***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。
また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。
当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。
***注意おわり***
ついにこの日がやってきましたね……
本日、2020年8月28日は、Innocent Greyが送る一大巨編サイコミステリ「殻ノ少女」シリーズの2作目、そのリメイク作の発売日となります!!!
※18歳未満立ち入り禁止!!
旧版は2013年2月8日に発売されているため、およそ7年半ぶりの再販ということになります。
旧版との大きな違いは前作「殻ノ少女《 FULL VOICE HD SIZE EDITION 》」と同様、次のような変更がなされています。
・無料体験版(という名の前日譚)との統合
・スチルやCGの高彩化を始めとした各種演出の強化
・一部担当声優の変更
・旧版販売当初は別売りだったオリジナルサウンドトラック3枚組が同梱
・初回生産版には別冊小説「流し雛の邂逅」が付属
主人公・時坂玲人役は殻ノ少女HDと同様「高橋がならない」氏から「髭内悪太」氏に変更となり、さらに本作のもう一人の主人公ともいえる真崎智之役は「道出翔」氏から「河村眞人」氏に変わっています。
ちなみに「虚ノ少女」については旧版が発売された約3年後である2016年にアフターストーリーを描いたドラマCD「虚ノ少女 天に結ぶ夢」が発売されており、真崎役はこのころから「河村眞人」氏が担当しています。
(このドラマCDについては本編のネタバレ満載であることから、詳細は後日語ることになります。なおこのCDには本編TRUEエンド後のとある深刻な事情があって玲人は登場しません。それについてもまた後日……)
本作の時間軸は昭和32年(1957年)の11月となり、「殻ノ少女」の事件解決後からおよそ1年半後から物語は始まります。
しかしそうは言うものの、本作では複数の時間や場所にて様々な事件が起こります。
上記の時間軸は、あくまで探偵・時坂玲人が本作で起きる事件に関わり始めた時点を起点とした表現であるという点は注意が必要です。
たとえば、物語の根幹となる「ヒンナサマの祟り」のもとになった人形集落での物語を紐解くために十数年前まで遡ったり、物語の主体が玲人以外の登場人物に変わる視点移動も多く取り入れられており、非常に長大な物語になっています。
特に過去編についてはほぼ選択肢がないにも関わらず、下手なゲーム一本分はあると思えるほど長い長い回想が繰り広げられます。
どれくらい長いかというと、全編文章スキップしても1時間くらいかかるほどです。旧版発売当初、周回プレイ時にこの過去編のパートをスキップする方法が文章早送りしか存在しなかったため、のちに発表された修正パッチで急遽「過去編読み飛ばし」の選択肢が実装されたほどの長さでした。
(念のために言っておくと、このパートの存在が本作の超重要な部分を占めていることは間違いなく、決してつまらないわけではありません。ただ、周回プレイするためにはあまりに不都合な仕様だったため、不本意にも「長すぎる」というイメージが定着してしまいました)
ひとまず本作のゲームとしての概要はこの辺にして、いよいよ物語についてのあらすじを語り始めたいと思います。
・雑感
「殻ノ少女」事件が一応の解決を見せてからおよそ1年後、時坂紫は私立櫻羽女学院の高等部へと進学していた。
亡くした友たちへの思いを抱えつつも、高等部からの外部入学組である鳥居小羽と新たに友誼を結ぶ毎日を送っていた。
そんな昭和32年の11月のある日、彼女たちのクラスに一人の編入生が入学する。
少女の名前は茅原雪子。非常に物静かでとっかかりずらく、彼女はなかなかクラスに溶け込めないでいた。
一方そのころ、東京では再び奇怪な猟奇殺人事件が起きる。
被害者が朽木病院(旧朽木病理学研究所)の看護婦であったため、八木沼了一警視は探偵・時坂玲人へと捜査協力を依頼することにした。
いつぞやの事件のように、看護婦の遺体は意味深な加工がいくつも施されていた。
両腕それぞれが針金ハンガーにて貫かれ、あたかも磔刑のようにハンガーレールにつるし上げられており、さらに無惨に膨れ上がった腹部には、手のひら大の土くれが無理やり埋め込まれて縫合されていたのである。
何らかの宗教的儀式なのか、犯人の目的はいまだ分からない。それにもかかわらず、八木沼が言うにはすでに犯人と思しき被疑者を逮捕しているのだという。
八木沼は玲人に対して被疑者の身元を明かさぬまま、彼が犯人である証明または無実である証明をするように吹っ掛ける。
玲人は状況証拠だけの強引な逮捕を理論立てて突き崩し、被疑者はその日のうちに釈放されることになった。
被疑者の名前は真崎智之。小さな画廊で働く、どこか感情に乏しい無気力な男であった。
彼はもともと、朽木病院の精神科にかかっていた患者であり、被害者である看護婦とは顔見知りだった。しかし、あくまで患者と看護婦というそれだけの関係である。
いちおう容疑は晴れたとはいえ、彼は職場を解雇されてしまう。そのままの勢いで借家も引き払い、死に場所を求めて井の頭公園へと向かうのだが……
――物語の冒頭はここまで、通読で約2時間ほどである。
しかし、ここまでの要所要所ですら時折過去編の描写や犯人視点の殺害シーンなどが入り乱れており、全てを一つの解説に織り込むのは困難であるため、現代編のみをかいつまんだ形式にさせてもらった。
ちなみに解説を端折った描写は主に次のようなものである。
・看護婦・紙園繭が真崎に見せようとしていた母の遺品である写真について。写真に写る男を見て真崎は激昂して突き返したが、その態度は明らかに彼と写真の男との関係性を疑わせるもので――
・上野駅前にて、銀髪赤眼の麗人・蒼木冬史がとある集団の追跡調査を行っている様子。
・とある座敷にて、行李を背負った男と謎の女の対談。女の言葉に男は激昂し、あたりには「四肢」が散乱して――
・どっかの寒村で女が女を惨殺する場面。犯行現場を目撃した少女は、犯人の女が逃げ去ったあと、「犯人の行いは正しい」として被害者の遺体に細工をしたうえで木に吊り上げる。それはあたかも東京で起きている事件とそっくりで――
・「砂月」という謎の女が、どっかの蔵の中で日本人形相手に一人で会話をするという奇妙な描写。端から聞いているとただのホラーなのだが――
・あばら家の中、四肢のない少女を見つめる何者かの独白。
・赤ん坊の産声を聞きながら、産後に命が尽きる瞬間と思しき母の独白。しかし、この思考はどう考えても「彼女」のもので――
……この直後にオープニングムービーが挿入されるのだが、まあ気になりすぎる伏線がちりばめられすぎていて、一文たりとも見逃せない怒涛の展開である。
(余談だが、本作のOPテーマ「月の虚」は例によって霜月はるか氏が絶唱する名曲中の名曲だが、この曲が本作のメインテーマに使われる予定だとして発表されたのは2010年12月25日に渋谷O-EASTにて開催されたイベント「InnocentGreyクリスマススペシャルLive2010」が初出である。
このとき、翌年1月にイノセントグレイ5周年記念主題歌曲集「トロイメライ」を発売することも発表され、「月の虚」は初めてCD収録されることになった。今ではカラオケでも歌える曲とはいえ、曲の発表からゲームで実際に使用されるまでに2年もかかるとはえらく待たされたものである。
もっともそういう意味では、本シリーズの最終作「天ノ少女」のOPテーマとしてInnocent Grey 10周年記念コンサート「神曲」にて「擬翼の偶像(レプリカ)」が発表されたのは2015年12月28日であるから、もうすぐ5年が経過しそうな勢いである。
ほんっっっっっとうにもう、えらく待たされているものである)
旧版発売当時、前作「殻ノ少女」をプレイしていたユーザーからすれば5年ぶりの新作でこの話運びである。もう先が気になって気になって仕方がなかったことは理解してもらえるだろうか。
だって、もう、先述の「母の独白」って、それもうどう考えたって……
……まあ、万が一この時点でも「彼女」の存在に気づけない方もいるかもしれないため明言は避けるが、どうか賢明なる読者諸氏におかれましてはここまでの描写を【絶対に】忘れないでいただきたい。
物語が進行するたびに、冒頭部分の各描写は輪郭をもって読者諸氏の心をえぐってくることは間違いないが、忘れてしまっていては事なので、ご忠告申し上げた次第である。
さて、次の雑感はいつ書き記すことができるやら。
何分超長大な物語なため、どこで区切るかも加減が難しいので……