悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

黒蜥蜴 江戸川乱歩生誕120周年没後50年記念ドラマスペシャル

録画しておいたものをようやく見る機会を得ましたので、不必要とは思いつつ記録に残したいと思います。

 

***注意はじめ***

以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり**

 

 

● あらすじ

クリスマスの決戦!
世界を股にかける女怪盗・黒蜥蜴(真矢ミキ)と稀代の天才・明智小五郎渡部篤郎が、
お宝をめぐって激しい頭脳戦を繰り広げる!
雌雄を決するそのとき、お互いを好敵手と認める二人の間に、ある想いが芽生えて——!?

www.ktv.jp

 

 

 

 ●感想

江戸川乱歩による小説「黒蜥蜴」の現代リメイク版が先日放送されたため、念のため視聴することに。

 

 原作は探偵・明智小五郎と女盗賊・黒蜥蜴との対決を描いた作品らしいが、2時間もののドラマスペシャルに改編するあたり設定が少し弄られていた。

明智小五郎は探偵ではなく、警視庁の新副総監として登場するなど)

 

 

物語は港からあがった死体の首筋に「黒蜥蜴」の紋様が刻み付けられていたところから始まる。

具体的な言及はなかったが、明智はこれまで黒蜥蜴の事件を追いかけていたらしい。そのため、「美しいものを盗み出す」という犯行ルールに反している今回の殺人事件が黒蜥蜴によるものではない、と考えた。

 

 

ここまではよくある2時間もののサスペンス的なシナリオ運びでよかったのだが、本作はいろいろとツッコミどころが目に付いてしまい、純粋にストーリーを楽しむことが出来なかった。

 

 

たとえば、黒蜥蜴が変装を解く描写がCGを使っている件。

変装した怪盗が正体を現すときはだいたい、衣服やらマントやらを翻すと一瞬で怪盗の姿に早代わりするという「早着替え」の描写がされることが多い。

しかし本作では、歩きながら服が一瞬で切り替わるという不可思議な手法を採用していた。

 

本作の黒蜥蜴は奇術師を表向きの職業にしているようだから、魔法的な描写をしようとしたのかもしれないが、ミステリー作品として見ると若干違和感があった。

 

 

あとはストーリー運びに対して思うことがいろいろとある。

本作は明智小五郎と黒蜥蜴の対決を描くことが主眼の物語のはずなのだが、最初の殺人事件にひっぱられすぎて、二人が対決している感がほとんどないのである。

 

これでもし殺人事件の犯人が黒蜥蜴なら別の意味で対立したかもしれないが、殺人のほうは別の登場人物による自白であっさりとコトが解決してしまったため、あまり意味のある展開ではないように思えてしまった。それなら最初から、殺人事件をとりあつかわず、宝石の盗難事件にだけ焦点を絞ったほうがよかったのではないか。

 

 

逃亡する黒蜥蜴を追っていた明智が、警察官から銃撃されそうになった黒蜥蜴を庇うシーンも違和感があった。

たとえ全世界規模で窃盗事件を繰り返している犯罪者だからといって、何の武装もしていない人間をいきなり銃撃する警察官が存在するのだろうか。

それも、(まったく不可解なタイミングで唐突に現れた)迷子に流れ弾が当たらないように敢えて立ち止まった人間に対しての銃撃である。

さらには、警察官に銃撃を止めるよう声をかけるのではなく、いきなり二者の間に割ってはいる明智の挙動も疑問である。下手したら死んでしまうかもしれないのだが、それでいいのだろうか。

 

 

細かく指摘していったらキリがないのでこの辺で留めておくが、いろいろと雑な描写が目立つドラマだった。

 

出演者は明智役に渡部篤郎氏、黒蜥蜴役に真矢ミキ氏など、豪華な俳優陣がそろっているにもかかわらず、演出や脚本が彼らの魅力を引き出せていないとしか言えない。

 

 

あまりこのようなことは言いたくないのだが、なんとも感想に困る作品であった。