悪意ある善人による回顧録

レビューサイトの皮を被り損ねた雑記ブログ

天ノ少女《PREMIUM EDITION》 その3

***注意はじめ***
以下の文面は言葉遣いに乱れが生じたり、ネタバレにあふれる虞があります。

また、本文は筆者である阿久井善人の独断と偏見に基づいて記されております。

当方が如何な感想を抱いたとしても、議題となっている作品の価値が貶められるはずもなく、読者の皆様のお考えを否定するものではないということを、ここに明記いたします。

***注意おわり***

 

・余談

 先日、とうとう全ルートの踏破を達成してしまった。

とはいえ、未回収のエンドに関してはどうしても条件が判らなかったため最終的には攻略サイトの世話になったわけだが。

 

 

 本作ではエンディングリストに掲載された14の結末の内、END6「Unsolved case」に到達することで2週目以降の新要素解禁とEND1~5までのルート開放が実装される仕組みになっている。

 

ただし、2週目は普通にバッドエンドを避けてゲームを進めて行けば、ほぼ確実にEND2「Grand END」を迎えることができる。

 

この「Grand END」は全ての事件が終わったあとのエピローグとしての意味合いが強く、このエンド分岐に入ったあとも小一時間ほどエピソードが続くため見ごたえは抜群である。物語の読後感をより良いものにするべく、『あの』イベントを丁寧に描いてくれたイノグレには感謝しかない。

 

また、この「Grand END」ではとある人物がゲスト的に出演するサプライズ演出が待っている。登場後はサウンドテストにもこの人物が追加されるので、速やかに音声テストボタンを押してメッセージを聞くことお勧めする。

 

一度「Grand END」に到達した後は、昭和39年2月27日のイベントにて非常に重要な選択肢を2回迫られる。この選び方によって、「Grand END」の他にEND3「それぞれの天国」、END1「True END」へと分岐することになる。

 

(ただし、「True END」への分岐については昭和39年2月24日にとある決断をしていることが条件になっている。この条件を満たさず「True END」へ進める選択肢を選んでしまうと、エンディングリストに掲載されていない特殊なエンディング「Normal END」を迎えることになるので注意が必要)

 

 

「それぞれの天国」は全ての事件が終わったあと、真崎にまつわるエピローグが繰り広げられる。これはどちらかというと前作「虚ノ少女」の総決算という意味合いが強い。またこのエピソードを見てもいくつかの謎は残ったままとなっており、そこは読者が推察・想像するしかない。

これらの点から某amazonのレビューでは親の仇のように低評価が下されているが、個人的にはそこまで悪いものではなかったように思う。詳しくはネタバレ配慮期間が終わったあと、改めて語りたいと思う。

 

 

「True END」は全ての事件が解決したあと、昭和46年3月4日へ時間が移動する。「True」と銘打っている以上、イノグレが真に描きたかった最終的な結末はこのエピソードなのだろう。昭和46年に至るまでの過程が全く描かれていないためなんとも言えないのだが、おそらくは「Grand END」の展開を経たあとの続きがこの結末なのだと思われる。

 

この「True END」もかなり賛否がわかれているようで、納得がいかないだの蛇足だのと低評価を下す読者も一定数いることが確認できている。まあ確かに、ものすごく狙ってやったという印象をうける結末ではあったが、「殻ノ少女」「虚ノ少女」と続いた3部作の最後の結末としては非常に鮮やかに締めくくられていたと個人的には思う。

世間ずれし過ぎて感動の涙を喪ったせいか泣きこそしなかったものの、この物語を追い続けて本当に良かったと思える程度には感慨深いエンディングだったことは確かである。

 

あの結末によって玲人は新たな偏執(パラノイア)を得ただけなのではないか、そんな穿った見方をしてしまう自分もいる。

しかし、エンディングにて表示された玲人の表情はこれ以上ないほど晴れやかなものだった。愛する人を何回も喪って、自らを「ひとでなし」と蔑むまでに探偵になりきらなければならなかった玲人。あの結末は、そんな彼に与えられたひとつの救いだったのだと思えてならない。

 

 

なお、実は本作はこれだけでは終わらない。

「天ノ少女 《PREMIUM EDITION》」には別冊小説「彼女と手紙」が付属しており、「True END」の後の展開をとある人物に視点変更して描かれている。

 

しかもさらにその続きは「天ノ少女 オリジナルサウンドトラック Caelum」に付属した短編小説「彼女からの手紙」にて描かれている。ここまですべて読み切って、ようやく本作は完結する。

 

詳しくはネタバレの嵐になってしまうため現時点では多く語ることはできないが、ほんの少しだけ感想を残しておく。

 

まず、これは「天ノ少女」自体にも言えることなのだが、作中の雰囲気がイノグレ初の全年齢百合ミステリ「FLOWERS」シリーズの影響を思い切り受けまくっている。これまでのイノグレ作品群における心臓を抉り取らんばかりのサイコな雰囲気が好きだった読者層からすると生温くなったとの印象を与えかねないため、これは評価が分かれるところではあると思う。

 

次に、この二つの短編小説はイノグレ初代作品「カルタグラ」からのファンに対する一種の返礼であると受け取れた。イノグレ作品はこれまで主に昭和20~30年台を舞台としたサスペンスを製作しており、その世界観はすべてつながっている。ある作品の登場人物が、別の作品の親族だったりするということはそこかしこで見受けられるため、世界観や雰囲気の作りこみが半端ではない。

そんな作品を生み出し続けてきたイノグレが送り出したのが、上記の小説である。感慨深さが凄すぎて言葉にできない。本当にここまで物語を追ってきてよかったと思える。

 

……ただ、そんな過去作からの遺伝子を受け継いだとある登場人物の残念さがあまりに残念なため、微笑ましいやら嘆かわしいやらで感情が迷子になっている自分もいる。まあ親の残念さを煮詰めて「FLOWERS」成分を掛け合わせたらあんな感じになってしまうのも無理はないのだが、どうしてこうなった。

 

 

 

 

――とこのように、今回はゲーム完結の記録のみでいったん終えたいと思う。

 

続きは前回のまとめと同様、ネタバレに配慮しながらふわっと章立ての解説を記録し、ネタバレ配慮期間が終えたと思える時期になってからちょっとずつ作中の感想やら考察やらをしたためていきたい。

 

興味がある酔狂な読者諸氏がいるようであれば、思い出した時にでも暇つぶしに斜め読みしてくだされば幸いである。