***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
・余談
人気のない街並みに、鬱々とした気分を抱えて働きに出る毎日では、これという特筆すべき出来事もありません。
強いて言えば、ようやく昨今の新型コロナウイルス感染予防対策として会社を休むように指示があったことぐらいでしょうか。
まあゴールデンウィーク中に一週間近く休めたからと言って今のご時世ではどこに外出するわけにもいかないうえ、テレビもゲームも何もかも、新しいものは延期・中止続きのため、必然的に過去の作品に目を向ける時間も多くなるわけで。
……さて、愚痴はほどほどにしてそろそろ本題に入らせていただきます。
・雑感
連続バラバラ殺人事件を解決に導いたあと、玲人はつかの間の休息を得る。
玲人はある日、冬子からの誘いを受け美術館の見学に付き合うことになる。
ただしその場所は東京都立美術館ではなく、岡山県倉敷にある中原美術館であった。
何を思ってこんな場所に連れてこられたのかわからない玲人ではあったが、冬子と共に西洋絵画の特別展示を見学する。
しかしそのために終電を逃してしまい、二人は宿で夜を明かすことになる。
このとき、玲人は冬子から例の「依頼」の件を切り出される。
決して忘れていたわけではない。殺人事件の捜査に奔走していたため、必然的に後回しになっていた。
だがその間にも冬子は自らの出自について、自分自身で調べようとしていたという。
彼女は自ら戸籍を調べ、自分が朽木家の本当の娘ではなかったことを知ったらしい。
東京に戻ったあと、玲人も彼女の戸籍を調べたが、冬子は朽木千鶴の養子であるということが確認されたのみだった。
戦後の混乱に紛れて養子に出されたのか、確かなことはわからない。
彼女の本当の両親は何者で、どこに消えてしまったのか。
唯一思い至る手がかりとして、玲人は東京都立美術館へと訪れる。
以前、冬子や紫の部活動に付き合って見学した絵画「殻ノ少女」の作者を調べるためである。
何度見ても、絵画に描かれた女性の顔は冬子に瓜二つに見える。
学芸員であるステラに絵画の作者・間宮心象について尋ねてみても、人嫌いのためにほとんど人前に姿を見せないということしかわからない。
玲人が思案を巡らせながら絵画を眺めていたとき、謎の老人が声をかけてくる。
老人は言う。なぜこの絵の作者は、こんな歪んだ絵を描いてしまったのだろうか、と。
玲人は彼こそが「殻ノ少女」の作者・間宮心象ではないかと思ったが、気づいたときには忽然と姿を消していた。
間宮氏の所在を求めて魚住に協力を仰ぎ、現住所まで突き止めたものの、そこに彼の老人の姿はなかった。
捜査が行き詰ったまま数日が経ち、暦は4月1日を迎える。
その日は冬子たちの通う私立櫻羽女学院で「イースター」の催しが行われることになっていた。
先日、玲人も準備に駆り出され、行事に使う固ゆで卵を紫や綴子たちと共に用意したのは記憶に新しい。
しかし、「イースター」当日に生徒が卵をうっかり割ってしまう。
割れた卵の中身を見て、生徒たちは悲鳴を上げる。
玲人は慌ててその場に駆け寄り、床にぶちまけられたそれを目の当たりにした。
それは、肉片を粉々になるまですりつぶしたと思われる、バラバラ遺体の一部だった……
吉祥寺界隈で起きていた殺人事件が解決したあと、玲人には一週間ほどの猶予期間があった。
その期間中に起きた出来事をすべて書き記すとえらい文量になるためだいぶ端折りながらまとめたが、とうとう新たな事件が動き出してしまう。
先刻の事件に続いて、ふたたびバラバラ殺人である。
いくら1950年代とはいえ物騒すぎやしないかと戦慄してしまうが、ミステリー作品なら展開の都合上、仕方がないともいえる。
ただし、「殻ノ少女」の後半戦にあたるこの事件については、明らかに京極夏彦氏が執筆した「魍魎の匣」の影響を受けまくっているため、この作品を知っていると多少なりとも展開が予想できてしまうという欠点はある。
※しかも「殻ノ少女」が発表された2008年当時は、その秋から「魍魎の匣」のアニメ版がTV放送されていた。もしも先にアニメを見てから「殻ノ少女」をプレイしてしまったら、類似点の多さが気になってストーリー展開に集中できないかもしれない。
とはいえ、本作が単なるインスパイア系作品にとどまらないのはこれまでの雑感でも述べた通りである。
ちなみにこの後半戦の事件からは登場人物がさらに増える。
ついにあのクソ小生意気なインテリ野郎・八木沼了一が登場するのである。
彼はカルタグラの事件後に出世を重ね、現在では警視に昇り詰めている。
今回の事件では管理官として警察庁から派遣されてきており、魚住の年下上司として彼らを顎でこき使う役回りである。
この5年の間に多少なりとも人間ができたかといえばそんなことがあるはずもなく、人をなめ腐った態度は相変わらず。そんな彼の言動に玲人も怒りを抑える場面が多々描かれるが、それでも八木沼は刑事としては優秀な男である。
「殻ノ少女」のとあるルートでは、そんないけ好かない彼の悲しい過去について知ることができるため、是非とも全ルートクリアを目指して読破してもらいたい。
というのも、2020年12月発売予定となっている本作の最終作「天ノ少女」の登場人物の中に八木沼の姉が含まれており、いよいよ彼の過去も本筋で焦点に当てられるらしいのである。
また、発売時期は未定だが晩夏~秋ごろには本年の第2作である「虚ノ少女」のマイナーチェンジバージョンが特装版として発売されることが決まっている。
なんとしてもそれまでに「殻ノ少女」を再読しきってしまわねば……