても、彼らはいま、最終防衛学園を100日間防衛するという死闘の中に身を置いており、いわば戦争状態なわけです。そんな中で何を生ぬるい恋愛ごっこを繰り広げてるんだバカなのか? という思いも少なからず感じてしまい、どこかノリきれない私がいたことも確かです。実際、このルートの終盤において誰が好きとも選択しなかった場合、澄野が私の述べたような不満や怒りを喪白にぶちまけるという展開もあります。

 

シナリオ自体は面白いものの、ゲーム全体のテーマからすれば異色の物語だったということで、完全なif展開として面白がるにとどまらざるを得ないのが、このルートの総評といったところでしょうか。

 

 

・12:コメディ編/血みどろ編(ゾンビ編・殺人鬼編)

2日目の夜、SIREIを破壊しようとしていた蒼月を処刑することを選ぶと、真相解明編からは大きく分離することになります。その後、4日目のとある選択肢によって、推理編・デスゲーム編、もしくはコメディ編・血みどろ編のいずれかにルート分岐する展開へと移動することになります。

 

4日目の日中、とある空き教室の黒板にでかでかと「今すぐ学園を去れ。さもなくば全員殺す」という脅迫文が記されていることが発見されます。

しかもその直後、SIREIが何者かによって破壊されていることが判明してしまいます。

最終防衛学園は、その周囲全体が厳重に監視されており、外敵が侵入しようとすると学園中に警報が鳴り響くことになっています。しかし澄野たちはこの脅迫文が発見されるまで、そのような警報を聞いていません。つまり、仲間たちの中にこの脅迫文を書いた人物がいる可能性が高い。

 

1週目の世界ではありえなかった事態に澄野は混乱します。しかし、最終防衛学園から立ち去らなければ全員殺されてしまうという事態を避けるため、学園を一時退去することを選ぶと、コメディ編か血みどろ編へとルート分岐することになります。

 

あまりにも温度差がある展開なので二つ並べるのはどうかとも思うのですが、近接しているルートなので並べざるを得ないということもありまして……

 

ひとまず澄野は1週目の経験から、敵が最終防衛学園に攻め入ってくるのは7日目であることを知っていたため、仲間たちを引き連れて第二防衛学園へと一時避難することを選びます。

 

その後、第二に詰めていた仲間たち全員を引き連れて最終防衛学園に戻ってきますが、ひとつ大きな問題に直面しました。14日目の夜に大きな分岐点を迎えることになるのです。なんと、学内に真っ黒な防護服を着て、巨大なエンジンカッターを持った謎の人物が徘徊しているところを発見してしまいます。

 

もしや脅迫文を書いた人物なのではないか、もしくは敵陣営からの手先かもしれない。澄野は謎の人物を校舎の外にまで追いかけていきますが、この後の選択によってルートは大きく分岐します。

 

謎の人物からの攻撃をよけることを選択すると、謎の人物は校舎の外に張り巡らされた「消えない炎」に巻き込まれて完全消滅してしまいます。しかし安心したのもつかの間、まったく同じ黒い防護服を身に着けた謎の人物が再び現れ、澄野は何かを注射されて意識を失ってしまいます。

 

澄野はその後、特に何事もなく学園へと帰還しますが、この後の展開はほとんど語るべきことがありません。というのも、川奈によって修復されたSIREIを中心として、ほかのルートではありえないほどバカバカしい喜劇的展開に終始し、そのノリに敵陣営も巻き込まれるという、不条理系コメディでも読まされているかのような話が100日目まで続いていくからです。

 

まったくつまらないというわけではないのですが、あまりにも異色な雰囲気がありすぎて、二次創作の同人誌でも読んでいるような気分になりました。

 

ただ実をいうと、どうしてこのようなルートが存在するのかということは、ほかのルートにおけるちょっとした伏線になっています。

 

どういうことかというと、蒼月を処刑したあとのと4日目に、澄野は雫原と会話した際にボソッと、「カエルが食べたい」と口にするシーンがあります。この一言は、「ワザワイの箱編」を読んでいるプレイヤーの視点からすると「澄野がギィに寄生されている」ことを予期させる伏線になっているのです。

 

しかし、澄野たちはこの時点では「ワザワイの箱」の存在すら知らず、「ギィ」に接触する機会など皆無なはずです。どういうわけなのか疑問に思いつつも、コメディ編ではその答えを見ることはできません。この疑問点については、いったん置いておくことにしましょう。

 

翻って14日目の分岐点に戻り、今度は謎の人物に反撃をする選択肢を選んでみます。すると澄野は謎の人物から逃げ出すことに成功し、無事に最終防衛学園に戻ることができました。その後数十日は何事もなく、いつもの防衛戦の日常が繰り広げられていたのですが、43日目に惨殺された喪白の遺体が発見されることで、事態が大きく動き出します。

 

実は14日目の選択によって澄野はすでに「血みどろ編」へと足を踏み入れており、このあとは何をどうやっても悲劇から逃れることはできません。この出口のない行き詰まる感覚は、まるでPS1ソフトのアドベンチャーゲームダブルキャスト」におけるジェノサイドセクションを思い起こさせます。

 

ちなみのこの「血みどろ編」は、43日目の選択によってその後の展開がさらに大きく分岐します。作中で雫原がこれらの展開を「ゾンビタイムライン」「殺人鬼タイムライン」と表現していたこともあり、ここでは便宜上「ゾンビ編」「殺人鬼編」と呼ぶことにしますが、どちらにせよ登場人物たちの多くが死傷し、「血みどろ」になるという意味では確かに「血みどろ編」と言えると思います。

 

「ゾンビ編」では、死んだはずの蒼月や喪白が次々と仲間たちに襲い掛かり、徐々に死者が増えていくというバイオハザードそのものなホラー展開が続きます。「ワザワイの箱編」を読んでいれば、これが「ギィ(雄)」による死体操作の影響であることは察せられるのですが、とにかく絵的にも話的にもグロテスクで胸に来るものがありました。この展開では澄野が2週目に進むことを決意したきっかけでもある霧藤が必ずゾンビになってしまうため、やはりあまりにも救いがありません。

 

ただしこの「ゾンビ編」では重要な展開として、100日目まで生き残った澄野がゾンビ化した仲間たちに捕らえられ、「ギィ(雌)」に寄生されてしまうというシーンが描かれています。

いわば、これこそが先ほど私が疑問を呈した「澄野がギィに寄生されている」ことを明確に示すシーンではあるのですが、これだけだとまだ意味の通らないことがあります。

 

何せこのシーンは100日目のことであり、澄野が「ギィ(雌)」に寄生された直後には、最終防衛学園から全包囲攻撃されたミサイルに巻き込まれて澄野たちはもろとも灰燼と化してしまうからです。

 

それにそもそも澄野の持つ「やり直し」の能力は、身体ごと過去に時空にタイムリープしているわけではなく、それまでの記憶を過去の自分に転送する類のものであるため、脳に寄生したギィそのものが過去の澄野の脳にくっついてくることはあり得ないわけです。

 

この答えについては、以下の「殺人鬼編」のとあるエンディングによってネタ晴らしがなされることになります。

 

「殺人鬼編」では、何者かによって次々と仲間たちが惨殺されていき、最終的にはたった3人しか残らなくなるという残酷な展開が描かれていきます。このルートの結末の一つが、SF編のシナリオロックで指定されているエンディング72であり、いったい誰が、なぜこのような事件を起こしたのかというネタ晴らしが盛大に行われることになります。

 

まあ、このルートに入った時点で「ワザワイの箱編」や「ゾンビ編」を読んでいたプレイヤーからすれば、真犯人がギィに操られた澄野であり、彼自身は犯行時の記憶を失っているという「信頼できない語り手」による叙述トリックであることは簡単に想像はできたと思います。

 

ではなぜ、殺人鬼編ではギィに遭遇していなかったはずの澄野が、ギィに操られるまま殺人を繰り返してしまったかというと、これは彼のタイムリープ能力が原因であることが、澄野に寄生したギィ本人の口から雫原に向けて語られることになります。

 

いわく、ゾンビ編にて澄野に寄生したギィは、すでに澄野の脳内情報として細胞単位で組み込まれており、ギィの生物学的本能として「寄生するための死体を作り出すため、大量殺人を繰り返す」という行動が強制される状態になっていたというのです。そのため、ゾンビ編100日目を終えて過去に意識を遡らせた澄野の中には、ギィに寄生された殺人鬼としての澄野が混ざっていることになります。

 

ちなみに雫原はこのことに既に気づいており、その対処法についてもすでに熟知していたことがSF編で明るみになります。別のルートにてSIREIが所持していることを説明していた「脳内バグ修復プログラム」という注射器を澄野に打ち込んだうえで、保険室内にある回復装置に澄野を入れてしまえば、「ギィ」による殺人衝動を完全に抹消することができるというのです。

 

しかしSF編において、様々なトラブルが巻き起こった結果、澄野と雫原はこの「殺人鬼編」における澄野を最後の最後まで治癒することができず、結局この「殺人鬼編」の時間軸では最後の一人になるまで澄野が殺人を繰り返すことを止めることができないという結論に至ってしまいます。

 

そのトラブルの一つというのが、澄野が誤ってまったく別の時間軸にタイムリープしてしまい、ギィによる殺人衝動に侵されていない澄野に注射器を打ってしまっていたから、というものがあります。

 

SF編ではここでいう別の時間軸というのが「青春編」だと確か説明されていたはずですが、実はそれと同じことが「コメディ編」でも起きていたことがわかっています。

 

もし「コメディ編」において澄野が打ち込まれた注射が「脳内バグ修復プログラム」なのであれば、この時間軸の澄野はギィの殺人衝動に取りつかれていたはずなので、無事に人格が回復できたことになります。だからこそ、コメディ編という展開が成立したともいえるわけです。

 

 

ちなみに「殺人鬼編」では犯人であるはずの澄野自身が殺害されるというミスリード展開があり、それでも殺人が止まらないため、それは何でなのだろうという謎が一つ残ることもありました。この謎は、SF編を読み進めると理由が明らかになります。

 

 

・13:推理編/デスゲーム編

2日目の夜に蒼月を処刑しつつ、4日目の昼に黒板の脅迫文に従わずに最終防衛学園に残り続けることを選択した場合、このルートに移動します。

このルートでは6日目に必ず丸子の惨殺死体が発見されてしまい、その後の展開は不穏そのものとなっています。ほかのルートではあれだけ仲の良かった特防隊の仲間たちは互いに疑心暗鬼となっており、なにより薄い根拠で蒼月を処刑した澄野は他の仲間たちから白い眼を向け続けられることになります。

 

事態が大きく動き出すのは25日目のことです。4日目と同じように、黒板にでかでかと「コロシアイのゲームをしよう」という脅迫文が掲示されます。ただ、明らかに4日目のときとは筆跡が異なるため、本当に同じ人物が描いたものなのかはわかりませんでした。

 

ただこの脅迫文を書いた人物は変成器で声を加工したうえでボイスメモを残しており、「侵校生ハント」なるデスゲームに参加しなければ仲間たちを皆殺しにするという強迫をしかけてきました。

 

澄野がこの脅迫を退けた場合は推理編に、「侵校生ハント」への参加を表明すると「デスゲーム編」へと分岐することになります。

 

 

推理編では、わけのわからないゲームに参加して仲間を危険にさらすより、犯人を取り押さえることを目指すのですが、そうこうしているうちに過子が殺されてしまい、仲間たちはさらなる疑心暗鬼に陥ることになります。

 

その後も銀崎や川奈、喪白といった面々も殺害されていき、とある場所にて大鈴木の死体が発見されてしまうのですが、なんとここでも「シナリオロック」による制約が発生し、物語は強制終了になります。

この先を読み進めるためにはSF編を読み進めて「シナリオロック2」を解除しなければなりません。

つまり、推理編とSF編は交互に読み進めていかなければ先の展開を知ることはできないというわけです。

 

この推理編では、3つの殺人事件に対して澄野自身がそれぞれ犯人を指摘するという展開があり、まるで某「ダンガンロンパ」でもやっているかのような気分になってしまいました。仲間たちを口説き落とすための「説得モード」を犯人を論破するために使うなど、あからさまに意識してはいたでしょうが。そもそもこの「ハンドレッドライン」は言わずもがな、「ダンガンロンパ」を制作したチームが別会社トゥーキョーゲームズに異動して作り上げたものなわけなので。

 

他のルートを読み進めていたプレイヤーからすれば、黒幕の存在を指摘する場面はさほど難しくはなかったと思いますが、推理編単独で見るとほぼノーヒントでの犯人の指摘になってしまっていたため、ちょっと不親切かなとは思いました。

 

それにしても、100にも分岐されたマルチエンディングスタイルのアドベンチャーゲームを多重世界戦構造の世界観として明言し、タイムリープ展開と掛け合わせることでここまで面白い話の展開を作り出したのは称賛に値します。

 

事件の犯人が分かっても、その犯人は別のタイムラインへ逃亡し凶行を重ね続けてしまうため、悲劇の連鎖が終わらないところもなかなかに興味深い展開でありました。

 

 

一方デスゲーム編では、澄野は嫌がる仲間たちを巻き込んで「侵校生ハント」への参加を表明します。ゲームに参加しさえすれば、これ以上の犠牲者を出さずに済むかもしれないと澄野は考えたわけですが、この時の彼はゲームの主催者の悪意を甘く見すぎていました。

 

ゲームの性質は参加者同士が直接的に殺し合うものではなかったものの、一定期間のうちに敵陣営を抹殺した数に応じてポイントが割り当てられ、最下位だったものを処刑していくというものでした。つまり、生き残りが掛かった仲間同士のつぶし合いであり、実質的には殺し合いをしているのと変わりがありません。

 

しかも澄野たちの目の前に現れた謎の主催者は、いつぞやの真っ黒な防護服を身に着けているうえ、澄野たちの全力の攻撃をいともたやすく防ぎきってしまう無敵の存在です。逆らえば吸血機能を持った巨大な蜂たちに異血を吸いつくされ、処刑されてしまうので、澄野たちは死に物狂いでゲームに取り組まなければならなくなりました。

 

途中、澄野と面影の機転によってゲームの主催者を抹殺することに成功するものの、すぐにそのゲームを引き継いだと主張する新たな防護服の人物が現れ、結局ゲームは続行されることになります。

 

最終的に澄野たちはゲームの2代目主催者と直接対決し、その正体を突き止めることに成功します。

 

なんと2代目主催者の正体は蒼月だったのです。多くの隊員たちはその事実に驚きます。なにせ「デスゲーム編」において蒼月は澄野によって処刑されているので、じゃあお前は誰なんだ、という話になるからです。

 

しかし、この世界が多重世界戦構造であることをこの時の澄野は既に知っているため、この蒼月が「ワザワイの箱編」で脱走・および失踪していた蒼月だということがわかっています。蒼月は「ワザワイの箱編」にて山中に隠された謎のラボを発見しており、この「デスゲーム編」の世界へとパラレリープ=時空転移してきていたのです。

 

まあ、初代主催者と違って、2代目主催者である蒼月は話口調をごまかそうという意識が全く感じられなかったため、そもそも正体を隠す気が合ったのか疑わしいところがありました。おそらく大半のプレイヤーは、ボイスチェンジャーで声がごまかされていたとしても、その特徴的な話口調で防護服の中身が蒼月であることは予想できたのではないでしょうか。

 

蒼月はとにもかくにも人類を皆殺しにしたい狂人であるうえ、澄野に対しては格別に強い悪意を向けており、正体がバレたあとであっても澄野のことを散々に追い詰めようとします。というのも、このルートにおいて澄野は、2代目主催者(蒼月)の思惑通り、仲間たちを守るために敵陣営の人間を殺害してしまっており、仲間の多くを助けられなかったことも相まって精神的につぶれかかっていました。

 

そんな中、澄野に対してあらん限りの罵倒を続ける蒼月の口を、川奈が自らの手によって永遠に封じてしまいます。いくら澄野の心を守るためとはいえ、あまりの急展開ぶりに、正直愕然としました。ヴェシネスへの特攻役に指定されたときは、臆して使命を果たせずに「ヴェシネス編」へ突入するきっかけを作ってしまったあの川奈が、まさかこのような極端な手段を取るとは。

 

確かゾンビ編において雫原が川奈に対して、特防隊の中で最も恐ろしいのは川奈なのではないかと評していたことがありましたが、その評価の一端が垣間見えた瞬間だったと言えます。

 

主催者がいなくなったことでようやく理不尽なデスゲームは終わりを迎えたわけですが、この時点で仲間は半数以下に減っており、防衛戦を生き残れるかどうかすでに疑わしい状況になっていました。

 

このあとの選択如何では、生き残った仲間たちだけで人工天体に向けて脱出することに成功する展開もありますが、敵の大将・ヴェシネスを倒しつつも全員が討ち死にするという悲劇で終わってしまうこともあります。

 

なによりこのデスゲーム編で辛いところは、1週目では頼りになった厄師寺や、何だかんだ澄野を慕ってくれていた今馬・過子の双子と敵対する展開が続き、ゲームの序盤にて雫原が壮絶な死を迎えてしまうところでしょう。

 

代わりと言っては何ですが、このデスゲーム編ではイヴァーと霧藤の絆が描かれ、霧藤を生かすために犠牲となったイヴァーの代わりに、霧藤がイヴァーの義理の娘・カミュンを守り抜こうとする展開が描かれたのは非常に興味深いものがありました。作中の大半のルートにおいてイヴァーは洗脳されており、素の状態が描写されることがほとんどないのですが、このルートでは母親としてのイヴァーがしっかりと描かれており、かなり含蓄のあるセリフが多く発言されていました。

 

たしかに1週目において霧藤の生い立ちを聞かされた身からすると、霧藤の母親は紛れもなく毒親にあたるのですが、それをイヴァーが明確に指摘してくれたことはちょっとうれしくもありましたね。なぜ霧藤があんなにも喪白やイヴァーを慕うのかというと、彼女がずっと母親からの愛情を求め続けていたからというところが大きいわけですから。何にせよ、不憫な少女ではありますよね。

 

あと、これはネット上の誰かも発言していたところを目にした気がするのですが、この物語は全般を通して、キャラクターの晴れ舞台が分散するように意識してシナリオが作成されているものの、そうはいっても目立ちがちなキャラと目立たないキャラに分かれてしまっています。

 

霧藤は本作のメインヒロイン的立ち位置としてあてがわれていることもあり、澄野の幼馴染に瓜二つという設定からしても、何かと彼女を目立たせようとする展開は目につきます。しかしそれでも少々彼女の印象が薄くなりがちなのは、100にも及ぶルート分岐のなかで彼女がヒロインをしている展開が一握りになってしまっているからともいえるでしょう。

 

次点では雫原に関する描写が非常に豊富だと思われますが、これは1週目において彼女が早々に途中退場してしまったことと、ルート周回を繰り返すほどに彼女が物語の根幹や真相に大きくかかわっているからこそ、最終的に彼女とばかり話しているシーンが思い出されるという物語の構造上の特徴も大きな要因であるように思えます。とはいいつつも、冷血サイコ眼鏡とも時に称される彼女が、実際には仲間の命を助けるために陰で全力で動いていたことを知れた時には、心動かされるところがありました。

 

三番手としては、このデスゲーム編でも大いに目立っていた川奈があげられるでしょう。っていうか、川奈はメカニックという作中でも非常に有能かつ重要なポジションであることから、どうやっても話の展開に立ち入ってこなければ進展しない都合があるのである意味では仕方がないのかもしれないですが、シナリオ全体を見渡した時、何かにつけて川奈がヒロインしている展開が散見されることに気が付きます。これはもう、スタッフの共通認識としてヒロイン的立ち回りをさせることを念頭に置いた人物設計だったと思わずにはいられません。登場人物の中では比較的まともで普通な人物として描写されつつも、澄野や仲間を守るためであれば時に極端な選択をするところも彼女の特徴の一つなので、なかなかに目が離せない人物ではありました。

 

逆に言うと、どうしても厄師寺や丸子、今馬といった面々に焦点を当てられた展開が薄味になっている感は否めず、そのあたりのバランスがもっとしっかりしていればより読み応えのある物語だったかもしれないとは思いました。まあ、200時間以上も読み終えるのに時間がかかる物語に、さらに厚みを増やされたら読了するのにあと何十時間かかるんだよ、というセルフツッコミが聞こえてきそうではありますが。

 

 

ちなみに話は「推理編」へと戻りますが、このルートでは選択如何によって記念すべき「エンディング100」に到達する可能性があり、そこでは死んだはずの仲間たち全員が100日目に大集合するという驚愕の展開がみられます。

 

この展開の真相を知るためにはSF編も読んでいる必要があるのですが、まあよくも考えつくものだと感心させられます。シナリオの管理能力が神がかっているというか、やはり狂気の沙汰としか言いようがありません。

 

詳しくはまた別の機会に述べさせていただきますが、やはり個人的にはSF編こそがこの物語の真骨頂だと思わずにはいられないんですよね……

 

 

 

 

HUNDRED LINE -最終防衛学園- その1

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

hundred-line.com

 

●概要

ハンドレッドライン」は2025年4月24日にニンテンドースイッチ用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲームです。

 

ゲームは大きく分けて物語を読み進めるアドベンチャーパートと、仲間たちと共に学園を防衛するべく戦うシミュレーションRPGパートに分かれており、これらを繰り返しながら進んでいきます。

 

プレイヤーは主人公「澄野拓海(すみのたくみ)」として様々な分岐点で「選択」を繰り返しながら、仲間たちと共に「最終防衛学園」を未知の外敵から100日間守り抜くことを目指します。

 

このゲームの最大の特徴は、なんといってもその分岐先の豊富さと、狂気の沙汰ともいえるほどのテキスト量・ボイス量の多さです。

 

なんと100にも及ぶ結末がプレイヤーたちを待ち構えています。

 

その多くのエンディングでは展開次第で途中の日付が飛ぶことはありつつも、100日目まで物語が描かれており、それだけでも凄まじい分量の物語であることは想像に難くないでしょう。

 

ただしそうは言っても、そのうち半分近くは各ルート分岐途中で強制終了するバッドエンドの要素を持つ結末であるため、各ルートのエンディングという意味ではその数はもっと絞られます。

 

それでも、私はゲーム発売日からこのゲームをほぼ毎日のようにプレイし続け、

100個のエンディングにたどり着くまでに実に200時間以上もかかってしまいました。

 

これまでいろいろなアドベンチャーゲームを読み進めてきましたが、全ルートを制覇するだけで100時間を超えるような作品にはお目にかかったことはありませんでした。

通常よくあるボリューム感のアドベンチャーゲームを4~5本はプレイしたくらいの満腹感があります。

このゲームを超えるほどボリュームのあるアドベンチャーゲームはほとんど存在しないのではないでしょうか。

(かの有名な竜騎士07氏原作の「ひぐらしのなく頃に」や「うみねこのなく頃に」のコンシューマー版ソフトでも、これに並ぶボリュームはあるのでしょうか……?)

 

ちなみにシミュレーションRPGパートについては、一度その日の戦闘に勝つと、それ以降はその日の戦闘をスキップすることができます。

 

そのため、エンディング踏破を目指してルート周回をしまくるプレイヤーにとっては、たとえ別ルートであったとしても同じ日の戦闘を手動で繰り返さなくてよくなるため、そのあたりの負担は軽減されています。

 

それでも、5月末にアップデートが実施されるまでは、ゲームに標準搭載されているスキップ機能が微妙に不便だったため、周回を繰り返せば繰り返すほど精神的疲労が積み重なっていく感覚がありました。

 

たとえば、アップデート前までは日付が変わるタイミングの「学校のチャイム」はスキップできないため、いつしか「キーンコーンカーンコーン」というSEの幻聴が聞こえそうなほどしつこく聞かされ続けました。

 

アップデートによってその難点は無事解消されましたが、あれは本当に地味にきつかった……

東日本大震災ですべてCMが「エーシー!」というさわやかなコーラスで締めくくられる「公益社団法人ACジャパン」のCMに置き換わった時のことを思い出しました。人間、あまりにも何回も何回も同じ音を聞かされ続けると、耐えがたいものがあるようですね。

 

●各ルートについて

全てのルートについて詳細に語っていったらそれこそ何日かかっても語り終えそうもないので、ひとまず私が体験したルート順に、大まかな感想をサラッと語っていきたいと思います。

 

・00:1週目

すべてのプレイヤーは、「1週目」の100日間は強制的に一本道の物語を読み進めさせられます。

このゲームが選択式のノベルゲームの要素があると知って購入したプレイヤーにとっては、いつまでたっても選択肢が現れず分岐する様子もないため困惑した人も多かったのではないでしょうか。

 

そうなんです。このゲーム、本番は「2週目」以降からなんですよ……

 

かといって「1週目」があっさりした展開だったわけではなく、結末の時点でプレイ時間は10~20時間ほどはかかっているはずです。

にもかかわらず2週目以降に100のエンディングに分岐するゲームが始まるなんて、いったいどれだけのプレイ時間が必要なのかと度肝を抜かれたプレイヤーも少なくはなかったのではないでしょうか。

 

この強制選択の「1週目」もそれはそれはハードな展開が続きます。途中までは順調に進んでいたのに、何人もの戦死者が現れたり、最後の最後でとんでもねー巨悪が仲間内に潜んでいたことが発覚してすべてをご破算にされたりと、もう踏んだり蹴ったりです。

 

プレイヤーは主人公・澄野の無念さを背負って、文字通りこの物語をはじめから「やり直す」ことになります。そうして「2週目」の物語が始まるわけです。

 

 

・01:真相解明編/リスタート編

澄野は防衛戦の2日目にタイムスリップし、ここから様々な選択を迫られることになるわけですが、筆者は運がいいことに、2週目の開始一発目からすべての真相が明らかになる「真相解明編」に到達することができました。

 

「1週目」で分からなかったことや違和感があったことの説明がなされ、主人公たちにまつわる重大なネタ晴らしをいくつもいくつも聞かされる怒涛の展開が続きます。

 

ただ、確かにこのルートではこの物語の背景事情の多くは説明されますが、そのいずれもが澄野たちを絶望のどん底に突き落とすようなものでした。

そのうえ守るべき人類も帰るはずだった場所も木っ端微塵にぶち壊されてしまうのですから、まったく救いの欠片もありません。

 

結局澄野たちは自らの正義に殉じることを選び、たった一人の仲間を残して全滅してしまいます。

もしくは終盤最後の選択によって、その時点で生き残った全員で自ら記憶を失うことを選び、全てを忘れてやり直すというルート分岐もあります。

 

正直、「これがハンドレッドラインのトゥルーエンドじゃあああ!!!」とか言われてしまったら、ゲームのパッケージを遥か遠方に投げ捨てたくなる衝動に駆られていたことでしょう。

 

いちおう、製作者側の立場としては、「気に入ったエンディングが見つけられたらいいですね」というものらしいので、このエンディングこそが最終的な結末であるとは明言していないわけです。

 

一発目から1週目よりもさらに救いのない物語を読み進めさせられてしまったせいで、私のギアは数段跳ね上がることになりました。100もエンディングがあるのなら、きっと誰も犠牲にしなくていい、納得のいくエンディングがあるはずだ、と。

 

 

・02:さよなら蒼月編/独裁政権

一発目から真相解明編にたどり着いてしまった以上、チャプターセレクト画面の100日目から直近の選択肢を選びなおしたらどう分岐するのか、という方針で周回を進めることにしました。

 

そこでルートを遡ってから初めて読まされたのがこの2ルートになります。

 

散々やらかしまくった蒼月を許さなかったらどうなっていたのか、残酷な真実を知った澄野たちがそれにより人類のために戦う事を止めたらどうなっていたのか、というのがこれらの大まかな物語になります。

 

さよなら蒼月編については、真相解明編のifルートとして視点が蒼月に移るという珍しい展開が見せられますが、そこまで長い話ではありません。これを当然の末路と見るか、愚か者の哀しい最期と見るかは、人それぞれでしょう。

 

独裁政権編では、敵陣営の一人として澄野たちと戦い、捕虜としてとらえられた女性兵士「イヴァー」の義理の娘である「カミュン」と出会うことで、大きく運命が変わってしまいます。澄野たちは人類側を見限り、第三勢力に与することでこの泥沼の争いに終止符を打つ道を選びます。

 

ただこの展開については、後述するSF編の展開・設定と一部矛盾するエンディングを迎えているため、やや解釈に困ってしまう部分がありました。

 

具体的には、澄野とカミュンはおよそ10数年かけて内戦を収めて統一政権を樹立するまで戦い続けることになるのですが、この「10数年かけて」という部分が引っ掛かるわけです。のちに判明する「呪い」の設定と大きく食い違うことになるのですが、その説明は後程。

 

 

・03:イヴァー編

澄野たちが全ての真相を知るためには、捕虜であるイヴァーを殺さなければならないという場面があるのですが、その際にイヴァーを生かすことを選ぶとこのルートに移動します。

いわゆる逃避行なわけで、戦争から降りて逃げ出した澄野とイヴァーのその後が描かれます。

ここでイヴァーは義理の娘であるカミュンと再会を果たすわけですが、その後の結末はあまりに救いがありませんでした。戦争を終わらせるためにイヴァーが死ぬか、全てを見捨てて澄野とイヴァーとで逃げ続けるか、そのどちらかしかありません。

ifルートとしてはありなのかもしれませんが、個人的嗜好としては受け入れられない展開でした。

 

 

・04:蒼月たくさん編

最低最悪の裏切り者として、時に敵陣営にさえ寝返った蒼月ですが、捕らえた蒼月を処刑するか否か選ぶ場面があります。ここで蒼月を殺してしまうと、この悪夢のようなルートに移動します。

この物語は「異血(いけつ)」という物理原則を無視した特殊な血液を操作することで強大な戦闘力を発揮し、戦いに挑むという大前提の設定があるのですが、主人公たちは全員、この「異血」が体内に流れています。そして「異血」には意志や人格まで宿らせることができるようで、澄野に処刑された蒼月は、その「異血」を通じて澄野の精神に寄生し、澄野に終わりのない精神的拷問を繰り返し続けることになります。

見ていて気分がいいものではなく、ただただ不愉快で、蒼月という人物が大嫌いになっていきそうでした。ここまで悪意を向けられてしまうと、真相解明編で仲間として合流できたのが噓のようにすら感じます。

 

 

・05:連続防衛編

まずは一言。このルートを作った奴は全プレイヤーに土下座して謝れ!!!

 

……すみません、ちょっと理性を失っていました。それくらいこのルートはひどい話なのですよ。

物語の途中、澄野はこの物語のキーパーソンである「炎の少年(シオン)」を仲間として認めるか否かを宣言する場面があります。ここでシオンを仲間と認めないことを選択すると、この地獄のようなルートに移動させられるわけです。

 

別に、ストーリー展開的には特に目新しいわけでもなく、悲劇が待っているわけでもなく、ただただ100日目まで連続して戦い続けるというそれだけの展開が続きます。

 

何が地獄かというと、この戦闘というのが58日目以降、ほぼ毎日のように繰り返されるという点です。ストーリー上では戦闘後3日のインターバルが開いているため日付がスキップされるのですが、プレイヤーの視点からすると戦っても戦っても新たな戦闘が何回も何回も何回も続けさせられ、しかもそのすべてが「スキップできない」という鬼のような仕様になっています。

 

途中からは既に倒したはずの部隊長まで再登場したり、終いにはラスボスが2体連続で登場したりと、もうしっちゃかめっちゃかな難易度の戦闘を延々繰り返させられることになるのです。

 

さすがにここまで極端に戦闘ばかり繰り返させられると堪忍袋の緒が切れます。この時点から、戦闘の難易度を「SAFETY」に切り替えることにしました。

 

こちとらストーリーが読みたくてルート周回し続けているというのに、いつまでたってもストーリーが続かないでただただ戦闘ばかり続けさせられても仕方がない。「SAFETY」モードであればターン終了時に味方や防衛装置の体力は全回復してくれるので、脳死プレイでも敵陣営を抹殺することができます。思えば、この時点からすでにシミュレーションRPGモードで戦略を立てて向き合うということをしなくなっていました。せっかく魅力あるタワーディフェンスもののゲームでも、さすがにウンザリしてしまいました。

 

 

・06:選択編

真相解明編に進んでいる物語の途中、敵の策略によって丸子と大鈴木の2名が拉致される展開があります。状況的に片方しか救出することができません。このとき、丸子を見捨てて大鈴木を助けることを選ぶと、このルートに移動します。

 

このルートでは澄野たちの上官であるSIREIの補佐官であるNIGOUのなかに、別人格のプログラムが搭載されていたことが発覚します。その名もGOTOHと言い、人類の中の「移住反対派」という一派閥が主人公たちの計画を中止に追い込むため、NIGOUの中に仕込んでいたものだというのです。

 

この時点で真相解明編のエンディングまで読んでいない人にとっては、このGOTOHから聞かされた真実は衝撃的なものだったはずです。澄野たちが従事させられていた100日間の防衛戦とは、惑星間の侵略戦争における前線基地を守るためのものだった。つまり、澄野たちが地球と思っていた場所は地球ではなく、澄野たちこそがこの惑星「フトゥールム」の人々にとっての侵略者だったということです。

 

移住反対派は他の惑星を侵略してまで人類の存続を望んでいない、消極的に人類の滅亡を受け入れる思想の人々だといいます。GOTOHの説得を受け、澄野たちは戦いを放棄して人類たちが住んでいる「人工天体」へと帰還するというのが、このルートの一番穏当な結末になります。

 

ただ、このルートにおけるGOTOHの説明は、真相解明編でSIREIがしてくれた説明と一部矛盾する要素があります。

 

たとえばSIREIの説明では、現在生き残っている人類数十万人が居住している人工天体は、もう間もなく機能停止に追い込まれるため、地球の居住環境と瓜二つなフトゥールムを乗っ取ってでも移住しなければならないとされていました。

 

ところがGOTOHの説明では、人工天体の機能は向こう200年は存続可能であるというのです。

 

もっとも、このルートにおいてGOTOHは澄野たちを説得するためとはいえ、澄野たちに対して人道的に許されない虚言を弄しています。しかも澄野たちが説得に応じない場合は、澄野たちを抹殺してでも防衛戦を阻むという強硬姿勢を見せます。

 

このことからも、GOTOHをはじめ「移住反対派」が述べている内容には少しも信頼が置けないことになります。

まあもっとも、澄野たち特防隊の面々を戦わせるために人体に爆弾を埋め込む・洗脳する・記憶を改ざんするなど非人道的措置を何度も繰り返しているSIREIほか人類側の言い分も、信頼するには値しないわけですが。

そうなると、いったい誰の説明が真実なのか、究極的には判別がつかないことにはなってしまいます。そういう意味でも、なかなかにモヤモヤさせられるルートでした。

 

 

・07:まったり編

敵の部隊長であるイヴァーは、澄野たちに捕虜にされた直後から、SIREI達の手によって強力な洗脳を施されることになります。これにより彼女の人格は大きく書き換えられ、過去の記憶も忘れさせられてしまいます。そのため澄野たちは、彼女の口から敵陣営に関する情報などを何一つ聞き出すことができなくなってしまいました。

 

ただ、澄野はこの件に関して特に思うことがないように振る舞い、ときには「SIREIのいうことに間違いはない」などと仲間たちに言い放つことすら出てきます。

 

主人公・澄野の言動がだんだんと怪しくなってきていることはプレイヤーには周知の事実だったのですが、このことに気が付いた雫原の強硬姿勢によって、澄野はとある選択を迫られることになります。

 

雫原は、イヴァーに施されたような洗脳術が、すでに澄野にも実施されていることを疑っていました。そのため、洗脳の事実を知っているであろうSIREIの補佐官NIGOUを物理的に破壊して、その記録を参照すると言い出したわけです。

 

ここで澄野がNIGOUの破壊を止めようとすると、どこからともなくSIREIがやってきてその場にいた全員を昏倒させてしまいます。ようするに、口封じというわけです。

 

この後の展開はルート名が示している通り、戦争中とは思えないほど、異常なほどに緩やかな展開が続いていきます。死んだはずの仲間も実は生きており、澄野たち特防隊の面々は普通の学生のような微笑ましく仲の良い毎日を過ごすことになります。

 

……しかし、現実にそんなことはあるはずもなく、澄野がSIREIによって洗脳の影響を受けていることを知っているプレイヤー目線からみれば、これが幻影であることは一目瞭然です。

 

洗脳された澄野が目覚めるのは、なんと100日目になってからでした。戦線は崩壊し、仲間の大勢が死に絶え、もはや敗北は必至であることを、脳内に残るSIREIの幻影から聞かされます。

 

澄野の選択は二つしか残っていません。現実の死が訪れる直前まで、体感時間を極限まで引き延ばし幸せな夢を見続けるか、直ちに現実に立ち戻りって仲間たちと共に散るか。どちらもあまりに救いがありません。

 

真相解明編を見たあとでこのルートを見たせいか、SIREIというキャラクターが全く信用のおけない存在となっていたこともあり、このルートの不快感は筆舌しがたいものがありました。まあ、味方とは言えないことは初めから筒抜けではあったのですが。

 

 

・08:サイワイの箱編/ワザワイの箱編

敵の部隊長であるイヴァーを打倒したあと、彼女を捕虜とするか処刑するかを選択する場面があります。

ここで彼女の処刑を決定すると、これらのルートに分岐します。

 

この時点でイヴァーの事情は明かされてはいませんが、彼女は義理の娘であるカミュンに生きて再会することが行動原理となっているため、生き残るために何とか命乞いを繰り返してきます。

 

その際に彼女がもたらした情報の中に、人知を超えた魔法の箱、願いをかなえる「サイワイの箱」の伝説というものがありました。

 

ただ、この話をイヴァーが話した途端、過子によって彼女は処刑されてしまうため、詳しい話を聞き取ることは叶いませんでした。過子は、双子の兄である今馬を傷つけたイヴァーのことを全く信用していなかったわけです。

 

その後、澄野たちは最終防衛学園内の資料などを基にして、「サイワイの箱」の概要を調査します。遥か昔に人類にもたらされた13の箱のうち、7つはサイワイの箱、6つはワザワイの箱と呼ばれている。その見分け方は明記されていなかったものの「サイワイは孤独なり」という一文のみが記されていたーーなどということまでは突き止めますが、肝心の箱がどのようなものかまでは分かりません。

 

しかし、澄野たちはその箱の絶大な力を信じて箱を探し出すことを選びました。なぜならこの時点で澄野たち特防隊からは2名の戦死者が出ており、箱の力によって戦争を終わらせること、ひいては死んだ仲間をよみがえらせることができるのではないかと考えたからです。

 

確かに、このルートの結末の一つとして、死者を蘇らせてめでたしめでたしというものも存在します。

とはいえこのルートでは澄野たちはひたすら箱探しに明け暮れ、箱を巡って敵陣営との戦いを繰り返すことになるため、戦争の真実も何もわからないまま結末を迎えることがほとんどです。

 

しかも場合によっては誤って「ワザワイの箱」を開けてしまったことに端を発する様々な悲劇が待ち受けており、このルートでの出来事がほかのルートでの悲劇に直結するなど、あらゆる意味で厄介な物語となっています。

 

このルートにおける重要な情報としては、この物語には人間に寄生して操る「ギィ」という小型生物がおり、「ワザワイの箱」に封入されているというものがあります。「ギィ」に乗っ取られた人物は次々と悪事を働き始めるので、他ルートの悲劇の元凶になってしまいます。

 

このルートを読んでから別ルートを読んだ人にとっては、悪事を働いた犯人が誰だったのかということが分かる仕組みになっていて、なかなか興味深い設定ではありました。

 

また「ワザワイの箱編」では、処刑されたはずのイヴァーの残留思念が澄野の前に姿を現すという展開があります。彼女自身もなぜそのようなことになっているのかわかっていないようでしたが、これも「異血」の効能によるものだろうと一応の説明はされていました。「蒼月たくさん編」の情報と見比べてみても、「異血」自体に人格や記憶が宿るということはありえない話ではないようです。

 

 

・09:ヴェシネス編/カリスマ澄野編

物語の途中、1週目では終盤になって現れるはずの敵の総大将・ヴェシネスが戦場に現れたため、戦線が瓦解する前に味方一人の命と引き換えに特攻を仕掛けなければならないという場面があります。

真相解明編では凶鳥が犠牲になることで話が進んでいきますが、このとき特攻を頼む相手が川奈だとヴェシネス編に、厄師寺だとカリスマ澄野編へと進みます。

 

ヴェシネス編では、「偉大な私」構文を宣い続ける自称神・ヴェシネスと澄野との対話が主な展開となっています。誰よりも戦争を好み、勝つためならば味方ですら犠牲にすることを厭わないイカレ女と評されたヴェシネスの経緯について、その片鱗を覗き見ることができます。

 

あまりにも強すぎて、渡り合える強者が居ないという孤独に苛まれていたヴェシネスが、澄野の境遇にシンパシーを感じつつ、最後は共に最期を迎えるという、ある種のメリーバッドエンド風味なストーリーに派生するのが魅力の一つ……なのかもしれません。個人的には傲慢な人物は好みではないので、あまり共感できる物語ではありませんでしたが。

 

カリスマ澄野編では、面影に作ってもらったカリスマ性を上げる薬品がきっかけとなって、仲間たち皆から澄野が崇拝されていく過程を描いた、ある種サイコな雰囲気のストーリーが展開していきます。

 

澄野はこれ以上誰も戦死者を出したくない一心で、まるで新興宗教の教祖のように振る舞い始めますが、仲間たちからの尊敬の念はやがて暴走し始めていきます。結末の一つに、皆の暴走ぶりを止めようとした霧藤が仲間全員からなぶり殺しにされてしまう展開があり、まるで頭の悪い学生運動やカルト宗教を見せつけられているようで非常に胸糞悪い物語でした。まあ、澄野自身も狂信されることを利用し始めていた節もありましたので、彼にとっては自業自得ともいえる結末でもありましたが。

 

ちなみに余談ではありますが、ほかのすべてのルートと比べてこのカリスマ澄野編だけが明らかにR15指定かそれ以上の描写が度重なるため、純粋な青少年に見せるにはちょっと憚られるんじゃないのか……という気がしないでもありませんでした。(中には喜ぶ人もいるのかもしれませんが、あんな拷問的BLシーンとか、澄野をはじめ一般的な感性の人なら地獄でしかない……)

 

・10:青春編

主人公・澄野の幼馴染である柏宮カルアと瓜二つの容姿をもつ霧藤ですが、彼女は15名の特防隊員の中で唯一、不正規に自ら隊員に紛れ込んで戦っているという事情があります。

このことは真相解明編で明るみになる特防隊員の共通点が、彼女にだけは当てはまらないことを意味しているのですが、このルートへの分岐は話の最序盤である11日目なので、澄野はその点についてはまだ知りません。

 

ただ1週目において澄野は、霧藤が不正規隊員となった経緯について彼女自身から聞かされており、そのことを仲間全員に話すべきか否かを決めざるを得ない場面に直面します。

ここで霧藤の事情を話さないことを選ぶと、このルートへと分岐します。

 

その名の通り、まるで少年漫画か何かのような熱いセリフやベタな展開の応酬が繰り広げられますが、目新しい情報が皆無だったためか、あまり印象に残っていないストーリーでもあります。

 

しいて言えば、やらかし男の蒼月を仲間に引き戻すことができたかと思いきや、やっぱり裏切っていた蒼月によって敵味方全員が引っ掻き回され、特防隊に仲たがいが引き起こされてしまう展開は、記憶に残っています。

 

ただこのルートには状況証拠に踊らされて澄野を信用しなかったことで仲間内で犠牲者がでてしまう話もあるため、蒼月ではありませんが、あまりのちょろさと騙されやすさに少々あきれ果ててしまいたくもなりましたが。

 

 

・10:ノモケバ編

2週目の最序盤である8日目において、澄野と数名の仲間たちが第二防衛学園へ向かった際、最終防衛学園に敵陣営が攻め込んでしまったため、どちらの仲間たちを守るかを選択しなければならない場面があります。

とはいえ、第二防衛学園にたとりついた時点で仲間3名は瀕死、1名は敵に連れ去られて行方不明になっており、彼らを置いて最終防衛学園に戻れば、おそらく彼らは助からないことは想像に難くありません。

この状況にも拘らず澄野が最終防衛学園へ戻ることを選択すると、このルートに移動します。

 

澄野の選択により、真相解明編では死んでいたはずの飴宮は生き残ることができますが、逆に第二防衛学園にいた霧藤以外の4人(大鈴木・凶鳥・面影・喪白)全員が亡くなってしまいます。

 

このあと澄野と飴宮は共に行動する中で、謎の老人から「ノモケバ」なる人知を超えた生物の存在を教えられます。この生物がもたらす「赤い雫」の力があれば、たとえすべての異血を失って死んだ人間のことすら、完全によみがえらせることが可能であると聞き、二人は「ノモケバ」を譲り受けることを選びます。

 

しかし、ノモケバを素の状態で世話しようとしても、なんでも際限なく食べ続けるという性質故に澄野たちまで食べてしまいます。そのため飴宮の独断により、ノモケバを彼女の体内に寄生させることで世話すると決めてしまいました。その後の選択如何では、彼女の自己犠牲によって死者を蘇らせる展開もあります。

 

普段はメンヘラ的でもあり下品で騒がしい発言に終始する飴宮ですら、第二防衛学園の仲間たちの死には責任を感じていたようで、ほかのルートでは見られなかった飴宮の素や本質が垣間見えるところが、このルートの最大の魅力と言ってもいいでしょう。

 

思えば、1週目の時から飴宮は言動こそ怪しいものはありつつも、仲間を守ろうとする澄野の行動に協力的であり、何だかんだと澄野のフォローに入ることがとても多いという印象はありました。それがこのルートにおける彼女の言動により、確定的になったことは大きな発見でした。

 

ちなみに、飴宮のぶっ飛んだ言動が一種のブラフなのではないかという点については、別のルートにおいて雫原や大鈴木が見抜いているような発言をすることがあります。見る人が見れば本当の人となりは自ずとわかる、ということなのでしょうね。

 

 

 

ーーさて、ここまでは特に何の縛りもなく普通にルート分岐で物語を読み進めることができるのですが、

残りのルートには少々厄介な「シナリオロック」なる制約がかかっていることがあります。

 

これはどういうものかというと、「指定されたエンディングに達成していない限り、その先の物語を読み進められない」という制約です。

 

残りのルートの感想まで述べようとすると夜が明けてしまうため、続きはまた別の機会に述べさせていただきたく。